アーサー・ハロウアーサー・ハロウ(Arthur Harrow)は、マーベル・コミックより出版されるコミック作品に登場する架空のキャラクターである。1985年4月にアラン・ゼレネッツとクリス・ワーナーによって創造され、『ムーンナイト』vol. 2第19号でデビューした。
キャラクター経歴オリジンアーサー・マイルズ・ハロウは顔の左側が麻痺し、口の左側が唸ったような形になった三叉神経痛に苦しむ人物だったが、疼痛理論の分野でノーベル医学賞の候補となった。しかし、彼の論文に目を通したビクトリア・グレイル博士は、ハロウが動物を使った限定的な研究しか行っていなかったにもかかわらず、どのように進展したかを不審に思うようになった。グレイルは、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所でナチス科学者たちが行った秘密実験に関する文書からハロウに辿り着いたことで、彼の推薦に異議を唱えた。ニュルンベルク裁判はその文書の破棄を命じたが、“O.M.N.I.U.M.”として知られるグループの働きで、その文書は不思議なことに姿を消していた。グレイルにアウシュビッツの実験を行っていたことを確信され、ジャガーとアルマジロの研究のためにメキシコにいたはずのハロウは、ノーベル委員会からインタビューに応じてストックホルムに報告するよう派遣された。 ムーンナイトO.M.N.I.U.M.のエージェントとなったハロウは、人体に痛みを感じなくさせる方法を見つける研究に資金提供を受けると同時に、マヤのピラミッド遺跡の地下にある秘密研究所に配属された。ハロウは絶え間ない痛みと顔面麻痺を止める方法をO.M.N.I.U.M.に求めたが、彼らの最終目的は不明だった。ハロウの3人の臣下が真麻の畑からさらに2人の農民労働者を捕らえ、北ユカタンにあるハロウの研究所に連れ帰ったのと同じ頃、マーク・スペクターは自動車を運転中、現れたコンスの神官たちに車をクラッシュされ、ハロウとその被験者の一人、グレイルとピラミッドの幻影を見せられた。O.M.N.I.U.M.はグレイルがユカタンにいると突き止め、彼女を拉致するためにココと正体不明の共犯者を送った。彼らはナイフを突きつけて彼女をバンに押し込んだが、その場に駆け付けたスペクターがすぐにムーンナイトに変身して彼女を救出した。最初、グレイルはスペクター/ムーンナイトに無愛想だったが、傷のある醜い男について尋ねると、2人ともハロウを探していることを理解し、自分の過去を話した。 一方ハロウは、テーブルに拘束した被験者たちの体に電極を挿入し、彼らの前腕を切り、経皮刺激を用いて労働者の身体を完全に脱感作していた。ハロウは自分の目標を達成し、そのプロセスを化学式に変えることで、ワイヤーや電極が不要になると考えた。だがハロウは、O.M.N.I.U.M.からグレイルが逃れたこと、そしてハロウの研究室も危険にさらされ、O.M.N.I.U.M.の存在を確実に秘匿するため、午後10時過ぎに彼とすべての暗号化された文書を回収するロボット飛行機を送ることを確認する通信を受け取った。ハロウはO.M.N.I.U.M.が金とアウシュビッツの文書を持っている以上、従わざるを得ないことはわかっていたが、ひとたび治療が完了すれば、もはや口出しはしないと誓った。 スペクターとグレイルが彼の研究室を見つけ、それに気付いたハロウがジャガーを2人に放った。ジャガーを退治したスペクターたちが研究室に降りて来ると、ハロウは6人の臣下に2人を取り囲み、殺すように命じて自らはヘリコプターで逃走。ハロウは焼夷弾を投下してグレイルを巻き込み、追撃してきたスペクターに彼女の救出に専念させることでその場からの離脱に成功。 O.M.N.I.U.M.の背後にいる謎の男に迎えられたハロウは、パラグアイのアスンシオンにある新しい研究所で実験を続けることを確約された。 才能と能力MCU版『マーベル・シネマティック・ユニバース』(MCU)の『ムーンナイト』では、イーサン・ホークが演じた[注釈 1]。日本語吹替は咲野俊介が担当。 キャラクター像古代エジプトに伝わる死者を食らう女神アメミットを信奉するカルト集団を率いる説教師。具体的な経緯は言及されきっていないが、過去にはコンスのアバターとして彼に命じられるままに悪党を制裁していた。だが自分を忠実な手駒として扱う偽善的なコンスと決別し、やがて悪事が起こるまえにその根源を絶やすアメミットを信奉するようになると[注釈 2]、コンスに仕えた過去への贖罪として、水を飲み干した後のガラスのコップを砕いて、その破片を詰めたサンダルを履くという自分自身への苦行を何時も課すようになった。そして現在において、ロンドン市内の一角で慈善事業を行いながら自身の信奉者を増やし、すべての悪の浄化を目論むアメミットの復活のための準備を着々と進めてきた。 なだめるような口調と振る舞いで多くの信奉者から尊敬と献身を集め、コンスのアバターという同じ問題を抱えるマーク・スペクター/ムーンナイトにも共感を見せる慈悲深さや[注釈 3]、スティーヴン・グラントに彼と同様のヴィーガンであると称して、レンズ豆のスープを自らご馳走する親しみやすさも感じ取れる中年男性だが[注釈 4]、アメミットのスカラベを持つスティーヴンを捕まえようとした際や、アメミットの墓の発掘の完遂が近づきつつある際には信奉者らへ檄を飛ばしたり、レイラ・エル=フーリーに「目を覚ませ!」と叫ぶ姿も見せ、潜在的な悪が存在しない世界の創造という思想を掲げつつも、コンスのアバターだった頃に悪党の制裁を楽しんでいたと告げたり、後述の“天秤の裁定”で悪人と示された人物や自身の目論見に反対する敵対者の命を躊躇いなく奪うほか、博物館でスティーヴンに「スカラベを渡さなければ八つ裂きにする」と館内放送で警告するなど、善良とは言えない凶暴性も秘めた人物である。 そして、機が熟したとしてアメミットの復活のための活動に信奉者らと乗り出し、その最中に接触したスティーヴン及びマークやレイラと敵対する。 能力英語のほかにも北京語を話す言語力、説教師として多くの信奉者に支持されるだけでなく、“エネアド”に属する神々すらも説き伏せるほどのカリスマ性や人心掌握術も発揮し、過去にコンスのアバターとして活動していたこともあって近接戦闘能力に関しても確かなものを持つ。 アメミットのアバターとなった際には、“アメミットの杖”の力もあってマーク及びスティーヴンや、タウエレトのアバターとなったレイラ/スカーレット・スカラベとも激しい格闘戦を繰り広げるほどの実力を見せた。 アイテム
このほかにも、マークに致命傷を負わされた信奉者の一人が携えていたウェブリー Mk VI リボルバーを抜き取って、マークを一時射殺している。 描写
ドクター・アーサー・ハロウ(Doctor Arthur Harrow)登場作品 - 『ムーンナイト』第4〜6話 マークのトラウマなどによって構築された“パットナム精神病院”(“ドゥアト”)内に登場した精神科医。現実のハロウと瓜二つだが、知性を感じる服装と整った口髭、顔にかけた眼鏡が特徴で[注釈 5]、ドゥアトに彷徨い込んだマークの主治医として、彼の記憶がすべて嘘だと誘導するような話し方をする一方で、映画『トゥーム・バスター』が好きであると述懐するなど、掴みどころがない紳士である。 自身のカウセリングルームに案内されたマークに対して、彼がパットナム精神病院に入院中の患者だと伝え、スーパーヒーローであるマークはすべて彼の妄想で、現実と頭の中の出来事の区別がついてないとマークに語り、彼を助ける主治医として質問しようとすると逃げ出された。しかし、トラウマの原因の追体験の途中でマークが突然戻ると質問を再会し、彼が暴れ始めるとボビー&ビリーを呼び出して、マークに鎮静剤を注射させた。 後に再び現れたマークをなだめ、今度はマークとスティーヴンどちらが主人格でどちらが副人格であるかを知るためにスティーヴンへ心を開かねばならないとマークへ助言し、スティーヴンが目の前にやってくると、彼の母親の死を口にし、それを激怒しながら否定するスティーヴンに母親が既に亡くなっていたことを自覚させた。 復活してハロウやアメミットとの決戦を制した直後のマーク及びスティーヴンの夢の中にも彼らの目の前に現れ、自分はコンスやアメミットが現実だとは思わず、2人に「治療を続けないと」と声をかけるが、既に自らの現実を選択しようと決意していた彼らに、血に染まっていた足跡を見られたことで、「先生こそ現状を把握できていない」と指摘されて狼狽え、別れを告げられる。 脚注注釈
参考
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