クリスマス・イヴ (オペラ)

初演時にオクサーナを演じるムラヴィナ

クリスマス・イヴ』(ロシア語:Ночь перед Рождеством)は、ニコライ・リムスキー=コルサコフが作曲した4幕からなるロシア語オペラ1894年から1895年にかけて作曲された[1]

台本は、ニコライ・ゴーゴリの『ディカーニカ近郷夜話』の中にある同名の短編 (enを基に、リムスキー=コルサコフ自身が作成した[1]

初演は1895年11月28日(グレゴリオ暦12月10日)、サンクトペテルブルクマリインスキー劇場において、ナプラヴニクの指揮で行われた。イヴァン・イェルショフがヴァクーラ、エウゲニア・ムラヴィナがオクサーナ、フョードル・ストラヴィンスキーがパナスを演じた[1]

なお、チャイコフスキーが同じ題材を元にオペラ『鍛冶屋のヴァクーラ』(1874年)を作曲している。チャイコフスキーのオペラはコンクール出品作品であり、リムスキー=コルサコフはそのコンクールの審査員だった関係から、チャイコフスキーの生前は同じ作品のオペラ化は控え、没後に手をつけた[2]

オペラ自身は不評だったが、手の込んだ和声と色彩的な創意にあふれている。リムスキー=コルサコフがチェレスタをはじめて採用した曲でもある[1]

1903年に作曲者により組曲が編まれた。

登場人物

  • ヴァクーラ(テノール)- 鍛冶屋の男。
  • ソローハ(メゾソプラノ)- ヴァクーラの母、魔女。
  • 悪魔(テノール)
  • チュブ(バス)- 年輩のコサック
  • オクサーナ(ソプラノ)- チュブの娘。
  • パナス(バス)
  • 村長(バリトン)
  • 聖職者(テノール)[3]- 名前はオシップ・ニキフォロヴィチ。
  • 紫の鼻の女(メゾソプラノ)
  • 普通の鼻の女(ソプラノ)
  • パツューク(バス)
  • 女帝(メゾソプラノ)

あらすじ

舞台は18世紀ウクライナのディカーニカ(Диканька)村。

第1幕

悪魔にそそのかされてソローハは月を盗み、吹雪を起こす。愛するオクサーナにセレナードを聞かせようとしていたソローハの息子のヴァクーラや、闇の中で道に迷ったチュブとパナスは困る。ヴァクーラはチュブを恋敵とまちがえて殴る。

自分が誰よりも美しいと思うオクサーナは、ヴァクーラの告白に対して、女帝の靴をクリスマス・プレゼントとして贈ってくれた人と結婚すると言う。

第2幕

ソローハと悪魔が愛しあうところに村長がやってきて、悪魔は袋に隠れる。しかし今度は聖職者がやってきて、村長が別の袋に隠れる。さらにチュブがやってきて、聖職者が別の袋に隠れる。最後にヴァクーラがやってきて、袋を鍛冶屋の仕事場に持っていく。

村人たちがクリスマス・イヴを祝う。ヴァクーラがオクサーナの要求に絶望しながら袋をあけると、中には小さくなった間男たちがはいっていた。

第3幕

呪術師のパツュークはヴァクーラに、悪魔の力を借りることを助言する。ヴァクーラは袋の中の悪魔を助けてやり、十字架の力で彼を従わせる。ヴァクーラと悪魔は空を飛んで都のサンクトペテルブルクへ行き、女帝の靴をもらって村に帰る。

第4幕

ヴァクーラが絶望のあまり自殺したのではないかと心配するオクサーナのもとにヴァクーラが現れて、女帝の靴をプレゼントとして渡す。オクサーナは、本当はプレゼントと無関係にヴァクーラのことが好きだと告げる。人々はふたりを祝福する。

組曲

1903年に管弦楽用の組曲(合唱は任意)が編曲された。長さは30分ほどで、連続して演奏される。第3幕の音楽を主にしている。

  • 導入「聖夜」(Вступление „Святый вечер“)
  • 星たちの遊戯と踊り (Игры и пляски звезд)(第6場)
    • マズルカ (Мазурка)
    • 彗星の行列 (Шествие кометы)
    • 輪舞 (Хоровод)
    • チャルダーシュと流れ星の雨 (Чардаш и дождь падающих звезд)
  • 悪魔のキャロル (Бесовская колядка)
  • 合唱つきポロネーズ (Польский с хором)(第7場)
  • 第8場

脚注

  1. ^ a b c d Taruskin (2009) pp.117-118
  2. ^ The Earl of Harewood; Anthony Peattie, ed (2000) [1922]. “Christmas Eve”. The New Kobbe's Opera Book. Ebury Press. pp. 638-640. ISBN 9780091814106 
  3. ^ 原語ではдьяк

参考文献

  • Taruskin, Richard (2009). “Christmas Eve [Noch pered rozhdestvom]”. In Stanley Sadie; Laura Macy. The Grove Book of Operas (2nd ed.). Oxford University Press. pp. 117-118. ISBN 9780195387117 

外部リンク