西湖佳話『西湖佳話』(せいこかわ)は、西湖をめぐる過去の様々な西湖にまつわる人物の伝奇、説話、物語を題材とした[1]白話小説 16篇の選集で、全書名を『西湖佳話古今遺蹟』という。 作者は古呉墨浪子(こごぼくろうし)と題し、序の日付は清の康熙十二年(1673年)と記されている。古勝正義[2]は中国最初の実践的な園芸書『花鏡』の著者陳淏と同一人物であると推定している[3]。 目録と概要先行作品に関する情報は、内田道夫[4]訳 中国古典文学大系 39 『西湖佳話(抄)』解説 p.493-497 、古勝正義 『西湖佳話と陳淏』 p.3-8 等による。
版本『西湖佳話』は初版本の刊行後、現在まで木版本、石印本、排印本として版を重ねている。木版本には次のようなものが知られている。
これらの木版本のうち金閶緑蔭堂本以外はすべて日本国内に伝本があり、見ることができる[10]。石印本は数種が知られ、これを合わせると20種を下らない。このうち封面(見返し)に「金陵王衙蔵板」と題し、墨浪子の自序が丸みのある顔体(顔真卿風書体)で書かれている本が原刻本である。国内の機関に収蔵されている原刻本には、精巧な多色刷りの図版を保持したものがある。この図版部分には他の版本からは消えた多くの情報が含まれていて、『西湖佳話』という書物の性格や制作関係者を知るうえで非常に重要な手掛かりを提供している[11]。 日本語訳書江戸時代の岡白駒[12]による加点本『小説奇言[13]』(1753年)は巻之五に『梅嶼恨蹟』を、十時梅厓 [14]訳『通俗西湖佳話』(1805年)は、『葛嶺仙蹟』『斷橋情蹟』『岳墳忠蹟』『六橋才蹟』の4篇の抄訳である。 内田道夫訳『西湖佳話(抄)』[15]は『葛嶺仙蹟』『靈隱詩蹟』『西泠韻蹟』『岳墳忠蹟』『南屏醉蹟』『斷橋情蹟』の6篇を日本語訳している。 『雷峰怪蹟』については丸井貴史[16]による試訳がある[17]また、青空文庫に田中貢太郎による自由訳 『雷峯塔物語』 がある。 日本文学への影響日本の文学作品に、江戸時代後期の上田秋成作とされる『雨月物語』中の『蛇性の淫』は、『雷峰怪蹟』または馮夢竜の警世通言 第二十八卷 白娘子永鎮雷峰塔を翻案したものとされるが、いずれが粉本なのかという疑問に対し、麻生磯次は語句比較によって上田秋成は両方を参照したと判断している[18]。 谷崎潤一郎『蘇東坡』は卷之三『六橋才蹟』から、『鶴唳』は卷之五『孤山隱蹟』から着想を得ているとされている[19]。 注・出典
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