ケプラー61 (英語 : Kepler-61 )は、地球 からはくちょう座 の方向に約1,100光年 離れた位置にある連星系 である。NASA が打ち上げた通過 を起こす惑星を発見するために打ち上げた、ケプラー宇宙望遠鏡 の観測領域の中に位置している。2013年4月24日、主星ケプラー61Aのハビタブルゾーン の内縁付近を公転 している太陽系外惑星 を発見したと発表された[ 2] 。
命名と歴史
銀河系 におけるケプラーの観測範囲
ケプラー61は、ケプラーによる観測が行われる前から、2MASS のカタログ番号である2MASS J19411308+422831 という名称を持っていた。Kepler Input Catalog にはKIC 6960913 、Kepler object of interest にはKOI-1361 として登録されていた。
NASAの、太陽系外の恒星を公転する惑星を発見するケプラーミッションによって、この恒星の周囲を公転する惑星候補が検出された。ケプラーが惑星を検出するのに用いているトランジット法 では、恒星の光度曲線 が低下する事を検出し、この光度の低下は、地球から見て恒星の前を通過する惑星によるものだと解釈できる[ 7] 。
発見論文を受理した後、ケプラーのミッションチームは、この恒星にKepler-61 という名称を付与した[ 8] 。「Kepler- 」は、ケプラーによって発見された惑星とそれが公転している恒星を示すために付与される、一般的な名称である。
ケプラーの観測ミッションによって発見された惑星候補には、主星名の後ろに「.01」を付与した名称が与えられる[ 9] 。一度に複数の惑星候補が発見された場合は原則、公転周期 が短い順に命名されていく[ 9] 。これらの規則に従うと、惑星候補は公転周期59.87756日の1つのみであった。
惑星名の主星名の後につく「b 」は、発見された順序に由来している。これは、その主星の周りを公転する、初めて発見された惑星に与えられ、それ以降は発見された順に応じてアルファベットが付与されていく[ 10] 。ケプラー61の場合、公転している惑星は1つだけなので、b のみが使用される。ケプラー61という名称は、ケプラーミッションにおいて惑星の存在が正式に確認された、61番目の恒星である事に因む。
特徴
大きさの比較
太陽
ケプラー61A
ケプラー61は連星系 であることが知られている。主星のケプラー61Aは太陽 の63%の質量 と、62%の半径 を持つK型主系列星 である。太陽の表面温度は5,778K (5,505℃ )[ 11] で、年齢は46億年[ 12] であるが、それに対してケプラー61の表面温度は 4,017 K(3,744 ℃)で、年齢は10億年以上とされている[ 2] 。
恒星に含まれる鉄 やその他の重元素 の含有量を示す金属量 ([Fe/H])は0.03、すなわち太陽の107%で、太陽よりもわずかに金属を多く含んでいる[ 2] 。光度 は、ケプラー61のような通常の恒星の場合、太陽の約8%となる。地球から見てどれだけ明るく見えるかを示した視等級 は15等級で、肉眼で観望する事はできない。
2016年 に2つの伴星が存在しており、ケプラー61系が3つの恒星から成る三重連星系であることが確認されたという研究結果が公表された。これらの伴星は主星ケプラー61Aから0.480秒角 と1.105秒角離れた位置にあり、ガイア計画 で求められた年周視差 に基づいてケプラー61系までの距離を338パーセク とすると、地球上から観測した射影上の距離はそれぞれ 162 au と 372 au となる[ 5] [ 6] 。太陽系外惑星エンサイクロペディア では、両者はどちらも暗い赤色矮星 である可能性があるとしている[ 6] 。
惑星系
主星ケプラー61Aを公転する事が知られている唯一の惑星ケプラー61b (ケプラー61Ab)は恒星面通過 を起こすことが知られている。これは地球から見て、惑星が主星と地球の間を通過する軌道を持つ事を示し、地球から見た相対的な軌道傾斜角 は1度未満となる。これにより、惑星の大きさと公転周期 を求めることができる。
ケプラー61bは地球の2.15倍の半径を持つスーパーアース とされており、ケプラー61Aのハビタブルゾーンの内縁付近を公転している。しかし、やや歪んでいる楕円軌道のため、軌道の位置によっては生命や液体の水 が存在できない環境になるかもしれない。その大きさから、固体の表面を持たないミニ・ネプチューン である可能性もある。
脚注
注釈
^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
出典
^ a b c d e f g h i j k l m “Results for Kepler-61 ”. SIMBAD Astronomical Database . CDS . 2018年11月3日 閲覧。
^ a b c d e f g h i j k Sarah Ballard; David Charbonneau et al. (2013). “Exoplanet Characterization by Proxy: A Transiting 2.15 R⊕ Planet near the Habitable Zone of the Late K Dwarf Kepler-61” . The Astrophysical Journal 773 (2): 18. arXiv :1304.6726 . Bibcode : 2013ApJ...773...98B . doi :10.1088/0004-637X/773/2/98 . https://iopscience.iop.org/article/10.1088/0004-637X/773/2/98/meta .
^ McQuillan, A.; Mazeh, T.; Aigrain, S. (2013). “Stellar Rotation Periods of The Kepler objects of Interest: A Dearth of Close-In Planets Around Fast Rotators” . The Astrophysical Journal Letters 775 (1): L11. arXiv :1308.1845 . Bibcode : 2013ApJ...775L..11M . doi :10.1088/2041-8205/775/1/L11 . https://iopscience.iop.org/article/10.1088/2041-8205/775/1/L11/meta .
^ a b “Kepler-61 ”. Extrasolar Planet's Catalogue . 京都大学 . 2018年11月3日 閲覧。
^ a b c d e f Furlan, E.; Ciardi, D. R.; Everett, M. E. et al. (2017). “The Kepler Follow-up Observation Program. I. A Catalog of Companions to Kepler Stars from High-Resolution Imaging”. The Astronomical Journal 153 (2): 28. arXiv :1612.02392 . Bibcode : 2017AJ....153...71F . doi :10.3847/1538-3881/153/2/71 . 71. VizieR [1] [2] にてデータの閲覧が可能
^ a b c d Jean Schneider (2024年7月28日). “Planet Kepler-61 Ab ”. The Extrasolar Planet Encyclopaedia . Paris Observatory . 2024年10月17日 閲覧。
^ Morton, Timothy; Johnson, John (2011). “On the Low False Positive Probabilities of Kepler Planet Candidates” . The Astrophysical Journal 738 (2): 170. arXiv :1101.5630 . Bibcode : 2011ApJ...738..170M . doi :10.1088/0004-637X/738/2/170 . https://iopscience.iop.org/0004-637X/738/2/170/ .
^ “Kepler-61 ”. NASA Exoplanet Archive . NASA. 2018年11月3日 閲覧。
^ a b “Kepler Input Catalog search result ”. Space Telescope Science Institute . 2018年11月3日 閲覧。
^ Hessman, F. V.; Dhillon, V. S.; Winget, D. E.; Schreiber, M. R.; Horne, K.; Marsh, T. R.; Guenther, E.; Schwope, A.; Heber, U. (2010). "On the naming convention used for multiple star systems and extrasolar planets". arXiv :1012.0707v1 [astro-ph.SR ]。
^ Fraser Cain (2008年9月15日). “Temperature of the Sun ”. Universe Today . 2018年11月3日 閲覧。
^ Fraser Cain (2008年9月16日). “How Old is the Sun? ”. Universe Today. 2018年11月3日 閲覧。
関連項目
外部リンク