キバリーナ (英語 : Kivalina 、発音: kiv-uh-LEE-nuh [ 6] 、イヌピアック語 : Kivalliñiq )は、アメリカ合衆国 アラスカ州 ノースウエストアークティック郡 の第二級都市 [ 7] であり、実際上の村 である。人口は、2000年の国勢調査 (英語版 ) 時で377人[ 8] 、2010年の国勢調査 (英語版 ) 時で374人である。
キバリーナは島に位置するが、その島は海面上昇 と海岸侵食 の危機にさらされている。2013年の報告によれば、この島は2025年までに冠水すると予測されている[ 9] 。
歴史
キバリーナは、1847年、ロシア帝国海軍 のラヴレンティ・ザゴスキン (英語版 ) 中尉によって"Kivualinagmut"の名前で初めて報告されたイヌピアット の村である。この地は、北極圏沿岸地域とコツェビュー湾 (英語版 ) 沿岸の村の間を行き来する人にとって、宿所であり続けた。2009年に発見された3柱の遺体と遺品は、一千年以上前に消滅した、捕鯨に依らないイピウタク (英語版 ) 文明を表す一例である[ 10] 。
キバリーナは、この地域で唯一、ホッキョククジラ を狩猟対象とする村である。かつての村は、キバリーナラグーン(Kivalina Lagoon )の北端にあったが、移転した。
1900年頃、トナカイ が移入し、トナカイ飼いになる者も現れた。
1960年にキバリーナに滑走路が建設され、1969年に第二級都市(second-class city )として法人化(市制移行)された。1970年代に、新しい学校と電力網が村内に建設された。
2014年12月5日、キバリーナで唯一の雑貨店が焼失した[ 11] 。この店舗は、旧来よりもより便利で安全にするための改築工事を行い、2015年7月に再開した[ 12] 。
地理
キバリーナは、チュクチ海 とキバリーナ川 の河口となっているラグーン に挟まれた、全長12キロメートルのバリアー島 の南端に位置する[ 13] 。キバリーナが属する郡の郡庁所在地であるコツェビュー (英語版 ) からは、北西に130キロメートルほど離れている。
アメリカ合衆国国勢調査局 によると 、この村の総面積は3.9平方マイル (10 km2 )で、うち1.9平方マイル (4.9 km2 )が陸地で、2.0平方マイル (5.2 km2 )は水域である。
気候
キバリーナ (1991–2020)の気候
月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
年
最高気温記録 °C (°F )
8 (47)
11 (52)
9 (48)
17 (62)
20 (68)
36 (96)
34 (94)
24 (76)
18 (65)
14 (58)
4 (40)
4 (39)
36 (96)
平均最高気温 °C (°F )
−14.1 (6.6)
−12.4 (9.7)
−12.6 (9.3)
−4.7 (23.5)
3.4 (38.1)
10.0 (50)
13.5 (56.3)
12.5 (54.5)
7.9 (46.2)
−0.8 (30.6)
−8.2 (17.2)
−12.2 (10)
−1.48 (29.33)
日平均気温 °C (°F )
−18.4 (−1.1)
−17.1 (1.2)
−17.3 (0.9)
−9.6 (14.7)
0.1 (32.2)
6.6 (43.9)
10.5 (50.9)
9.5 (49.1)
4.8 (40.6)
−3.6 (25.5)
−11.4 (11.5)
−16.2 (2.8)
−5.17 (22.68)
平均最低気温 °C (°F )
−22.8 (−9)
−21.7 (−7.1)
−22.0 (−7.6)
−14.4 (6.1)
−3.4 (25.9)
3.2 (37.8)
7.5 (45.5)
6.5 (43.7)
1.7 (35.1)
−6.3 (20.7)
−14.7 (5.5)
−20.1 (−4.2)
−8.87 (16.03)
最低気温記録 °C (°F )
−46 (−50)
−48 (−54)
−41 (−41)
−33 (−27)
−23 (−9)
−6 (21)
1 (33)
−2 (28)
−11 (12)
−22 (−8)
−34 (−30)
−41 (−41)
−48 (−54)
降水量 mm (inch)
7.1 (0.28)
11.2 (0.441)
4.6 (0.181)
14.2 (0.559)
14.5 (0.571)
20.1 (0.791)
35.8 (1.409)
59.2 (2.331)
38.6 (1.52)
23.6 (0.929)
13.0 (0.512)
4.3 (0.169)
246.2 (9.693)
平均降雨日数
5.3
6.2
3.0
4.5
6.6
6.4
12.2
14.2
12.1
8.5
6.5
3.8
89.3
出典:NOWData - NOAA Online Weather Data[ 14]
人口統計
環境問題
嵐による深刻な海岸侵食 が発生していることから、キバリーナ市は現在地から12キロメートル離れた場所にまるごと移転したいと考えており、代替地に関する調査が進行中である[ 16] 。アメリカ陸軍工兵司令部 は、移転に係る費用を9,500万ドルから1億2,500万ドルと見積り、会計検査院 (英語版 ) は、同じく1億ドルから4億ドルと見積もっている[ 17] 。
2011年、ヘイマーケット・ブックス(Haymarket Books )は、クリスティン・シアラー(Christine Shearer )による著書、“Kivalina : A Climate Change Story ”を出版した。
キバリーナ市を巡る裁判
2008年2月14日、キバリーナ市と連邦承認部族のキバリーナ村アラスカ原住民(Alaska Native Village of Kivalina )は、エクソンモービル と他8社の石油会社、電力会社14社、石炭企業1社を相手取った訴訟をサンフランシスコ 連邦裁判所に起こした[ 18] 。訴訟事由は、被告らが排出した温室効果ガス が地球温暖化 に悪影響を与えており、そのせいでコミュニティの存続が危ぶまれているというものであった[ 18] 。裁判では、移転に係る費用は4億ドルにも上ると推定された[ 19] が、温室効果ガスの排出規制は司法というよりかは政治にかかわる問題であり、解決は法廷というよりかは議会 や政権によってなされるべきという立場から、2009年9月30日にこの訴えを斥けた[ 20] 。
また、キバリーナ市は、カナダの鉱業会社テック・コミンコ(Teck Cominco )を市の水源を汚染したとして訴えた[ 21] 。
"Orange goo"
関連項目
出典
^ 1996 Alaska Municipal Officials Directory . Juneau : Alaska Municipal League/Alaska Department of Community and Regional Affairs . (January 1996). p. 81
^ 2015 Alaska Municipal Officials Directory . Juneau: Alaska Municipal League. (2015). p. 87
^ “2018 U.S. Gazetteer Files ”. United States Census Bureau. Jul 1, 2019 閲覧。
^ “2010 City Population and Housing Occupancy Status ”. U.S. Census Bureau. July 21, 2011時点のオリジナル よりアーカイブ。May 14, 2012 閲覧。
^ a b “Population and Housing Unit Estimates ”. June 4, 2019 閲覧。
^
“Kivalina ”. Division of Community and Regional Affairs, Alaska Department of Commerce, Community and Economic Development . December 30, 2012時点のオリジナル よりアーカイブ。January 24, 2013 閲覧。
^
“Alaska Taxable 2011: Municipal Taxation - Rates and Policies ” (PDF ). Division of Community and Regional Affairs, Alaska Department of Commerce, Community and Economic Development (January 2012). 2013年4月25日時点のオリジナル よりアーカイブ。2020年6月23日 閲覧。
^ “American FactFinder ”. United States Census Bureau . 2013年9月11日時点のオリジナル よりアーカイブ。2008年1月31日 閲覧。
^ Stephen Sackur (30 July 2013). “The Alaskan village set to disappear underwater in a decade” . BBC News . https://www.bbc.co.uk/news/magazine-23346370
^ "Remains of ancient inhabitants found in Kivilina." Anchorage Daily News, 25 August 2009 Archived 27 August 2009 at the Wayback Machine .
^
DeMarban, Alex. "Fire Destroys General Store in Arctic Village of Kivalina." Fire Destroys General Store in Arctic Village of Kivalina 5 Dec. 2014. Alaska Dispatch News. Web. 11 Dec. 2014. <http://www.adn.com/article/20141205/fire-destroys-general-store-arctic-village-kivalina >.
^ "This is climate change: Alaskan villagers struggle as island is chewed up by the sea" LA Times, 30 August 2015
^ “Archived copy ”. 2009年6月18日時点のオリジナル よりアーカイブ。2016年2月6日 閲覧。 Environmental Assessment and Finding of No Significant Impact, Section 117 Expedited Erosion Control Project Kivilana Alaska, ACOE, September 2007 , Retrieved 2010-06-20
^ “NOWData - NOAA Online Weather Data ”. 2 November 2021 閲覧。
^ “Census of Population and Housing ”. Census.gov. April 26, 2015時点のオリジナル よりアーカイブ。June 4, 2015 閲覧。
^ An Alaska island is Losing Ground , Los Angeles Times, 25 Nov. 2007
^ Abate, Randall S. (May 2010). “Public Nuisance Suits for the Climate Justice Movement: The Right Thing and the Right Time” . Washington Law Review 85 : 197–252. https://digitalcommons.law.uw.edu/wlr/vol85/iss2/3/ .
^ a b "Eskimo village sues over global warming ", CNN, 26 February 2008.
^ Felicity Barringer (2008年2月27日). “Flooded Village Files Suit, Citing Corporate Link to Climate Change” . New York Times . https://www.nytimes.com/2008/02/27/us/27alaska.html 2008年2月29日 閲覧。
^ Order Granting Motions to Dismiss , N.D. Cal., Sept. 30, 2009.
^ "Teck Cominco to pay $120 million for Alaskan pipeline Archived March 4, 2016, at the Wayback Machine .", Montreal Gazette .
参考文献
外部リンク