ウプシロン中間子ウプシロン中間子(ウプシロンちゅうかんし、Υ中間子)とは、ボトムクォーク()と反ボトムクォーク()からなる中間子であるボトモニウム()の1系列である。 なお、ラテン文字のYとの混同を避けるために、それと解るフォントや表記(「 ϒ 」など)を使用する。 概要ボトモニウムは多く知られているが、このうち電子-陽電子衝突実験で生成されるものをウプシロン中間子と呼ぶ。 すなわち、 である。 主量子数をnとして、Υ(nS)と表記されるほか、MeV単位の質量概数でたとえばΥ(10860)のように記す。その中で最も質量の小さいΥ(1S)を狭義のウプシロン中間子と呼ぶ場合もある。 クォーク構成から明らかなように、ウプシロン中間子は電荷やフレーバーを持たない。また、アイソスピンも0である。 なお、QCDによればスピンが0の状態はウプシロン中間子より質量が、0.1~1%程度軽くなる。 詳細Υ(1S)1977年にフェルミ国立加速器研究所のレーダーマンが率いるチームによって初めて発見されたウプシロン中間子であるとともに、これがボトムクォークの発見でもあった。 寿命はおよそ10-20sであり、e、μ、τの3種のレプトン対に各2.5%崩壊するなど、崩壊モードは極めて多い。 なおウプシロン粒子はこのように極めて短寿命で崩壊し、寿命τはエネルギー幅からτΔE〜h/2πから求められるに過ぎないので以下の記述では各粒子の寿命は割愛する。 Υ(2S)質量は、10.02326±0.00031GeV[3]。 これも崩壊モードはきわめて多岐である。Υ(1S)と荷電π中間子対に約20%、Υ(1S)と中性π中間子対に約10%崩壊するほか、レプトン(e、μ、τ)対に各々2%程度崩壊する。 Bファクトリーのひとつである、SLACのPEP-II加速器はその運転停止を2ヶ月延長して、2008年の2月から、Υ(2S)と下記のΥ(3S)を生成する実験を行った。そのデータは現在も解析が行われているが、同年秋にボトモニウムの基底状態、すなわちΥ(1S)に対応するスピン0の状態を発見したと発表した。それによれば、基底状態のΥ(1S)との質量差は、71.4+2.3−3.1±2.7MeVである[4]。 Υ(3S)質量は、10.3552±0.0005GeV[5]。 これも崩壊モードはきわめて多岐である。Υ(2S)+X(π中間子対など)に約10%、Υ(1S)+X(π中間子対など)に約7%崩壊するほか、レプトン(μ、τ)対にも各々2%程度崩壊するが、電子対への崩壊は極めてわずかである。 Υ(4S)Υ(10580)とも呼ばれる。 質量は、10.5794±0.0012GeV[6]。 殆どすべて(96%以上)が、B中間子対に崩壊する。荷電B中間子対と中性B中間子対の割合はほぼ等しい。 そのため、BファクトリーではこのΥ(4S)を生成する。素粒子実験においては非常に重要な粒子である。 Υ(10860)Y(5S)とも呼ばれる。質量は、10.865±0.008GeV[7]。 主な崩壊モードは、B中間子対類、ないしそれと1~2個のπ中間子に計60%程度、チャームB中間子対類に20%程度である。 Υ(11020)質量は、11.019±0.008GeV[8]。 崩壊については、きわめてわずかな割合で電子対への崩壊が観測されている以外は、現時点では未詳である。 脚注
関連項目外部リンク
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