色空間色空間(いろくうかん、英: color space)は、立方的に記述される色の空間である。カラースペースともいう。色を秩序立てて配列する形式であり、色を座標で指示できる。色の構成方法は多様であり、色の見え方には観察者同士の差異もあることから、色を定量的に表すには、幾つかの規約を設けることが要請される。また、色空間が表現できる色の範囲を色域という。色空間は3種類か4種類の数値を組み合わせることが多い。色空間が数値による場合、その変数はチャンネルと呼ばれる。 色空間の形状はその種類に応じ、円柱や円錐、多角錐、球などの幾何形体として説明され、多様である。なお、色空間は、抽象的な概念であるカラーモデルと呼ばれる数学的モデルを具体化したものである。 基礎知識表色系表色系は、心理的概念あるいは心理物理的概念に従い、色を定量的に表す体系である。通常は3つの方向性を具える空間で表現され、色空間を構成する。表色系の分類方法はさまざまだが、見え方で色を体系化する顕色系の表色系と、等色実験に基づいて色を定量化する混色系の表色系に分類されることが多い[1]。 顕色系 (英: color appearance system) は、色を色の3つの特徴に従って配列して、その間隔を調整し整合性を高め、尺度と共に差し出すものである。後述のマンセル表色系やPCCS、NCSが代表的な例である[2]。 混色系 (英: color mixing system) とは、色を心理物理量と捉え色刺激の特性によって現すものである。数値として伝達する場合に適している。後述のXYZ表色系が代表的な例である。 色の具現化のガイドが厳格な色体系は、色を直接作り出す場面で用いられることが多く、そうでない色空間は、色を情報として伝達する場面で用いられることが多い。 数学的には3つの変数があれば、すべての色を表現できると言える。しかし、すべての色を表示できる必要がない状況や、そのほか実用の便宜のために、2変数以下、あるいは4変数以上を用いる色空間もある。また変数の取り方もさまざまなものがあり、目的に応じて多種多様な規格が存在する。 計算によってある色空間から別の色空間への変換は行えるが、変換後の色空間で表現できない色の情報は失われてしまう。また、その計算はふつう不完全である。色を扱うにあたっては、なるべく色空間を統一して作業することが求められる。なお、色空間にはカラープロファイルとして記録可能な色空間 (RGB, RGBA, YCbCr, CMYK, Lab color) と記録できない色空間がある。 均等色空間→詳細は「色の見えモデル」を参照
Uniform Color Spaceのこと。色空間上での距離・間隔が、知覚的な色の距離・間隔に類似するよう設計されている空間。色の物理的な差異よりも、人間の知覚上での差異に主眼を置いた色空間。工業的には、工業製品の色彩の管理に要請される。 表色系顕色系マンセル表色系→詳細は「マンセル表色系」を参照
1905年に画家のアルバート・マンセルが基礎となった概念を発表し、その後1943年にアメリカ光学会が修正して完成させた表色系[3][4]。色を整理して色の三属性を尺度化して、数字と記号を用いて正確に表示することを目的としている[3][4]。 PCCS→詳細は「PCCS」を参照
1966年に日本色彩研究所が発表した、色彩調和を目的とした表色系[2][3]。明度と彩度を複合した要素「トーン」の概念が特徴で、トーンを用いることで実際の色のイメージがしやすく、カラーデザインに向いている[3]。 NCS→詳細は「NCS (表色系)」を参照
1981年にスウェーデンで生まれた、色の知覚的表現を目的とした表色系[2]。6つの基本色の配合で全ての色を表現できると考え、明度・彩度の概念が存在しない点が特徴[2]。比較的新しい表色系だが、スウェーデン・ノルウェー・スペインなどの工業規格として採用されており、ヨーロッパを中心に普及している[5]。 DIN表色系DIN表色系はM.リヒターたちの色差に関する研究を踏まえ均等色空間の実現を目指した表色系である。1955年にDINに採用され、色票集も刊行されている。色は色相、明度、飽和度で表現される。ヘリングの反対色説に則るが、合衆国のマンセル表色系と異なり、色相は黄から始まる。これはゲーテの思想との縁故が指摘[6] されている。 混色系オストワルト表色系→詳細は「オストワルト表色系」を参照
1923年にヴィルヘルム・オストワルトが考案した表色系[7]。色彩調和を目的としておりデザイン分野などで利用され、PCCSのトーンによる調和の考え方にも通じ、DIN表色系にも影響を与えている[7]。 CIE表色系CIE(国際照明委員会)が定める表色系。
一般的な色空間RGB→詳細は「RGB」を参照
RGBは一般に、加法混合を表現するのに使われる。RGBは、それぞれ赤 (red) 緑 (green) 青 (blue) の頭文字である。光の三原色であり、数値を増すごとに白くなる。反対に、数値を減らすごとに黒くなる。コンピュータのモニタで用いられるのも、このRGBである。 視覚上では、色は光の三原色に近い、3波長に対応した網膜の錐体細胞が受け取って知覚される。これには若干の個人差があり、また実際問題として純粋な3波長を用意することが難しい場合が多いため、混色系の色空間にはさまざまな種類のものがある。さまざまな表色系が存在するが、それぞれの表色系ごとに、赤・緑・青の基準が定められている。 コンピュータで表示可能な色数は各ピクセルに何ビットの情報を割り振るかにより決定される。ほとんどの人間の目で識別可能な限界に必要な情報はRGB各8ビット(計24ビット)の1677万7216色とされフルカラーやトゥルーカラーと呼ばれる。1990年代前半頃までビデオメモリが高価なこともあり表示色は2色やRGB各5ビット(計15ビット)の32768色などに限られていた。画像編集において編集の過程での劣化を考慮してRGB各16ビット(計48ビット)などより多ビットで扱うことがある。 「RGBでは人間が知覚できる色をすべて表現できる」と説明されることがあるが、これは若干の誤解を含む。これについてはXYZで詳述。
RGBA
CMYCMYは印刷の過程で利用する減法混合の表現法である。絵具の三原色。基本色は白で、それに色の度合いを加えて、黒色にしていく。すなわち、始めは白いキャンバスから始め、インクを加えて暗くしていく(反射光を減らす、すなわち減法)ということである。CMYには、シアン(cyan)、マゼンタ (magenta)、イエロー (yellow) インクの数値が含まれている。
HSVHSVはコンピュータ上で絵を描く場合や、色見本として使われる。これは、色を色相(色味)と彩度という観点から考える場合、加法混合や減法混合よりも自然で直感的だからである。HSVには色相 (hue)、彩度 (saturation)、明度 (value) が含まれている。HSB (hue, saturation, brightness) とも呼ばれる。 HLSHLSは、HSL、HSIなどとも呼ばれる。色相 (hue)、彩度 (saturation)、輝度 (luminance) よりなる、HSVに近い表現法である。明度と輝度との違いは値の算出方法である。HSVでは純色と白が同じ明度で表される六角錐モデルだったのに対し、HLSでは純色の輝度を50%とする双六角錐モデルで表現する。 放送用YIQYIQは、NTSCの内部処理で使用されるコンポーネント方式である。通常は外部には出力されず、機器内部で使用されるが、過去には松下電器が開発したMビジョンVTRが、テープにYIQ信号をコンポーネント記録していたという例もある。現在使用されている色差コンポーネント信号のクロマ成分(Cb,Cr)に対して33°回転した色相となり、I軸とQ軸は直交する。 人間の目がI軸(オレンジ-ライトブルー間)の変化には比較的敏感であるのに対して、Q軸(青紫-黄緑間)の変化には鈍感である性質を利用して、少しでも狭い帯域で、少しでも視覚的に良好な結果を得ようとした、設計上の選択によるものである。Y、I、Qに対する人間の目の分解能比は4:1.5:0.5と評価されており、RGB4:4:4信号をYIQ4:1.5:0.5に変換することで、人間の目には劣化が感じられないものの、伝送に必要な情報量を減らした信号を得ることができる。NTSCは、このYIQ信号を直角二相変調する。 欧州を中心に(米日及び米の影響が強い範囲以外で)使用されているPALは、クロマにIQ成分の代わりにUV成分を使う。これは現在使用されているCb,Cr(あるいはPb,Pr)成分に近いものであり、IQ方式とは色相が異なる。 YUV / YCbCr / YPbPr→「YUV」を参照
過去に用いられていた色空間RGV青色(Blue)でなく菫色(Violet)を用いた加法混合。RGB法に至る以前の初期の研究で用いられたのみ。 RG, RGK→「en:RG color space」を参照
赤 (Red) と緑 (Green) の強度で色を指定する方法。赤と緑の合成は、RGB色空間と同様に、加算により行なわれる。青 (Blue) がないので、青成分を含む色が正しく表現できない。初期のテクニカラーフィルムで使われていた。RGK色空間はRG色空間にキー(Key, インクの黒、CMYK色空間でも使われる)を追加した色空間である。 光源RGB単色光の光源を使用した場合、白色光を光源とした場合に比べ再現域が広がる。CRTの場合、蛍光体の特性により純度の高い単色光を得られるかでディスプレイの色の再現性が決まる。冷陰極管をバックライトとして使用する液晶ディスプレイやハロゲンランプや放電ランプを光源とするDLP、液晶プロジェクタでは白色光をフィルタや誘電体薄膜でRGBに分離しているため単色光を光源とする場合に比べ再現性は劣る。レーザープロジェクタでは単色光を光源としている為、色の再現域が広い[要出典]。 脚注
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