H&K G3
H&K G3は、ドイツの銃器メーカー、H&K社によって開発され、1964年-1996年までドイツ連邦軍に制式採用されていた自動小銃である。 G3とはドイツ語で「Gewehr 3」(ゲヴェーア・ドライ)、"3号小銃"の意。 概要アサルトライフルに分類される自動火器で、標準モデルの使用弾は7.62x51mm NATO弾、装弾数は20発。性能や実績への評価は高く、傑作ライフルと評される[1]ほか、世代の近いAK-47・M16・FALと合わせて、四大アサルトライフルと呼ばれることもある。主要製品である7.62x51mm NATO弾仕様は、全自動射撃時のコントロールが難しいため、FALと同じくバトルライフルとしても分類され得る。 なお、ドイツの他、ポルトガル、ギリシャ、デンマーク、ノルウェー、トルコや中東・アフリカ諸国など40ヶ国以上で採用されている。また、ミャンマーやイランではライセンス生産が行なわれ、とくにミャンマーでは「BAシリーズ」として国産化された。 H&K MP5は本銃を元に拳銃弾用に再設計した物となっている。 来歴本銃の起源は、第二次世界大戦末期にモーゼル社が設計した「機材06」(Gerät 06)まで遡ることができる。これは中間弾薬(7.92x33mm弾)を使用し、MG42と同じローラーロック式ショートリコイル機構を採用した突撃銃であった。これを元にガスピストンを省いて反動利用式とした改良型である機材06(H)は、StG45(M)としてドイツ国防軍に採用されたものの、量産前に終戦を迎えた[2]。 連合軍軍政期、モーゼル社はフランスに接収され、工場はフランス軍向けの銃器製作に使われた後に爆破、機械類はフランスに持ち去られた。同社でStG45(M)の開発に携わっていたルートヴィヒ・フォルグリムラーとテオドール・レフラーは、まずフランス東部のミュルーズ兵器研究所(CEAM)に移り、StG45(M)を元にした小銃を開発したものの、第一次インドシナ戦争の勃発とともにフランス軍が新型小銃の採用計画自体を撤回したことから、1950年にはスペインのCETME(セトメ)に転職して開発を継続した[2]。 まずは特殊な軽量構造のCETME弾薬を使用する試案が設計され、1952年、このセトメ・モデル2がベースとして採択されて開発が継続されることになった。独自の短小弾というコンセプトは結局受け入れられず、後に西ドイツのH&K社との協力のもと、7.62x51mm NATO弾の減装弾を使用するセトメ・モデルA、続いて常装薬を使用するモデルBが開発された。1958年、スペインは、このNATO弾を使用するモデル58セトメ小銃を制式採用した[2]。 一方、西ドイツも早くからセトメ小銃に着目していたものの、NATO弾に対応した設計変更に時間がかかっていたため、まず1956年、ベルギーのFN FALがG1として採用された[2]。しかしベルギーは西ドイツ国内でのライセンス生産を拒否したことから、セトメ小銃の設計変更と国産化が急がれることになった[3]。次にドイツ連邦軍は、スイスのSIG SG510を仮名称G2としてセトメ モデルAなどと並行して試験を行った。50丁の7.62x51mm仕様モデルを輸入し、50丁のうち、40丁がスイス軍仕様と同じゴム引き銃床およびハンドガードを備え、残る10丁は木製だった。しかし、当時既にNATO内でも軽量な銃器への支持が集まっており、突撃銃としては重量のあるSG510の採用は見送られることとなった[4]。セトメ・モデルBを元にH&K社がMD3を開発し、1959年1月、ドイツ連邦軍はこれをG3として制式化した。G3はH&K社とラインメタル社で製造された[2]。 特徴→「H&K HK21 § 機構」、および「H&K MP5 § 操作性」も参照
作動メカニズムには、ローラーロッキングによるディレードブローバック方式を採用している。 操作上の難点として、弾倉交換の手間の多さがある。G41、MP5/10、MP5/40を除いてホールドオープン機構は持たない。そのため、これら以外のモデルではまず左手でボルトハンドルを引いてレール後端上部の溝に引っ掛けて遊底を後退位置で保持させ、弾倉を交換し、ボルトハンドルを溝から叩き落として遊底を前進させるという手順を踏まなくてはならない。この手間を省くために、遊底を後退させないままで弾倉交換すること(薬室内に弾を残している場合にはタクティカルリロードと呼ばれる)は、前進している遊底やその付近に負担が掛かり損傷する恐れがあるため勧められていない。そのため、G3系列を撃つときには、弾切れ時に素早くボルトハンドルを引けるよう、ボルトハンドルに左手親指を乗せて構えるという射撃姿勢が取られる[5]。ボルトハンドルを叩き落とす部分に関しては、通称「HKスラップ」と呼ばれている。ボルトハンドルを持って戻すことも可能なのだが、ボルトが戻りきらない可能性があるために、ボルト前進時にはチャージングハンドルに手を触れないことというのが同様の機構を持つMP5のマニュアルに記述されている。 またボルトハンドルを起こして引き始めるのに必要な力が大きく、操作性に難があるとされることがある。ボルトハンドルを引く際にはボルトキャリアが直接引かれるためにローラーの遅延機構は射撃時のようには働かないものの、他にロッキングレバーと呼ばれる、強いバネ作用をもった部品がボルトヘッドとボルトキャリアを繋いでいる。この繋がりを引き離すには大きな力がいるが、その操作が小さなボルトハンドルを引き起こすことであるために、困難なものとなっている。 アッパーレシーバーに特殊なブッシングを溶接し、それによって銃身を固定しているという構造上、銃身交換には専用の設備を要する。機関銃タイプであるHK21とHK23はMG42に近い銃身交換機構を持つ。遅延式ブローバックの作動中に薬莢が薬室の内面に張り付いて固着することを防ぐために、薬室には後半の約三分の一を除いて、銃身の軸線に平行な溝が多数刻まれている。発射の際に、高温・高圧の火薬燃焼ガスは薬莢を内側から加圧して膨張させようとするが、薬莢先端から薬室の溝に導かれた燃焼ガスの一部が薬莢の外周にも作用して、薬莢の内外で圧力が拮抗する。結果として薬莢の膨張(薬室との密着)は溝が無い薬室後半部分だけで起きることになる。しかし射撃を繰り返すと大量のカーボンが薬室の溝部に付着してしまうため、念入りに清掃する必要がある。このカーボンは弾倉にも付着する。排出された空薬莢も、前半部分に多数の溝が刻まれたようになる。 G3は銃剣を銃身の下側ではなく上側に装着する方式をとっており、自動小銃としては珍しい方式である。銃剣は鍔と一体となっている装着リングを銃身先端の消炎器(フラッシュハイダー)部に通し、柄後端の突起を照星の下、コッキングチューブ先端部に差し込むことによって固定される。このようにコッキングチューブ先端とボルトハンドルの間にはある程度の空間があり、後にはこの部分に挿入式に装着できるレーザーポインターもオプションとして開発されている。
後継小銃での作動方式転換ドイツ連邦軍では、G3の後継として同じメーカーのG36が採用されているが、こちらの作動機構はAK-47などと同じ標準的なガス圧作動式となっており、ブローバックではなくなった。これは、小銃弾の強力なガス圧を閉鎖機構なしで抑え込むためにローラー遅延式という複雑かつ繊細な構造を用いた結果、ガスピストン式に比べて重量が嵩み、また高価で高品質な材料を必要とするようになったことが挙げられる。 各型及び派生型G3で採用したローラーロッキング機構は、用途、口径によって多くのバリエーションを持つ。これらは、3つのウェポンシステムグループに分けられる。
また、G3の機関部の設計をほぼそのまま流用して9x19mmパラベラム仕様として開発された短機関銃として「MP5」シリーズがある。G3譲りの高い命中精度により、短機関銃というカテゴリーの新たな可能性を切り開き、多くの軍隊や法執行機関で使用されている。 7.62×51mm NATO
再設計モデル
HKシリーズ
社外カスタムガン
7.62×39mm
5.56×45mm1960年代、G3のスケールダウンモデルとして5.56x45mm NATO弾を使用するH&K HK33が設計された。G3と同様、HK33にも様々な派生型が存在する。 →詳細は「H&K HK33」を参照
MP5シリーズMP5は、G3をベースとして開発されたサブマシンガンである。 →詳細は「H&K MP5」を参照
ルサポルトガルのINDEP社が開発したINDEP ルサは、MP5を切り詰めたようなサブマシンガンである。 運用国
遊戯銃東京マルイからG3A3(電動、エアコッキング共に製造終了)、G3A4(現在は製造終了)、HK51(第37回静岡ホビーショー限定商品。現在は製造終了)、G3SG/1、PSG-1、MC51のほか、架空の極短縮モデルである「G3 SAS」が発売されており、KSCからはHK33K、HK33A2、HK33A3、HK53、HK53A2 SFPDが発売されている。特記事項があるもの以外はすべて電動ガンであり、KSC製品はエアコッキングガンとしても使用可能。また、2018年にLCTエアソフトよりG3A3が販売された。 MP5シリーズの遊戯銃については、エアソフトガン#ブローバックガスガンを参照。 登場作品
H&K G3の登場作品を表示するには右の [表示] をクリックしてください。 映画
ドラマ
漫画・アニメ
ゲーム
その他脚注
参考文献
関連項目外部リンク |