2003年J1・2ndステージ最終節2003年J1・2ndステージ最終節(2003ねんJ1・セカンドステージさいしゅうせつ)は、2003年(平成15年)11月29日に行われた日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)ディビジョン1 (J1) セカンドステージ(後期)第15節のことを指す。本項ではその中で、ステージ優勝の可能性があったジュビロ磐田、鹿島アントラーズ、横浜F・マリノス、ジェフユナイテッド市原の試合について記す。 第14節までの経緯この年のJリーグは、それまで「2強」と呼ばれてきた鹿島、磐田のチーム力が低下する一方で、名門と呼ばれながらそれまで2強の陰に隠れてきた横浜FMが岡田武史を監督に招聘していきなり1stステージで優勝。イビチャ・オシムを迎えた市原も力をつけるなど、それまでのチームの上下関係が変化し出していた。 このようにJ1全体が群雄割拠の様相を呈してきたことと、この年からVゴール方式の延長戦が廃止された(J2では2002年に廃止)ことで引分が増えたことが重なって、2ndステージは空前の大混戦になり、残り2節となった第13節終了時点でも、10チームが6ポイント差の中にひしめき合っていた。
11月22日から24日にかけて行われた第14節、首位の磐田がホームでG大阪に逆転勝利し3連勝して優勝に王手(これによりG大阪・名古屋・清水の優勝可能性が消滅)。一方、2位浦和は名古屋にアウェイで大敗し優勝争いから脱落。3位市原はホームで大分トリニータと引き分け、ぎりぎりのところで優勝争いに踏みとどまる。4位鹿島はホームで柏レイソルに、7位横浜FMはアウェイでベガルタ仙台にそれぞれ勝利して優勝の可能性を残し、5位FC東京と6位東京Vの東京ダービーは引分に終わって両チームとも優勝戦線に残れず。優勝可能性は磐田・鹿島・横浜FM・市原の4チームに絞られた。
最終節4チームが絡む試合は下の3試合である(開始予定時刻はいずれも14:00。左側がホームチームで、太字が優勝の可能性が残っているチーム)。
横浜FMと磐田の直接対決があるため、各チームの様相は以下の通りとなる。
引分でもほぼ優勝できる磐田が最も優勢で、次いで2位の鹿島が有利と思われていたが、横浜FMにはホーム開催という好条件があった。市原は少なくとも6点差での勝利が求められ、わずかな可能性に賭けることになった[4]。横浜FMと市原は勝点トップで並び、かつ得点と失点でもそれぞれ並ぶ可能性があったが、そのときは第9節の直接対決で勝利している横浜FMの優勝となっていた。磐田と鹿島にも同様の可能性があったが、同カードは第6節で引き分けており、その場合はニュートラルで1試合の優勝決定戦が行われる予定であった。 前半14時2分に横浜で、1分後に味スタで、さらに1分後に埼スタで試合開始。 試合は序盤から各地で動く。横浜では前半2分、磐田FW前田遼一が横浜FM陣内左サイドで粘ったボールをMFジヴコヴィッチがセンタリング、これをFWグラウが左足であわせて磐田が先制、磐田優位の状況を生み出す[3]。一方、埼スタでは前半6分にMF小笠原満男のボレーシュートが決まって鹿島が先制する[5]。
前半15分、横浜では横浜FMのGK榎本哲也が磐田のグラウと小競り合い。これが榎本によるグラウへの乱暴行為と認定され、榎本は一発退場。横浜FMは残り75分を10人で臨むことになり、この時点で磐田に圧倒的に有利な状況を生み出した[3]。しかし、この状況が「安心というより、勝たなくてはという気持ちで最終ラインが落ち着きがなく」「かえって固くなった」と柳下正明監督が試合後に語った[6]ように、磐田にとって逆にプレッシャーとなり、思うような攻撃を仕掛けられなくなる状況を生み出してしまい、前半は追加点を挙げられないまま終了する。 一方、味スタでは、市原の思いとは裏腹にホームの東京Vが序盤から攻勢をかけていたが決定機を逃し続け、逆に14分頃からは市原へと試合の流れが傾き、前半18分、MF佐藤勇人のパスを受けて左サイドから抜け出したMF村井慎二がシュート。これが東京VのGK高木義成の脇をかすめて市原が先制する[4]。市原はなおも追加点を狙うが、前半はこのまま終了。 また、埼スタでは32分には鹿島がFW深井正樹のドリブル突破で得たチャンスをMF青木剛がJ初ゴールを決めて1点追加。追撃態勢を整えて前半終了となった[5]。
後半後半開始わずか34秒、市原はFW崔龍洙のスルーパスからFWサンドロが決めて2点目を奪う。これで俄然勢いづいた市原は、残り4点を奪いに猛攻に出る[4]。 一方、埼スタでは後半開始早々に浦和がPKを獲得。しかし出場停止明けのFWエメルソンがこれを失敗し、差を詰めることが出来ない。しかし、ホームで負けたくない浦和はFW永井雄一郎を追加投入し、3トップで攻勢を強める[5]。 横浜では、前半途中から動きの固くなった磐田を横浜FMが見逃さず、後半5分に左コーナーキックからFW久保竜彦がヘディングシュート。一旦は磐田守備陣がこれを止めるが、ディフェンダーのクリアが小さくなったところを詰めていたFWマルキーニョスが頭で押し込み横浜FMが同点に追いつく[3]。同点に追いつかれたまででは磐田有利は変わらないが、磐田と鹿島の勝点が並び、事態は次第に混沌としてくる。
事態は各会場でそのまま推移し、埼スタで後半31分、FWエメルソンのシュートのこぼれ球をFW永井が押し込み、浦和が1点差に詰め寄って、最終盤を迎えることになる[5]。
勝点の状況に変化はなく、このまま終われば磐田が優勝を手にするはずであったが、ここから優勝の行方は一気に転々とすることになる。 後半ロスタイム横浜での後半ロスタイム、磐田のゴール前に放り込まれたロングボールに、横浜FMのFW久保が磐田のDF山西尊裕と競り合いながらあわせ、これが磐田GK山本浩正の頭上を越え、ゴールに吸い込まれる。その後磐田はFWの中山雅史を投入するも時すでに遅く、磐田の手に掛かっていた優勝が終了間際にこぼれ落ちた[3]。 そして横浜の試合が先に終了。埼スタの結果を見守ることになった。
ロスタイムに入った埼スタでは鹿島ベンチに「勝てば優勝」の状況が伝えられ、必死に逃げ切りを図るが、後半から攻撃的に出た浦和の圧力に鹿島の体力は消耗していた。ロスタイム、右サイドで鹿島DF大岩剛をかわしたFW永井のクロスにFWエメルソンがダイビングで合わせると、ボールはゴールへと転がっていった。最後の最後で浦和が同点に追いつき、鹿島イレブンが崩れ落ちる。直後に試合終了し、鹿島も後一歩のところで優勝を取り逃してしまった[5]。 試合の終わった横浜では、横浜FMのメンバー待つ中、「鹿島同点」の状況が大型スクリーンに映し出され、直後に埼スタの試合終了のホイッスル。横浜の完全優勝が決まり、スタンドとピッチが歓喜にわいた。
市原は、追加点こそ挙げられなかったものの勝利により2位に食い込み、磐田が3位、鹿島は4位に終わった。上位3チームは勝点・勝敗とも同一で、1位横浜FMと3位磐田の得失点差の差はわずかに5であった。
試合データ※選手交代は3人まで。また、後半ロスタイムはすべて「89分」の表示。
その他
関連項目出典
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