請願権請願権(せいがんけん)とは、国や地方公共団体の機関に対して、その職務に関する事項についての希望・苦情・要請を申し立てる権利[1]。 概説請願は、国民による政治参加が認められず、政治上の言論の自由が確立されていなかった時代には、民情を為政者に訴えあるいは権利の救済を求めるための、ほとんど唯一の手段であった[2]。請願権を法制度上において最初に保障したのは1689年のイギリス権利章典である[2]。近代的な議会制度が確立された後も、選挙権が一部の特権階級のみ限定されていた時代には、なお政治上重要な機能を果たした[2]。その後の普通選挙制の確立と言論の自由の拡大により請願権は元来の重要性を減じてきたものの、選挙以外の場で主権者たる国民の意思を国政に反映させるものとしての意義を失っているわけではない[2]。 欧州連合基本権憲章第44条も欧州連合内の全ての自然人と法人に対して請願権を保障している。 法的性格従来、請願権は請願の受理を求める権利であるとの理解から国務請求権(受益権)に分類されてきたが、現代の請願は民意を直接に議会や政府に伝えるという意味が重要視されており参政権的機能をも有するものと理解されている[3]。請願権を参政権に分類する学説もあるが、請願権は国家意思の決定に参与する権利ではないから典型的参政権とは異なる補充的参政権として捉えられることがある[4]。 日本大日本帝国憲法(明治憲法)大日本帝国憲法(明治憲法)は請願について第30条に規定を置いていた。明治憲法においては、請願権は一応認められていたと言いうるが、請願の内容や方法については制限され[1]皇室典範も含め憲法に関する事項や裁判の関与する事柄は許されなかった。
これを具体化する法令として請願令(大正6年勅令37号)が定められていた[2]。 請願を受けた機関に応答義務はなかった。
また、帝国議会の各院に対する請願については大日本帝国憲法第50条に規定があった[2]。
明治憲法において、「提出」の文字は7か所で使用されており、「呈出」の文字は、この第50条1か所のみである。 議院に呈出された請願書の内容は、請願委員会の検閲を受けた。 日本国憲法日本国憲法は請願権について第16条に規定を置いている。
この条文が定める権利には、請願法5条の「これ(請願書)を受理し誠実に処理しなければならない」という義務が対応する。しかし、義務の内容について政府は、「請願を受理した官公署に対して、請願者にその処理の経過や結果を告知する義務までを負わせるものではない」と述べている[5]。 請願の主体請願は国政に関する決定権たる意味を有するものではないから外国人も行うことができると解されている(通説)[1][6]。また、法人も請願を行うことができる(請願法第2条参照)[1]。この「何人も」に天皇が含まれるかについて通説はない。 請願の客体憲法第16条の「損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正」は例示であり、請願の対象は一切の国務・公務に関する事項に及ぶ[1]。 ただし、裁判に関する請願については問題があり否定説と肯定説がある。裁判に関する請願について、否定説は司法権の独立の観点から係属中の裁判事件に干渉する請願等は許されないとし、肯定説は請願は希望の陳述にすぎないのであるから除外する理由はないとする[1]。なお、旧請願令は明文で裁判に干預する請願を禁じていたが、請願法には特に限定する規定は設けられていない[1]。 請願の内容請願権は公の機関に対して希望を陳述する権利であり、請願を受けた機関は誠実にそれを処理する義務(請願法第5条)を負うが、請願内容に応じた措置をとるべき義務を負うことはなく、一般に、何らかの法律上の効果を派生させるものでもない[3]。公の意思は公の手続で決定されるもので一国民の意思で決定すべきものではないからである[6]。 請願の手続
脚注
参考文献
関連項目外部リンク
|