アケボノゾウの復元模型(のんほいパーク 蔵)
アケボノゾウ (Stegodon aurorae )は、250万年前 - 70万年前(後期鮮新世 - 中期更新世 )に生息していた古代ゾウ 。関東から九州北部まで、日本の各地で化石が発見されている。
特徴
体高2メートル、全長4メートル前後と比較的小型のゾウで、現生のアジアゾウやアフリカゾウと比べて胴が長く足が短い。1.8メートルほどの長い牙を狭い間隔で持ち、牙の間に鼻が入ることはなかったと予想される。足跡化石は骨格に対応した小さなものだが、牙の重さのために身体の前半分に体重を掛けて歩いていた。
日本でのタイプ標本 は石川県 印辰山層から出土したaurorae Matsumoto。幅があり平らな頭頂部、長くまっすぐな牙を特徴とし、細長い大臼歯 は他のステゴドン にない強いねじれを持つ傾向がある。
大陸のコウガゾウ とほぼ同時期のミエゾウ が日本が大陸から分かれたのち、環境に適応して小型化(矮小化)したものと推定されている。現在のところ大陸には化石記録が無いことから、日本固有種であると考えられる。
本種と共に出土する植物 の種や花粉 、樹木の化石から、当時の生息環境は寒冷で湿潤な気候だったと明らかになりつつある。
種の再分類
原記載ではアジアゾウ属 Elephas とされ、のちにパラステゴドン属Parastegodon のタイプ種とされた。一方で形態的特徴はステゴドン属の範囲に含まれるものとされ、この属はステゴドン属のシノニムとみなされている。
日本の古代ゾウのうち、カントウゾウ(S. kwantoensis )、スギヤマゾウ(S. sugiyamai )、アカシゾウ(S. akashiensis )、インフリークエンスゾウ(S. infrequens )はアケボノゾウと同種であることが大阪市立自然史博物館 学芸課長の樽野博幸の研究によって判明し、学名の先取権に基づいて1991年に本種にまとめられた。また、この調査で従来ショウドゾウ(S. shodoensis )とされていた標本の一部がアケボノゾウだったことが判明した。
発掘と分類
アケボノゾウとして
アカシゾウとして
1929年 - 明石市林崎近辺で蝦蟇石 と呼ばれていたものがゾウの化石と判明し、地元で収集熱が盛んになる。最大の収集者は明石女子師範学校 の倉橋一三教諭。
1936年 - 兵庫県 明石市 林崎粘土層から発見された大臼歯を研究した高井冬二博士がアカシゾウ (Parastegodon akashiensis )と命名。高井はこの種をステゴドン科 (Stegodontidae )とゾウ科 (Elephantidae )の過渡期的な形態と予想した。
1960年 - 神戸市の中学生、紀川晴彦が明石市西八木海岸の大阪層群で象牙の化石を発見。その後6年をかけて肋骨、脊椎、腰椎など97点を一人で発掘。発掘地点は明石原人 発見の地から約200メートル東の崖。
1966年 - 大阪市立自然科学博物館 (現・大阪市立自然史博物館)を中心にしたチームで紀川少年の発掘地点の再調査を実施。現場では護岸工事が始まっており、建設会社も発掘に協力。発掘された化石骨は紀川標本と命名され、全身骨格標本として復元したうえで大阪市立自然史博物館に展示。
1987年 - 兵庫県神戸市 西区 伊川谷町 の造成地で象牙や頭骨、肋骨などを発見。発掘当時はアカシゾウと同定。1991年より神戸市埋蔵文化財センター にて展示。
インフリークエンスゾウとして
1926年 - 明石から滝川中学校 に通っていた柴田寿栄治が自宅の縁の下にあった石を学校に寄贈し、古代ゾウの下顎骨と臼歯と判明。この化石は家人が海岸から拾い庭池の飾りとしていた。
1933年 - 東京帝国大学 の高井冬二が卒業論文において標本をインフリークエンスゾウ (Parastegodon infreguens )として発表[要検証 – ノート ] 。
1933年 - 高井と同時に鹿間時夫 が東北帝国大学 の卒業論文において標本をタキガワゾウ として発表。高井と鹿間の恩師はいずれも矢部長克 博士で東京帝大と東北帝大を兼務していた。
カントウゾウとして
スギヤマゾウとして
1926年 - 香川県 三豊郡 山本町 にて水田の開墾中に牙の化石が出土。鑑定した杉山鶴吉氏にちなみ「スギヤマ象牙」と呼称。
1933年 から1934年 - 香川県三豊郡財田町 にて道路工事を行った際、三豊層からゾウの臼歯の化石が出土。他にも肋骨のようなものが出たという。
1935年 - 徳永重康博士が臼歯の化石をスギヤマゾウ (Parastegodon sugiyamai )と命名し記載。
1970年 - スギヤマ象牙を山本町指定文化財に指定。
脚注
参考文献
アカシゾウ
インフリークエンスゾウ(タキガワゾウ)
Tokio Shikama (1937). “Parastegodon infrequens sp. nov. from the Akasi District”. Japanese Journal of Geology and Geography (National Research Council of Japan) 14 (2-3): 127-131.
佐藤茂樹「タキガワゾウの由来 」『兵庫生物』第4巻第1号、兵庫県生物学会、1960年1月、10-11頁。
カントウゾウ
スギヤマゾウ
Shigeyasu Tokunaga (1935). “A New Fossil Elephant Found in Shikoku, Japan”. Proceedings of the Imperial Academy (Japan Academy) 11 (10): 432-434. doi :10.2183/pjab1912.11.432 .
“山本町の歴史文化財 ”. 三豊市. 2024年7月15日時点のオリジナル よりアーカイブ。2024年7月15日 閲覧。
森合重仁「6. 河内小学校付近の三豊層群」『香川県地学のガイド : 香川県の地質とそのおいたち』コロナ社〈地学のガイドシリーズ10〉、1979年、76-82頁。NDLJP :9670395/43 。
関連項目
外部リンク
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