アカマンボウ目
分類
下位分類
本文参照
アカマンボウ目 (学名 :Lampriformes あるいは Lampridiformes)は、硬骨魚類 の分類群の一つ。7科12属で構成され、深海魚 を中心に21種が含まれる[ 1] 。いわゆるマンボウ はフグ目 に属し、本目の魚類 ではない。
概要
アカマンボウ目の魚類は全て海水魚 で、深海 に生息する種類が多い。世界中の温帯 から熱帯 域の外洋に広く分布する。多くは海底 から離れて暮らす中層遊泳性で、クサアジ科 など一部のみが大陸斜面 にも分布する底生魚 である。
代表魚種であるアカマンボウ はマグロ の延縄 に、またテンガイハタ は沿岸定置網 によって時折漁獲され[ 2] 、食用とされることがあるが、水産上の重要性は低い。その他の種類の多くは極めて稀にしか捕獲されず[ 2] [ 3] 、利用されることはほとんどない。
形態
アカマンボウ目魚類の形態は多様であり、マンボウ のように円盤型をしたアカマンボウ 、細長い体をもつリュウグウノツカイ など、統一された体型を取らない。本目の仲間に共通する形態学的特徴としては、鰭 に真の棘条をもたないこと、前上顎骨・主上顎骨をスライドさせるようにして、口を前方に大きく突き出せることなどがある。クサアジ科・アカマンボウ科の魚類は発達した骨格 と対称な尾鰭をもつが、他の5科では骨格は弱々しく、尾鰭は非対称である[ 1] 。腹鰭の鰭条数は0-17本で、眼窩蝶形骨は一部の種類に存在する[ 1] 。
分類
アカマンボウ目は7科12属21種で構成される[ 1] 。分類体系は流動的であったが[ 2] 、1990年代以降の形態学 および分子生物学 的解析は本目の単系統性 を支持している[ 4] [ 5] 。
以下に示す現生の7科に加え、化石 種のみが知られる絶滅 群として、クサアジ科に近縁の Palaeocentrotidae 科 (始新世 )と、アカマンボウ類に似た体形をもつ Turkmenidae 科 が報告されている[ 1] 。後者は暁新世 から漸新世 にかけて2属(Turkmene 、Danatinia )が認められている[ 1] 。他に所属未定の絶滅属として Bajaichthys 属が知られる[ 1] 。
クサアジ科
ヒメクサアジ Metavelifer mutiradiatus (クサアジ科)。中層性の仲間が多いアカマンボウ目の中で、本科は数少ない底生魚のグループである
クサアジ科 Veliferidae はクサアジ ・ヒメクサアジ のみ、2属2種を含む。インド洋 ・西部太平洋 に分布し、大陸棚 から沿岸付近にかけての底部で生活する。体長40cmほどになる。
体高が高く、体は左右に平べったく側扁する。背鰭 と臀鰭は非常に大きく、腹鰭の鰭条は7-9本。2種は背鰭の形態により区別される。歯 をもたない。始新世の絶滅属として Veronavelifer 属が知られ、イタリア 北部から化石が産出している。
クサアジ属 Velifer
ヒメクサアジ属 Metavelifer
アカマンボウ科
アカマンボウ科 Lampridae は1属6種からなる。アカマンボウ は本目の代表魚種であり、三大洋の表層から水深500m程度にまで分布している。本科(および本目)の表記は Lampridi dae と Lampridae との2種類で揺れているが、本稿ではNelson(2006)の見解に基づき後者の表記を採用する[ 1] 。最大で体長1.8mにまで成長する大型の魚類で、イカ などの軟体動物 や浮遊性の甲殻類 を捕食する。
体は円盤状で強く側扁する。側線 は大きく湾曲し、鱗 は微小な円鱗。背鰭と臀鰭が長く発達し、腹鰭の鰭条は12-17本。
ステューレポルス科
Stylephorus chordatus (ステューレポルス科)。筒状の大きな眼球は光の少ない環境への適応 とみられ、上方からやってくるわずかな光を捉えることに特化している
テングノタチ Eumecichthys fiski (アカナマダ科)。細長い体と突き出した前頭部が特徴
フリソデウオ Desmodema polystictum (フリソデウオ科)。本科にはアカマンボウ目魚類の半数近くが所属し、いずれもごくまれにしか捕獲されることがない
テンガイハタ Trachipterus trachypterus (フリソデウオ科)。未成魚は浅海で成長し、沿岸で網にかかることもある
ステューレポルス科 Stylephoridae は Stylephorus chordatus のみ1属1種からなり、全世界の深海に分布する。眼は望遠鏡 のような筒型(管状眼)をしており、常に立ち泳ぎの姿勢で上方に視点を向けている。
口は小さく、突き出すことができる。体型はリボン状で細長く、背鰭の基底は非常に長い。臀鰭は短く、腹鰭の鰭条は1本のみ。尾鰭は上下非対称で、上葉の鰭条は5本、下葉は著しく長く伸びた2本の鰭条からなる。浮き袋 をもたない。
アカナマダ科
アカナマダ科 Lophotidae にはアカナマダ ・テングノタチ など2属3種が所属する。体は小さく脱落性の円鱗に覆われる。背鰭の基底は非常に長く、吻 の後端から尾鰭の付け根まで達する。腹鰭がある場合、鰭条は2-6本。総排泄腔 に開口する墨袋 をもつ。漸新世の絶滅属(Protolophotus )がイラン から出土している。
本科以降の4科は単系統群 を構成すると考えられている。細長くリボン状の体型をし、臀鰭は短いか欠いており、前頭骨 が分割されるなど形態上の共通点が多い。
アカナマダ属 Lophotus
テングノタチ属 Eumecichthys
ラディイケパルス科
ラディイケパルス科 Radiicephalidae は Radiicephalus elongatus のみ1属1種からなる。大西洋中部から東部、およびニューギニア 沖のみから知られる極めて稀な魚で、数点の標本しか知られていない。アカナマダ科と姉妹群 の関係にあると考えられており、墨袋をもつ。
体は細長く側扁する。鱗は側線部分のみ存在し、よく発達した浮き袋をもつ。尾鰭上葉の鰭条は4本で、下葉の鰭条は7本で細長い。
フリソデウオ科
フリソデウオ科 Trachipteridae はサケガシラ ・テンガイハタ ・フリソデウオ など3属10種で構成され、北極海 を含む全世界の海洋に分布する。リュウグウノツカイ科と関係が近い。
体は側扁し、眼が大きい。鱗をもたないもの、脱落性の円鱗あるいは櫛鱗に覆われるものまでさまざま。臀鰭を欠き、背鰭の基底は非常に長い。尾鰭は上葉のみで構成され、体に対し上向きの角度を成す。肋骨 を欠き、浮き袋は退化的。
サケガシラ属 Trachipterus
フリソデウオ属 Desmodema
ユキフリソデウオ属 Zu
リュウグウノツカイ科
リュウグウノツカイ科 Regalecidae は少なくとも2属2種を含み、全世界の外洋に分布する。リュウグウノツカイ は硬骨魚類の中では最大の長さに成長する種類で[ 6] 、日本の海岸にもまれに漂着することがある。
眼は小さく、体は細長い。鱗・臀鰭・歯・浮き袋をもたない。腹鰭は著しく伸長した1本の鰭条のみからなる。背鰭の基底は非常に長く、吻の後端から起始し、先頭の2-3本の鰭条は鮮やかな赤色を呈する。
出典・脚注
^ a b c d e f g h 『Fishes of the World Fourth Edition』 pp.226-230
^ a b c 『日本の海水魚』 p.120
^ 『海の動物百科3 魚類II』 p.127
^ Olney JE, Johnson GD, Baldwin CC (1993). “Phylogeny of lampridiform fishes”. Bull Mar Sci 52 : 137-169.
^ Wiley EO, Johnson GD, Dimmick WW (1998). “The phylogenetic relationships of lampridiform fishes (Teleostei: Acanthomorpha), based on a total evidence analysis of morphological and molecular data”. Mol Phylogenet Evol 10 : 417-425.
^ 『新版 魚の分類の図鑑』 pp.76-77
参考文献
ウィキメディア・コモンズには、
アカマンボウ目 に関連するメディアがあります。
外部リンク