巡航戦車 Mk.VI クルセーダー(A15)
Mk.VI クルセーダー III
性能諸元 全長
5.98m 全幅
2.64m 全高
2.24m 重量
20t 懸架方式
縦置きコイルスプリング 速度
43km/h 行動距離
161km 主砲
2ポンド砲 ×1(Mk.Ⅰ)
6ポンド砲 ×1(Mk.Ⅲ) 副武装
7.92mm ベサ機関銃 (同軸機関銃 ) 装甲
50mm エンジン
ナッフィールド・リバティ 340hp/1,500rpm 乗員
3名(車長 兼装填手・砲手兼無線 手・操縦士 ) テンプレートを表示
巡航戦車 Mk.VI クルセーダー(A15) (Tank, Cruiser Mk VI Crusader(A15) )は、巡航戦車Mk.V カヴェナンター と並行して、1940年 から開発されたイギリス の巡航戦車 (20トン級)である。「クルセーダー(Crusader)」とは「十字軍 兵士」を意味する。
5,000輌以上が製造され、北アフリカ戦線におけるイギリス軍の勝利に大きく貢献した。北アフリカ以外では活躍しなかったが、そのシャーシは、対空、火力支援、観測、通信、ブルドーザー、回収車、などのバリエーションへと改造された。
概要
クルセーダー II、北アフリカ戦線
クルセーダー巡航戦車は、巡航戦車Mk.V カヴェナンター と並列して開発されたイギリスの巡航戦車 である。 A13系巡航戦車(巡航戦車 Mk.Ⅲ 、巡航戦車Mk.Ⅳ ) の後継として並行して開発された巡航戦車Mk.V カヴェナンター は問題多発で実戦運用に耐えなかったため、イギリス軍の主力として北アフリカ戦線 に投入された。
基本的にエンジン 以外はカヴェナンターと多くの部品を共用化する設計思想で開発された。カヴェナンターとクルセーダーは、どちらもナッフィールド社(Nuffield Mechanizations and Aero Limited)設計の同じ主砲塔を使用していた。カヴェナンターよりも車体が拡大されたため、転輪が1組増えて片側5個となっている。開始自体はカヴェナンターより遅かったものの、試作車 の完成はカヴェナンターより6週間も早い1940年 4月9日 だった。姿形がよく似ていることから、問題多発だったカヴェナンターの改良版と言われることがあるが、実際はカヴェナンターと並行して開発が行われており、カヴェナンターの不具合を改修して本車が誕生したわけではない。
当初は5人乗りの計画だったが、銃塔 には換気装置が無く、熱と発射ガスがこもるため、Mk.IIの第1量産バッチを最後に撤去されて乗員が1名減り、さらにMk.IIIで6ポンド砲 を搭載した際に装填手のスペースが無くなり3人乗りになってしまい、中途半端な戦力の戦車 になってしまった。またリバティ・エンジンは、より軽量の戦車では特に問題を起こさなかったが、重量の増したクルセーダーが砂漠 の荒地で走行した場合、シリンダーブロック が緩みオイル 漏れをおこした他、細かい砂 で冷却系(水冷 用のポンプや空冷 ファンを回すチェーン )の部品が磨耗するなどの故障が多発した。乗員が最大速度を60km/hに向上させるため、勝手に速度制限用の調速機 を解除したことでますます故障発生率は高まり、「連続36時間重大な故障が発生せず稼働すればそれは奇跡」と乗員に評される程であった。
エンジンの寿命も短いなど走行系の問題は多かったが、砂地での走破能力はボギー式サスペンションのアメリカ 製戦車より優れていた。良好な速度性能があるが、後退速度が5㎞と遅い。実戦投入された北アフリカ戦線の戦車戦 では、ライバルであるIII号戦車 (5cm/L42搭載型)と対戦した場合、クルセーダー Mk.I(2ポンド砲搭載型)では500ヤード(457m)まで接近して射撃 する必要があるのに対し、III号戦車は1,000ヤード(914m)の距離からクルセーダーを撃破 できると報告されている。また被弾によって搭載弾薬 の装薬が誘爆・炎上しやすい欠点もあった。にもかかわらず当時の巡航戦車では唯一物になる戦力だったため、装甲 や主砲 に改良を加えながら、北アフリカ最後の戦いであるチュニジア戦まで戦い続けた。そして、後継のMk.VIII クロムウェル やアメリカ製のM4中戦車 に更新され、北アフリカで生き残った状態のいいクルセーダーの多くは、フランス植民地軍に供与された。またドイツ軍は北アフリカで鹵獲したクルセーダーに Kreuzer-Panzerkampfwagen Mk.VI 746(e) の形式名を付けて運用した。
ヨーロッパ反攻作戦の頃には、対空戦車 型や17ポンド対戦車砲 を牽引する砲牽引車 型が使用されている。15tに満たないMk.II(A10)・Mk.III(A13)巡航戦車よりは大きいが、あくまで機動力 が重視される巡航戦車であり、同時期の歩兵戦車 よりはるかに高速であった。
主要形式
小銃塔を装備したクルセーダー I
クルセーダー I (巡航戦車 Mk.VI)
2ポンド砲 を搭載。車体前部左側に1名用銃塔 を持つが、問題が多く、後に撤去されたものが多い。乗員4-5名。
クルセーダー I CS
近接支援型。2ポンド砲 の代わりに3インチ榴弾砲 を装備している。
クルセーダー II (巡航戦車 Mk.VI A)
クルセーダー Iの車体前面および砲塔前面の装甲 を強化した型。銃塔は同じく撤去されたものが多い。乗員4から5名。
クルセーダー II CS
近接支援型。クルセーダーⅠCSと同じく2ポンド砲 の代わりに3インチ榴弾砲 を装備している。
クルセーダー III
6ポンド砲 を搭載するために砲塔を若干拡大し、車体前面の装甲を51mmへ強化した、戦車 型クルセーダーの最終形。6ポンド砲が砲塔内部を圧迫したため、砲塔乗員が戦車長 と砲手の2名となった。これにより戦車長の指揮 に支障をきたしたため、同じ部隊 でクルセーダーIIが指揮戦車 として引き続き運用された。乗員3名。1942年5月から生産され[ 1] 、第二次エル・アラメイン会戦 から実戦投入された。
派生型
クルセーダー OP (Crusader Observation Post)
砲兵部隊に随伴する砲兵観測車に改修されたもの。砲塔が固定され、主砲はダミーに変更されている。空いた砲弾搭載スペースに追加の無線機を増設し、マップテーブルを備える。
クルセーダー III AA Mk.I
ボフォース 40mm機関砲 1門を搭載する対空戦車型として開発された。
最初に設計されたタイプは砲の前後左右を保護するオープントップの砲塔を持つものであったが、砲塔を旋回させる速度に問題があるとされ、簡略化された設計の量産モデルが214両生産された。
量産モデルの初期型は、砲塔を撤去したクルセーダーの車体に通常の牽引型ボフォース40mm機関砲をほぼそのまま載せたもの(砲の前面のみ防弾板あり)で、量産モデルの後期型では防弾板が3面(前面および左右)に拡張された。
クルセーダー III AA Mk.II / Mk.III
密閉型砲塔にエリコン20mm機関砲 、あるいはこれを国産化したポールステン 20mm機関砲 2門を搭載する対空戦車型。
MK.IIとMK.IIIはほぼ同型であるが、Mk.IIIでは無線機が砲塔内部から車体に移動し、砲塔形状を一部変更し、同軸機銃として2門の機関砲の間にヴィッカース重機関銃 が追加されている.[ 2] [ 1] [ 3] 。
ほぼ同型の砲塔をセントー巡航戦車 に搭載したセントーAA、AEC装甲車 に搭載したAEC AAも並行して試作されたが、これらは量産されていない[ 3] 。
またエリコン20mm機関砲を縦に3連装に配置したバージョンのクルセーダーAAも少数生産された[ 3] 。
クルセーダー II ガントラクター Mk.I
車体上部に箱状の大型兵員室を備える砲牽引車 型。主に17ポンド砲 運用部隊での牽引および弾薬・人員輸送に用いられた。車内容積の広さを利用し、指揮車両として使用されるケースもあった.[ 4] 。
クルセーダー ARV
砲塔を撤去し、車体前方部にブームクレーンを装備する装甲回収車型。自衛用に連装対空機関銃を装備する。
クルセーダー ドーザー
クルセーダーの車体にドーザーブレードを装着したもの。ドーザーブレードの形状はセントー巡航戦車 の派生型として量産されたセントー ドーザーとほぼ同型のものである。砲塔を撤去したクルセーダーにドーザーブレードを装着したもの、ガントラクター型にドーザーブレードを装着したものの写真が残されている。
クルセーダー AMRA Mk 1d (Anti-Mine Roller Attachment)
地雷処理ローラー装備型。
クルセーダー 5.5インチ自走砲
大戦後に恐らくテスト用に製造されたもので、車体前方にBL 5.5インチ砲 を車体に対して後ろ向きに搭載したもの。
クルセーダー自走砲 (アルゼンチン軍による改造)
大戦後、アルゼンチンに売却されたクルセーダーガントラクターを、アルゼンチン軍がフランス製75mm砲や105mm砲を搭載する自走砲に改造したもの[1] [ 5] [ 6] 。
クルセーダーAA Mk.I, 40mm機関砲 単装型、初期試作型。
クルセーダーAA Mk.III, 20mm機関砲 2連装型
クルセーダーAA, 20mm機関砲 3連装型
クルセーダー ARV
クルセーダー ガントラクター
クルセーダー ガントラクター, ドーザー装備型。
登場作品
漫画・アニメ
『ガールズ&パンツァー 劇場版 』
Mk.IIIが登場。聖グロリアーナ女学院が使用し、車長 はローズヒップが務める、クルセイダーの最高速を最大限に活かした戦いをする。
ゲーム
『War Thunder 』
イギリス陸軍 の軽戦車 としてMk.II・Mk.IIIが登場。また、対空車両 としてAA Mk.I(ボフォース 40mm機関砲 1門搭載)・AA Mk.II(エリコンSS 20mm機関砲 2門搭載)が登場。
『World of Tanks 』
イギリス中戦車 Crusaderとして開発可能。また、本車車台に5.5インチカノン砲 を搭載した派生試作車 のイギリス自走砲 Crusader 5.5-in. SPも開発可能。
『コール オブ デューティ2 』
イギリス軍 の北アフリカ戦線 に登場。戦車戦 では、プレイヤーキャラの1人であるデイビッド・ウェルシュの戦車が操作可能。
『トータル・タンク・シミュレーター 』
英国の改軽戦車CRUSADERとしてクルセーダーIII AA Mk.IIが登場。
『パンツァーフロント Ausf.B 』
Mk.Iが登場。
『ブルーアーカイブ -Blue Archive- 』
デフォルメされたMk.Iが「クルセイダー」として登場。同作のプロモーションビデオなどにも登場する。
『虫けら戦車 』
小さくなり虫と戦うことになったプレイヤーのドイツ軍 戦車兵がフィールド上で見つけると使用できる。
脚注
参考文献
Bingham, James. Crusader: Cruiser Mark VI . AFV Profile, No. 8. Windsor: Profile. OCLC 54349416
Boyd, David (2008年). “Crusader tank ”. WWII Equipment . David Boyd. 2022年2月20日 閲覧。
Chamberlain, Peter; Ellis, Chris (1981) [1969], British and American Tanks of World War Two, The Complete Illustrated History of British, American, and Commonwealth Tanks 1933-1945 , Arco
Fletcher, David (1995). Crusader and Covenanter Cruiser Tank 1939–1945 . New Vanguard 14. illustrated by Peter Sarson. Botley: Osprey . ISBN 1-85532-512-8
Fogliani, Sigal; Jorge, Ricardo (1997) (スペイン語). Blindados Argentinos, de Uruguay y Paraguay . Buenos Aires: Ayer y Hoy Ediciones. ISBN 978-987-95832-7-2
Milsom, John; Sanders, John; Scarborough, Gerald (1976). Crusader . Classic AFVs. 1 . Yeovil: Patrick Stephens. ISBN 978-0-85059-194-1
Neillands, Robin (1991). The Desert Rats: 7th Armoured Division, 1940–1945 . London: Weidenfeld and Nicolson. ISBN 978-0-297-81191-6
関連項目