ひまし油ひまし油(ひましあぶら、ひましゆ、蓖麻子油、英語: Castor oil)は、トウダイグサ科のトウゴマの種子から採取する植物油の一種。 脂肪酸とグリセリンがエステル結合したもので、脂肪酸の約90%がリシノール酸(リシノレイン酸、Ricinoleic acid)である[1]。リシノール酸(リシノレイン酸)は1分子に水酸基と二重結合を持ち、化学的な反応性に富むことから様々な工業用途で用いられる[1]。一方でリシノール酸(リシノレイン酸)は人体内では下痢を起こすため食用に適さず、医療目的で下剤などに使用される[2]。 用途工業用途工業用途ではそのままで塗料の原料、ゴム用助剤、潤滑油、ブレーキ液などとして用いられる[2][3]。また、化学的な反応性に富み[1]、熱分解、アルカリ性分解、酸化重合(吹込ひまし油)、水素添加(ひまし硬化油など)、ウレタン反応、ケン化分解、脱水反応、硫酸化(ロート油)、エステル化、ハロゲン化、アルコシキ化などによる生成物も幅広く用いられる[2]。 一般的には圧搾油であるが、粘度が680mP-sと高いため搾油は容易でない[2]。植物油としては極めて高粘度ではあるが粘度指数はさほど高くはなく、一般的な植物油[注釈 1]より大きく劣り、現代の潤滑用の一般鉱油よりも若干劣るレベルである。 一般的な植物油よりも吸湿性に富み、0.3%程度まで均質透明である[1]。 医療用途医療用途としては便秘症の治療目的の下剤などとして用いられる[3]。日本薬局方にも収載されている[6]。医師によってはリチネと略記する[7]。 ひまし油が下剤として示す作用機序は、小腸で分解されて生成されるリシノール酸による蠕動運動亢進作用とグリセリンによる粘滑作用によるとされる[8]。 四体液説がベースにあり、傷みやすい肉を常食していたヨーロッパ・アメリカの伝統医療で下剤としてよく使われた。ヒマシ油の服用は、千年近く正式な医療行為の一環だった。とくにアメリカ北部では現在も万能薬のように扱われている[9]。 また、ケニアのキクユ族は「maguta ma mbariki」[10]あるいは単に「mbarĩki」[11]と呼び、皮膚の保護や軽い傷の手当をする際などに用いる[12]。 化粧品医薬品のほか化粧品にも用いられる[2]。『医心方』巻の四[注釈 2]には「髪に艶を出す方法」として、大麻子(トウゴマ)から取った汁、つまりひまし油を髪油として使うことが記載されている。 歴史古代のギリシャ時代から用いられ、中世ヨーロッパでは「キリストの御手(パーマ クリスティ)」と呼ばれており、その使用は主に排毒や下剤として使われていた[15]。
文化
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関連文献脚注注釈出典
参考文献
関連項目外部リンク
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