アゲハモドキガ科
アゲハモドキガ科(アゲハモドキガか、Epicopeiidae)は鱗翅目(チョウ目)の科のひとつ。本科が所属する上科には議論と変遷があるが、本稿では Minet & Scoble (1998) を採用した 岸田(編)『日本産蛾類標準図鑑』 を踏襲し、基本的にカギバガ上科に属するものとする。 特徴頭部に単眼を欠くこと、前翅に後胸との連結装置[6](spinarea)を欠くこと、前翅R脈によって小室[7](areole)が形成されないこと、前翅R5脈がR2、3、4脈から離れてM1脈と接近することなどが本科の分類形質と見なされている[3][8]。 多様性本科は鱗翅目の中では小さな科のひとつで、既知の種は30種未満とされる[9]。分布は東洋区と旧北区アジアに限定される[3]。ほとんどが昼行性だが、夜間人工の灯りにも飛来する種も知られる[3][10]。 日本からはアゲハモドキ Epicopeia hainesii、オナガアゲハモドキ Epicopeia mencia、フジキオビ Schistomitra funeralis 、キンモンガ Psychostrophia melanargia の4種が知られているが[11][12]、このうちオナガアゲハモドキは対馬から過去に幼虫が一度得られた記録があるのみである[10]。 小さなグループだが成虫形態は多様で、他のさまざまな鱗翅類をモデルとしたベイツ型擬態やミューラー型擬態環への関与の可能性がしばしば指摘される[5][13][14][15]。なかでもアゲハチョウ科と形態的によく似る Epicopeia 属は有名だが、擬態に関する化学生態学的な知見は不足している[5][16]。 幼虫期の解明はあまり進んでいない[3]。幼虫期が既知の日本および台湾産の4種はいずれも腹脚を計5対有し、体表が白い蝋状物質で覆われることが知られている[17][18]。白い蝋状物質を分泌する昆虫はボタンヅルワタムシ Colophina clematis(半翅目アブラムシ科)など複数の種、分類群で見られ、それらの昆虫が形成する擬態環にアゲハモドキの幼虫も関与している可能性を示す報告もなされている[19]。 分類2011年時点で9属20種が知られていたが[2]、2017年にはベトナムから新属が[5]、2019年から2020年には中国から数種が新種記載され[8][9][20][21]、現在は10属30種ちかくが知られる[9]。 本科はながらく Epicopeia 属単型の科として扱われ、その他の属はツバメガ科あるいはフタオガ科 Epiplemidae[注釈 1]に分類されていた[3][5][15]。たとえば井上寛はフタオガ科の下位にフジキオビ亜科 Schistomitrinae を設置してフジキオビとキンモンガを含めたが[4]、この亜科は現在では本科のシノニムとなっている[3]。現在の本科の分類は Joël Minet による整理を経たものである[3][5][15]。 また、上述したように本科の属する上科にも議論と変遷がある[5][11]。主として形態的な知見にもとづく分類の場合はカギバガ上科に含めることが多いが[3][15][11]、近年の分子系統分析にもとづく分類ではシャクガ上科に含めることも多くなっている[2][5][8][9][20][22]。
ギャラリー
脚注・出典脚注
出典
参考文献和文
英文
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