Cambria (フォント)

Cambria
カンブリア
様式 セリフ
分類 トランジショナル[1]
デザイナー

ジェル・ボスマ(Jelle Bosma), Steve Matteson, Robin Nicholas

Cambria Math: ジェル・ボスマ, Ross Mills, John Hudson, Geraldine Wade, Mike Duggan, Greg Hitchcock, Andrei Burago, Vivek Garg
制作会社 マイクロソフト、Tiro Typeworks (Cambria Math)
発表年月日 2007年
ライセンス プロプライエタリソフトウェア

Cambria(カンブリア)とは、マイクロソフトによりWindowsOfficeに配布されている、アルファベットセリフ書体である。

2004年にオランダの書体デザイナー、ジェル・ボスマ (Jelle Bosma) によって設計され、Steve MattesonとRobin Nicholasが入力を手伝った。これは本文テキストに適したセリフ書体として考えられたもので、小さく印刷されたり低解像度の画面に表示されても非常に読みやすく、空白と文字の比率が均等である[2]

これはClearTypeフォントの一部で、Windows Vistaでリリースされた複数のデザイナーによる一連の書体である。マイクロソフトのClearTypeテキストレンダリングシステムとうまく機能するよう設計されており、液晶モニターでテキストをより読みやすくするよう設計されたテキストレンダリングエンジンを反映している。同グループは全て大文字Cで始まっていて、他のフォントには、CalibriCandaraConsolasConstantiaCorbelがある。

デザイン

対角線と垂直のヘアライン[注釈 1]とセリフは比較的強いが、水平のセリフは小さくて、自らを際立させるよりもむしろ、1画の終わりを強調するものとなっている。この原則は、字体にて小文字がひしゃげるイタリック体で最も顕著である。そのような種類のフォントでは、デザインの特徴が平均よりも幾分か際立っている[4]。この件について、ボスマはMonotypeウェブサイトのプロフィールで次のようにコメントしている「その書体の特徴の1つは、重い垂直セリフとヘアラインの対比にあり、これがフォントを頑丈に保ち、小さなサイズでのデザイン保持を確保する。それから比較的薄い水平線は、より大きなサイズで使用するときに書体が鮮明にくっきり残るよう工夫したものである」。それをボスマは「伝統的なスラブセリフ体との組み合わせ(ハイブリッド)」だと表現した[1]

多くのデザインの外見は、画面上でうまくレンダリングするにはやや濃淡ムラがあり、終止符(full stop)は丸というよりも正方形である。デザイナーはこのことから印刷文書での使用を避けるよう推奨している。デザイナーのマシュー・バターイック英語版は、紙の上で魅力的とするには単調過ぎる、と述べている[5]。ボスマはそれを小さく印刷されるべく設計した光学的なフォントサイズと比較して、「このデザインは古い金属活字(メタルタイプ・フォント)のようなものだ。当時はサイズごと独自の描画があり、それで同じデザインの大きなフォントに比べて小さなサイズは幅広でコントラストが低い。光学的補正なんです。この意味で、Cambriaは小さなサイズのフォントのようではあるが、ただし大きなサイズで使用してもよい。」とした。

他のClearTypeフォントと同様、ライニング数字[注釈 2]とテキスト数字が用意されている。ライニング数字が初期設定で、サンプル画像に表示される。

Cambria Math

Cambria Math(カンブリア・マス)とは、タイムズ・ニュー・ローマン の後継として、数式化学式といったテキストのために設計された変種である。TeXに触発されたOpenType-Mathの拡張を実装する最初のフォントとなっている。このプロジェクトはCambriaの開発が始まった時に、Agfa Monotype社のジェル・ボスマとTiro Typeworks社のロス・ミルズ(Ross Mills)の主導で計画され、3段階でCambria Mathが開発された[6]

有用性

通常、ボールド体イタリック体 、太字イタリック、のCambriaフォント。

Cambriaは、Windows Vista以降の全てのWindowsバージョン、Windows用Microsoft Office 2007以降の全てのMicrosoft Officeバージョン、Mac用Microsoft Office 2008、およびMicrosoft Office 2007ビューア&コンバータ(閲覧&変換ソフト)と共に配布されている。正規のCambriaとCambria Mathは、TrueType コレクション(TTC)ファイルとしてパッケージ化されている。OMMLがサポートされていないため、Microsoft Office 2008 for MacにはCambria Mathが含まれていない。そのため、Macintosh版のCambriaは単一のTTCファイルではなく、個別のTrueTypeフォント(TTF)ファイルとしてパッケージ化されている。

このフォントはCalibriCandaraConsolasCorbelConstantiaと共に、Microsoft Excel ビューア、Microsoft PowerPoint ビューア[7][8]、Windows用のMicrosoft Office互換機能パック[9]、そしてMac用のOpen XMLファイルフォーマットコンバータと共に配布される[10]GNULinuxといった他のオペレーティングシステムでは、このフォントをウェブ上やクロスプラットフォームの用途でフリーウェアとして活用することはできない。

この書体は、エンドユーザーおよび家庭用電化製品のデバイスメーカーによる使用に関してAscender Corporation 社のライセンスを受けている。この書体はまた、Vista 8のフォントセットパッケージの一部として、プリンタ製造企業に対してはMonotype Imaging 社によるライセンスを受けている。

Caladea

2013年、GoogleChromeの一部として、ライセンスフリーCaladea(カラデア) というフォントを公開した、これはCambriaとのメトリック互換英語版(つまりレイアウト変更なしに文書内で置き換えが可能)がある[11]。それは、アルゼンチンの字体製造社Huerta Tipográficaにより開発されたフォントCamboに基づいている。メトリック互換を有するとはいえCaladeaが対応する言語範囲は小さく、例えばキリル文字ギリシア文字には未対応で、合字分数といった高度なタイポグラフィ機能も備えていない。

用途

Cambria Mathは、Microsoft Office 2007以降でOffice MathMLの式を表示するために使用される。

フリーの組版システムXeTeXLuaTeXは、伝統的なTeX数式フォントの代わりとしてCambria Mathを直接使用することができる[12][13]

Cambriaは、GoogleのウェブアプリケーションのGoogle Drive Suiteで使用可能である。

  • ほとんどの文書入力アプリケーションの初期フォントとして使用されている。

関連項目

  • Asana-Math - Microsoft Office 2007でCambria Mathの代わりに使用できる最初のフリーフォント。
  • Neo Euler - AMS EulerフォントをOpenType形式の数学機能に対応させた改良版フォント。
  • XITS - STIXフォントをOpenType形式の数学機能に対応させた派生フォント。

脚注

注釈

  1. ^ ヘアラインとは、「塗り」部分のみが指定されていて、線幅がゼロのライン(線)のこと。画面上では確認できるが、印刷をすると印刷結果に現れない線[3]
  2. ^ 大文字アルファベットの高さに合わせたものがライニング数字(見出しなどで使う)。小文字交じりの英文テキスト内でも違和感が無いよう、小文字の高さを意識して作られたのがテキスト数字。詳細はen: figuresを参照。

出典

  1. ^ a b Classifying Cambria (comments on discussion thread)”. Type Drawers. 10 October 2018閲覧。
  2. ^ "Profile of Jelle Bosma". Monotype. ページ痕跡のみ。
  3. ^ 印刷されない「ヘアライン」とは?」、ネット印刷.com 印刷知恵袋、2016年8月3日。2018年11月17日閲覧。
  4. ^ Microsoft’s ClearType Font Collection: A Fair and Balanced Review”. Typographica. 24 November 2014閲覧。
  5. ^ Cambria alternatives”. Butterick's Practical Typography. 24 November 2014閲覧。
  6. ^ Rhatigan, Daniel (September 2007) (PDF). Three Typefaces for Mathematics - The development of Times 4-line Mathematics Series 569, AMS Euler, and Cambria Math. University of Reading. オリジナルのDecember 29, 2009時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20091229042035/http://www.typeculture.com/academic_resource/articles_essays/pdfs/tc_article_47.pdf 2009年1月3日閲覧。.  See also video recording of presentation at TUG 2008 Archived 2014-08-27 at the Wayback Machine.
  7. ^ Download Excel Viewer from Official Microsoft Download Center”. Microsof. 24 November 2014t閲覧。ダウンロードは利用不能。
  8. ^ Download PowerPoint Viewer from Official Microsoft Download Center”. Microsoft. 24 November 2014閲覧。ダウンロードは利用不能。
  9. ^ Download Microsoft Office Compatibility Pack for Word, Excel, and PowerPoint File Formats from Official Microsoft Download Center”. Microsoft. 24 November 2014閲覧。ダウンロードは利用不能。
  10. ^ Download Open XML File Format Converter for Mac 1.2.1 from Official Microsoft Download Center”. Microsoft. 24 November 2014閲覧。ダウンロードは利用不能。
  11. ^ A thank you to Google from Desktop Linux”. GNOME Blog. 2018年11月17日閲覧。
  12. ^ M. Goossens (Ed.) (2008) The XeTeX Companion: TeX meets OpenType and Unicode, p. 90
  13. ^ LuaTeX reference manual Archived 2010-07-17 at the Wayback Machine.

外部リンク