ガス用ポリエチレン管ガス用ポリエチレン管(ガスようポリエチレンかん、英語: polyethylene gas pipe、PE管)は、軽量で可とう性を有し腐食しない材料として、1970年前後から欧米で本格的に採用された。日本では1979年3月にJIS規格が制定され、1982年11月にガス事業法の技術基準に低圧ガス導管の材料として新たに規定、ガス事業者にも正式に導入された。 現在、ガス協会では管路の耐震化を「ポリエチレン化率」として指標としており、耐震化の代名詞になっている。2012年のガスビジョン2030では、耐震化率(本管、供給管、内管)の耐震化率を90%まで引き上げることを目標に定められたが、本管の耐震化率は既に達成されたため、2021年、本管の耐震化率を95%とするよう目標設定が改められている。日本の都市ガスの耐震化はほぼ完了に向かっている。 不等沈下や地震に対して高い信頼性を有し、1995年の阪神・淡路大震災の時、低圧ガス管の被害は、主に小口径のねじ配管の接続部や建物への導入部に数多く見られたが、ポリエチレン管の場合、地震により地盤変位が生じた場所にも埋設されていたが、被害は見られなかった。この時を契機に使用量が急増した。 ガス管用としては、1960年代にアメリカで使われ始め、日本での採用は1970年代後半からである。1993年の釧路沖地震、1995年の阪神淡路大震災において「ガス用ポリエチレン管の被害が皆無であった」ことより、高い評価を得て、以後採用が急増した。 [1] ガス用ポリエチレン管は中密度ポリエチレンで、接合は一般的に融着接合である。中密度ポリエチレン(MDPE)は1960年代に開発され、1970年代にアメリカ・イギリス・フランスなどでガス管としての普及が進んだ。日本ではやや遅れて1980年代より普及が始まった。樹脂グレードはPE80であるが、一般的なPE80のポリエチレン樹脂に比べ柔軟性のある性質を持つものとなっている。[2]。ガス用ポリエチレン管は、1998年に、それまでの緑色から世界標準の黄色に変更されている[3]。 歴史日本では、EF(エレクトロフュージョン)工法の導入時に大阪ガス(株)と東京ガス(株)の大手ガス会社2社が中心となってそれぞれが管・継手メーカー、工具メーカーとグループを組み、開発が進められた。開発当時には3タイプの融着システムが開発された。大阪ガスと管材メーカーの三井石油化学工業(株)(現在は三井化学産資株式会社)・三菱樹脂(株)(現在は積水化学工業に事業統合)・積水化学工業(株)、工具メーカーのレッキス工業(株)・(株)松阪鉄工所・大肯精密(株)によるMMS方式グループ。MMSは、管材メーカー社名のローマ字頭文字をとっている。ポリエチレン溶融条件を温度により決定するコントローラーシステムを主としている。 東京ガスと管材メーカーの日立金属によるシステムは、ポリエチレンを溶融部膨張圧力で制御するコントローラーシステムである。そしてクボタ・日本鋼管によるイノガス方式である[4][5]。 ガス用ポリエチレン管は低圧導管として使用する場合、水道や下水道のような圧力管としての仕様とは環境が異なる。そのため耐用年数については100年などではなく、ガス会社の説明ではしばしば「半永久的」と表現されることもあるが、土圧による影響など未検証のファクターもあり公式な見解は無い。 ガス用ポリエチレン管は日本工業規格 JIS K 6774 に制定されており、管のSDR(外径/肉厚 比)は1号管がSDR11(φ25~75・一部100の発売品種)、1号U管がSDR13.6(φ100、150、200の発売品種)、2号管がSDR17(φ150、200の発売品種)となっており、公称外径315・SDR17 のみISOの外径寸法規格のものが発売されている。また、融着接続に使用するポリエチレン管についてはISO/FDIS 4427-2:2019 においてEF接続、BF接続に使用する場合の最低肉厚を3mm以上と推奨している。融着時に加熱されるためコールドゾーンが考慮されている。そのため、発売されているSDR11系列のφ25のガス用ポリエチレン管の肉厚は3.4mmと規定されている。3mmちょうどの寸法となっていない理由は融着時に切削をするため管肉厚が削られる(3mmを下回る)事などが理由として考えられるが文献として明確な理由が開示されていない。JIS K 6774には、SDR11の寸法表に「呼び径25以下の基本厚さは,SDRの規定にかかわらずこの表とする。」との記載がある。 阪神淡路大震災時に東京ガスグループが復旧支援に駆け付けたが、コントローラー方式の違いにより所持してきた機器が使用出来ない問題が顕著となった。中越沖地震においても同様に他方式の製品が納入されたが、現地では使えないまま製品が放置されたとして現地で批判を受けた。コントローラーが共用できるシステムとして、バーコード方式のEFコントローラーが開発されたが水道や下水分野と異なり、ガス用ポリエチレン管は今だ共用化はされていない。 接合方法ガス用ポリエチレン管の接合方法は、基本的には融着となっている。 PE管の融着には、ヒートフュージョン (HF) 接合とエレクトロフュージョン (EF) 接合の2つの方法がある。使用するポリエチレン管・継手等は、ガス用ポリエチレン管等推奨表示制度実施要領に定められた推奨マーク(GPP)の付された管、継手並びに、HF管融着機及び、EFコントローラーを用いて行なう。
既設管連絡の場合及び、ポリエチレン管以外の管との接合の場合は、メカニカル継手又は、トランジション継手を使用する。 EF接合は、エレクトロフュージョン継手がメーカーごとに融着システムが異なりEFコントローラーに互換性がないことが問題であった。その解決方法として、バーコード制御方式という継手に添付したバーコードラベルに記載された融着条件(融着電圧・通電時間等)に従って作動するメーカー間の互換性と施工情報の追跡性(トレーサビリティ機能)を向上させたバーコード式エレクトロフュージョンシステムが開発された[6]。ガス用ポリエチレン管の融着に使用する機器・材料はGPPマークを取得するものがほとんどである。(現在の下水、水道用のコントローラーともほぼ同等であるがガス用の制御は下水、水道用よりも細かい制御がされている場合もあり、全く同じとは言えない) 継手ポリエチレン管継手は、ヒートフュージョン (HF) 継手、エレクトロフュージョン (EF) 継手およびスピゴット継手に大別される。 主な機器工具水道配水用ポリエチレン管
下水道用ポリエチレン管
事件という事件が起きている。 脚注
参考文献
関連項目外部リンク
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