アトバコン
アトバコン(AtovaquoneまたはAtavaquone)はナフトキノン誘導体に属する化合物であり、ニューモシスチス肺炎の治療や予防に使われるほか、プログアニルとの合剤はマラリアの治療にも用いられる。商品名サムチレール。ユビキノンの類縁物質であり、ミトコンドリア内膜でチトクロームbへのユビキノンの結合を阻害し、抗真菌効果を発揮する。 効能・効果日本で承認されている効能・効果は、ニューモシスチス・イロベチー による、ニューモシスチス肺炎(PCP)の治療および発症抑制である。他の真菌や細菌、マイコバクテリア、ウイルス疾患の治療には有効ではない[1]。
またプログアニルとの合剤がマラリア予防・治療薬として承認されているが、ヒプノゾイト(マラリア原虫の休眠体)には効果がない[2]。 海外では、下記の感染症に対して承認されている。
ST合剤がPCP治療の第一選択薬である。スルホンアミド系薬剤へのアレルギー等でST合剤が使用できない場合にアトバコンが用いられる。加えて、アトバコンは骨髄抑制を起こさないので、造血幹細胞移植後の患者等、骨髄機能が重要な問題となっている患者にも使用される。 副作用治験で見られた主な副作用は、悪心(16%)、発疹(18%)、嘔吐(9%)、下痢(6%)、頭痛(6%)、発熱(4%)である[1]。 重大な副作用として、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑、重度の肝機能障害、無顆粒球症、白血球減少 が添付文書に記載されている。 プログアニルとの合剤での重大な副作用は上記の他に、肝炎、胆汁鬱滞、アナフィラキシー、汎血球減少症 である[2]。 作用機序ミトコンドリア内膜に存在する呼吸鎖複合体I、II、III、IVの内、IIIを構成するチトクロームbとユビキノン(CoQ10)との結合を阻害し、P. jirovecii の呼吸を抑制する。P. jirovecii の近縁種であるP. carinii では呼吸阻害のIC50は0.043µMであり、ヒト肝臓のミトコンドリアに対するIC50は約150倍〜600倍であるので選択性があると言える[9]:26。これはチトクロームbの275番アミノ酸の違いによると考えられ、P. jirovecii の近縁種とされるイースト菌を用いた実験では、275番アミノ酸の変異で耐性が出現した[10]。 出典
外部リンク
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