韻母
韻母(いんぼ)とは、中国語の音節の構成要素の一つ。1音節内で声母(頭子音)の後に続き、声調を除いた母音を中心とした部分をいう(声調も韻母に含める場合がある)。 韻母は、介音(半母音)・主母音・尾音(鼻音か二重母音を構成する補助的な母音)で構成される。韻母の中における部位を表す用語としては、介音を韻頭、主母音を韻腹、尾音を韻尾と呼ぶ。 また韻文の押韻や韻書の分類には、介音を除いた韻腹と韻尾部分および音節全体にかかっている声調(四声)を区別したものが用いられ、これを韻(いん)と呼ぶ。
特徴例として、「東」字の発音は標準中国語(普通話)では dōng と表記されるが、このうち d は声母、-ong が韻母、¯ が声調である。この場合、介音はゼロで、-o-が主母音、-ngが尾音である。なおこの韻母は注音字母にしたがって分けると、介音 -u- と、韻腹と韻尾 -eng からなる。 また、「光」字の発音の例では、標準中国語(普通話)では guāng と表記されるが、音節の構成部分に分けると以下のようになる。
これらの構成は、r化しない音節では、普通話・方言を問わず共通している。r化した音節では上記から外れている音節の例がみられる。 また、伝統的な音韻学では韻母を介音の特性から、開口呼・斉歯呼・合口呼・撮口呼の 四呼によって4つに分類し、韻尾の特性から陰声韻(母音で終わるもの)・陽声韻(鼻音韻尾)・入声韻(閉鎖音韻尾)の3つに分類する。 現代中国語の韻母現代中国語(普通話)では39の韻母が設定されている。(r化を除き)
中世中国語「韻書」で使われる韻字には平・上・去・入の声調の違いによって異なる字が使われた。語尾子音のうち内破音の[ p̚]、[ t̚]、[ k̚]は尾音[m]、[n]、[ŋ]の入声とされ、[m]と[ p̚]、[n]と[ t̚]、[ŋ]と[ k̚]はそれぞれ同じ尾音と考えられている。 なお韻と韻母は正確には同じではなく、韻とは韻母のうち主母音と尾音、それに声調を加えたものである。このため、漢詩で押韻する場合、韻母をそろえることが必要であるが、介音は必ずしも一致する必要は無く、主母音と韻尾、声調が一致していなければならない。 六朝から唐代の中国語についてまとめた『広韻』では、206韻が設けられ、その内訳は、上平声28韻、下平声29韻(平声を表す字が多いので上下2巻に分けられた)、上声55韻、去声60韻、入声34韻であった。その後、漢詩の押韻の規範となる「平水韻」では、これを106韻に整理し、上平声15韻、下平声15韻、上声29韻、去声30韻、入声17韻の韻目が建てられた。 近世中国語元代に北曲をもとに作られた『中原音韻』では、中原地方における中国語では入声が消滅したことを反映して、入声が平声・上声・去声のどれに変わったかを示している。また、韻目を19韻にまとめて、同韻の字を集めた上で、それぞれがどういう声調であるかを示している。 関連項目 |