アルガリ (盤羊[ 8] 、羱羊[ 8] 、学名: Ovis ammon )は、偶蹄目 ウシ科 ヒツジ属 に分類される偶蹄類。種小名ammon は古代エジプトの神アメン に由来する[ 3] 。アルガリの名はモンゴルでの呼称に由来し[ 6] 、子羊やヒツジの意[ 3] 。
分布
アフガニスタン 東部、インド 北西部、ウズベキスタン 北東部、カザフスタン 東部、キルギス 、タジキスタン 東部、中華人民共和国 、ネパール 、モンゴル 、ロシア 南部
模式標本 の産地(模式産地)はウスチ・カメノゴルスク 周辺(カザフスタン)[ 6] 。
形態
体長 180 - 200センチメートル[ 5] [ 6] [ 7] 。尾長10 - 15センチメートル[ 7] 。肩高115 - 130センチメートル[ 7] 。体重95 - 180キログラム[ 6] [ 7] 。ヒツジ属最大種[ 5] [ 6] [ 7] 。
雌雄とも一対の角を持つが、特に雄の角が長大で、ねじれながら前方外側に伸びる[ 9] 。
染色体は56本[ 3] [ 6] 。
分類
同じ属のムフロン 、(ムフロンの亜種ともされる)ウリアル、そして家畜ヒツジ と交雑可能で、その雑種もまた子孫を残せる。ヒツジの先祖ではないとされるが、交雑によりヒツジにアルガリの遺伝子が入っている可能性はある[ 9] 。
9亜種に分ける説がある[ 3] 。亜種の分布の境目は不明とされる[ 3] 。
亜種の分類・英名は(Fedosenko & Blank, 2005)に、和名は(今泉, 1988)に従う[ 3] [ 6]
Ovis ammon ammon (Linnaeus, 1758) アルタイアルガリ Altai argali, Siberian argali
アルタイ山脈 [ 6]
体長オス172 - 180センチメートル、メス167 - 174センチメートル[ 3] 。頸部の体毛は伸長しない[ 6] 。
角長147 - 155センチメートル[ 6] 。角は45 - 50センチメートルと太く、ほぼ1回転し先端は外側へ向かう[ 6] 。
Ovis ammon collium Severtzov, 1873 Kazakhstan argali
ジュンガル盆地 西部からバルハシ湖 北部にかけて
体長オス165 - 199センチメートル、メス136 - 160センチメートル[ 3]
ジュンガルアルガリO. a. sairensis はシノニムとされる[ 3] 。
Ovis ammon darwini Przewalski, 1883 モンゴルアルガリ Gobi argali, Mongolian argali
モンゴル南部・中華人民共和国(内モンゴル自治区 )のゴビ砂漠 [ 6]
Ovis ammon hodgsoni Blyth, 1840 ヒマラヤアルガリ Tibetan argali
ヒマラヤ山脈周辺のネパール・チベット ・ラダック [ 6]
Ovis ammon jubata Peters, 1876 Northern Chinese argali, Shasi argali
Ovis ammon karelini Severtzov, 1873 アラタウアルガリ Tien Shan argali
バルハシ湖南東部、グルジャ市北西部のアラタウ山脈、タリム盆地 西部のカシガル、天山山脈 、グルジャ市周辺[ 6]
体長オス158 - 190センチメートル[ 3] 。
カシガルアルガリO. a. humei 、テンシャンアルガリO. a. littledalei はシノニムとされる[ 3] 。
Ovis ammon nigrimontana Severtzov, 1873 カラタウアルガリ Kara Tau argali
バルハシ湖南西部のカラタウ[ 6]
角は角長89 - 95センチメートルと小型[ 6] 。
Ovis ammon poli Blyth, 1840 パミールアルガリ Marco Polo sheep, Pamir argali
アライスキー山脈・カラコルム山脈 ・パミール高原 [ 6]
体長オス160 - 180センチメートル、メス143.5センチメートル[ 3] 。
角は角長172 - 182センチメートルと大型で、ほぼ2回転する[ 6] 。
亜種小名poli はMarco Polo への献名 で、13世紀にこの亜種を発見したという逸話に由来する[ 6]
Ovis ammon severtzovi Nasonov, 1914 Severtzov’s sheep
模式産地はロシア帝国トルキスタンキジルカム砂漠 のTiu-Tau山脈(ウズベキスタン)[ 3] 。
生態
標高5,000メートル以下にある高山の岩場、砂漠 、渓谷、疎林などに生息する[ 7] 。オスのみで3 - 5頭からなる群れと、メスと幼獣からなる群れを形成し生活する[ 6] [ 7] 。繁殖期には優位のオスと複数頭のメスからなる10 - 15頭の群れを形成する[ 6] [ 7] 。薄明薄暮性 だが[ 6] 、気温の高い季節は夜間に採食を行う[ 7] 。視覚は発達し1キロメートル、ときには2 - 3キロメートル先の人間や食肉類を発見できる[ 3] 。オスは時速50キロメートル、メスや幼獣は時速60キロメートルで走行することができる[ 3] 。
食性は植物食で、草本 、木の葉、コケ植物 、地衣類 などを食べる[ 6] [ 7] 。夏季は草、冬季は枯れ草やコケ、地衣類を食べる[ 6] 。捕食者は主にタイリクオオカミ が挙げられ、ユキヒョウ に狩られることもある[ 3] 。まれな例としてはクズリ に殺された・ヒグマ に襲われた例もある[ 3] 。幼獣はアカギツネ ・オオヤマネコ ・イヌワシ ・クロハゲワシ ・ヒゲワシ などに襲われることもある[ 3] 。
繁殖様式は胎生。9月から翌1月中旬にかけて交尾を行う[ 7] 。妊娠期間は160 - 165日[ 3] 。1回に2頭の幼獣を産む[ 5] [ 6] [ 7] 。生後2年半から3年で性成熟する[ 3] 。
人間との関係
野火による生息地の破壊、角目的の乱獲、放牧による家畜との競合などにより生息数は激減している[ 7] 。1997年 における生息数は80,000頭以下と推定されている[ 7] 。亜種ヒマラヤアルガリO. a. hodgsoni と亜種カラタウアルガリO. a. nigrimontana はワシントン条約附属書Iに掲載されている[ 1] 。
参考文献
^ a b Appendices I, II and III <http://www.cites.org/ >(accessed December 17, 2015)
^ Harris, R.B. & Reading, R. 2008. Ovis ammon . The IUCN Red List of Threatened Species 2008: e.T15733A5074694. doi :10.2305/IUCN.UK.2008.RLTS.T15733A5074694.en , Downloaded on 17 December 2015.
^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v Alexander K. Fedosenko and David A. Blank, "Ovis ammon ," Mammalian Species , No. 773, American Society of Mammalogists, 2005, pp. 1-15.
^ Peter Grubb, "Ovis ammon ,". Mammal Species of the World , (3rd ed.), Volume 1, Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, p. 689
^ a b c d Valerius Geist 「アルガリ」、三浦慎悟訳『動物大百科4 大型草食獣』今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編、平凡社 、1986年、149頁。
^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 今泉吉典 「アルガリ」、『世界の動物 分類と飼育7 (偶蹄目III)』今泉吉典監修、東京動物園協会、1988年、115-116頁。
^ a b c d e f g h i j k l m n o 小原秀雄 「アルガリ」、『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ1 ユーラシア、北アメリカ』・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社 、2000年、161頁。
^ a b 三省堂百科辞書編輯部編 「アルガリ」『新修百科辞典』 三省堂、1934年、100頁。
^ a b 角田健司「ヒツジ」、正田陽一『品種改良の世界史』(家畜編)、悠書館、2010年、260 - 262頁。
関連項目
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