超大型空母 (ちょうおおがたくうぼ、英語 : Supercarrier )は、特に大型の航空母艦 に対する俗称[ 注 1] 。アメリカ海軍 では、当初、核戦略 の一翼を担いうるように大型の艦上攻撃機 を運用可能な艦として構想された。
概要
単語としての初出は、1938年 に発行されたニューヨーク・タイムズ において、イギリス海軍 の「アーク・ロイヤル 」を指して用いられた例であるとされる[ 3] 。一方、第二次世界大戦 後のアメリカ海軍では、仮想敵としての大日本帝国海軍 の消滅と核兵器 の台頭を受けて、核戦略の一翼を担いうるように大型の艦上攻撃機を運用可能なCVB-X計画艦(基準排水量70,000トン)を計画しており、その1番艦「ユナイテッド・ステーツ 」は1948年 度計画で建造が開始された。これが初の超大型空母となるはずだったが、戦略爆撃機 の優位性と大型空母の非効率性を主張する陸 ・空軍 の意向を受け、ルイス・A・ジョンソン (英語版 ) 国防長官 は起工後9日にして建造中止を命令した。
その後、同艦の建造中止を巡る「提督たちの反乱」に関連して開かれた公聴会 や朝鮮戦争 での実績を通じ、空母の存在意義が広く認められるようになったことから、1952年 度予算でフォレスタル級 の建造が開始され、超大型空母の端緒となった[ 6] 。続いて1956年 度からは、発展型のキティホーク級 の建造が開始された[ 6] 。この間、1958年 度では初の原子力空母 として「エンタープライズ 」も建造されたものの、あまりに高価であり、その後しばらくはキティホーク級に準じた通常動力型の建造へと回帰していた。その後、原子力推進技術の成熟を受け、1967年 度計画以降では原子力空母としてのニミッツ級 の量産が開始された。同級は順次に改良を重ねつつ長く建造されたが、2007年 度からは大規模に改設計したジェラルド・R・フォード級 へと移行した。
左からジェラルド・R・フォード 遼寧 アドミラル・クズネツォフ クイーン・エリザベス ヴィクラマーディティヤ シャルル・ド・ゴール
比較表
超大型航空母艦(スーパー・キャリアー)の比較
CVN フォード級
CVN ニミッツ級
CVN エンタープライズ (最終状態)
CV キティホーク級 (最終状態)
CV フォレスタル級 (最終状態)
船体
満載排水量
101,605 t
91,400 - 102,000 t
83,350 t
75,200 t - 83,000 t
75,900 t - 76,000 t
全長
332.8 m
332.0 m
341.3 m
319.3 m - 326.9 m
316.7 m - 319.0 m
水線幅 / 最大幅
41.8 m / 78 m
40.8 m / 76.8 m
38.5 m / 78.3 m
39.6 m / 76.8 m
38.5 m / 76.8 m
機関
方式
原子炉 + 蒸気タービン
ボイラー + 蒸気タービン
出力
280,000 hp [ 注 2]
速力
30 kt 以上
36 kt
35 kt
34 kt[ 注 2]
兵装
砲熕
ファランクスCIWS × 2–3基
ミサイル
ESSM 8連装発射機 × 2基
シースパロー 8連装発射機 × 2–3基
RAM 21連装発射機 × 2基
―
航空運用機能
形式
CATOBAR
発艦装置
電磁式カタパルト × 4基
蒸気式カタパルト × 4基
JBD
4基
着艦帯
アングルド・デッキ 配置
制動索
3索
4索[ 注 3]
エレベーター
3基
4基
航空用ガソリン
―
363 kL
192 kL
353 kL
ジェット燃料
不明
10,220 kL
9,382 kL
4,439 kL
6,955 kL
航空機用兵器
不明
2,970 t
1,800 t
搭載機数
常時70機前後
常時70機前後 / 最大90機
同型艦数
1隻 / 10隻予定 (1隻艤装中、1隻建造中)
10隻
1隻(退役)
4隻(退役)
4隻(退役)
脚注
注釈
^ なおアメリカ海軍では、俗称としての"Supercarrier"とは別に、公式の類別として「大型航空母艦」 (Large aircraft carrier ) が存在した時期もあった。これは異例の大型艦であるミッドウェイ級 の建造に伴って、従来の空母(CV)と区別するために1943年 7月15日 付けで制定されたもので、CVB の船体分類記号 が付与された。その後、1952年 10月1日 に従来のCVとCVBを統合して「攻撃空母 」 (Attack aircraft carrier ) の類別が設けられ、CVA の船体分類記号が制定されて、CVBは廃止された。
^ a b 「フォレスタル 」のみ出力260,000 hp、速力33ノット
^ ニミッツ級9番艦 以降は3索式。
出典
参考文献