オニグモ類
オニグモ(鬼蜘蛛)は、節足動物門クモ綱クモ目コガネグモ科に属するクモの一種、Araneus ventricosus L. Koch の和名であるが、同時にこの属(オニグモ属、Araneus)の名でもあり、この属のものはほとんどがこの名に修飾語をつけた和名をもつ。 さらに、コガネグモ科にはヒメオニグモ属(Neoscona)、カタハリオニグモ属(Zilla)、ズグロオニグモ属(Yaginumia)など、「オニグモ」という名をもつクモが数多くいる。オニグモはこれらの総称としても使われる。広義に見た場合、その内容は多岐に富むが、基本的にはいずれも垂直丸網を張るクモである。 以下はオニグモ(Araneus ventricosus)を中心として、その他の大型のオニグモ類についても記す。 形態オニグモは、大型の造網性のクモである。体長は雌で30mm、雄でも20mmに達する。ただし、個体差や地方変異が多く,全身が黒褐色から黒に近い色のものから茶色のもの,緑がかったものまでさまざまなものがいる。 頭胸部はやや偏平で、頭部分はやや幅が狭い。眼は8個、4個ずつが前後2列の配列で、個々の眼はやや突出する。脚はよく発達しており、各節には環斑がある。腹部は丸みを帯びた三角形で、前の上面両側(両肩)にはっきりした突起がある。それより後方には、背面中心線を挟んで左右に波状の模様がある。鋸歯のある広葉樹の葉のような形なので、この模様を葉状斑(ようじょうはん)と呼んでいる。 上記の形態は雌のもので、雄ではおおよそ同じながら諸事より簡単になっている。 生息日本全土に分布し、人家周辺から山林にかけて生息する。 生活史成体が見られるのは夏で、8月から9月に産卵する。卵は偏平な卵嚢とし、壁や樹皮などに張り付ける。幼体は年を越して翌年2月以降に卵嚢を出て、夏に成熟する。 下記にも有るように、昼間は網に居らず、夕方から網の中央に移動して捕食活動をする。 網オニグモは夜間のみ円網を張るのが普通である。網は大きなもので、垂直に張られる。網の目はかなり粗い。 普通は昼間は軒下などにじっとしている。止まる場所には糸ですり鉢状の居場所が作ってある。暗くなるとそこから出て、網を張る。夜明け前には網を張るのと逆の手順で網を片付ける。網を張るのは30分ばかりしかかからないので、例えば夕方にはなにもなかったのに、暗くなって外に出ようと扉を開けると、目の前に大きなクモの巣が、というようなこともありがちである。 ただし、すべてのクモがこのように規則正しく夜だけ網を張っている訳ではない。地域によっては朝に網を畳まない例もある。また、たまには薄暗いところで昼間に網にいることも観察される。個体の成熟や環境条件などが影響するとも言われる。 網の処理について網を片付ける時に、その網をどうするかについてはちょっとした問題になった。『昆虫記』で有名なファーブルは後述のニワオニグモを観察し、網を片付けることを観察したが、クモは片付けて作られたクモの網の糸の丸めた固まりを食べてしまう、と報告し、また、おなかから作り出した糸をまた食べて、夜には再び糸として使うのだから大したものだ、などと述べた。 しかし、後のクモ学者にはこの記述に疑問を持つ向きが多く、実際に観察すると、丸めた糸の固まりをしばらく口にくわえた後に弾き飛ばす、との報告もなされた。また、丸めた糸のところに食べ残された小さな虫などがあった場合にはそれを食うことも観察され、恐らくファーブルはこういうところを見て誤解したのだと結論づけられた。 ところが、その後ニワオニグモが実際に網を食うことが証明された。これは、クモの網に放射性同位体を与えて、それがクモに取り込まれ、さらに次の日の網にそれが出てくることを確認する形で行われた。つまりファーブルの言っていたことが正しかった訳である。実際には、網を食わないクモがいるのも事実で、種によって異なるようである。 近縁種オニグモは個体変異や地方変異が多く、以下の2種は別種として扱われている。
ほかに、大型のオニグモとしては以下のようなものがある。
分類先に述べたように、「オニグモ」と呼ばれるクモの範囲は広い。ここにその代表的なものを挙げる。
参考文献
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