脳表面にある凹凸のうち、凹の部分のことを脳溝と言う。
グレイ解剖学 図 726 - 左大脳半球の外側面を横から見た図。
グレイ解剖学 図 727 - 左大脳半球の内側面
脳溝 (のうこう、英 : Sulcus 、ラテン語 で"溝"の意味、複数形はsulci、単に溝 とも)は、神経解剖学 用語で、脳 の表面にあるミゾ、いわゆる『脳のしわ』にあたる部分である。脳溝は脳回 を取り囲むように存在し、ヒト や他の哺乳類 の脳の特徴的な外見を形作っている。
脳溝のうち、特に深いものは脳裂 (のうれつ、英 : Fissure )と呼ばれる。2つの大脳半球を分ける巨大な溝は大脳縦裂 と呼ばれるが、通常、大脳縦裂は脳溝とは呼ばれない。
個人差
脳溝のパターンは人によって異なる。この個人差を最も詳細に概観したのは、おそらくオノ (Ono) らによる『Atlas of the Cerebral Sulci』であろう
[ 1] 。
しかし、大きな脳溝の一部はほとんどの個人間 (さらには動物間でも) で共通して見られる。したがって、脳溝の命名が可能となる。
様々な動物種での脳溝
様々な動物種での脳溝の違いは、動物の大脳の大きさよりも、その身体の大きさに関係している。つまり、より大きい動物ほど脳溝が多い。:
"[L]arge rodents such as beavers (40 pounds) and capybaras (150 pounds) have many more sulci than smaller rodents such as rats and mice - but also more fissures than smaller monkeys"[ 2]
(訳)ビーバー (40ポンド) やカピバラ (150ポンド) のような大きいネズミ目 の動物は、ラットやネズミのような小さいネズミ目 の動物や小さいサルよりも多くの脳溝を持つ。"
主な脳溝
図 (外側面)
図 (内側面)
図 (上から)
図 (下から)
名称
上前頭溝 (じょうぜんとうこう) 英語 : Superior frontal sulcus ラテン語 : sulcus frontalis superior
下前頭溝 (かぜんとうこう) 英語 : Inferior frontal sulcus ラテン語 : sulcus frontalis inferior
外側溝 (がいそくこう) 英語 : Lateral sulcus ラテン語 : sulcus lateralis この脳溝は前枝 (ramus anterior)、上行枝 (ramus ascendens)、後枝 (ramus posterior) に分かれる。
上側頭溝 (じょうそくとうこう) 英語 : Superior temporal sulcus ラテン語 : sulcus temporalis superior
中側頭溝 (ちゅうそくとうこう) 英語 : Middle temporal sulcus ラテン語 : sulcus temporalis medius
中心前溝 (ちゅうしんぜんこう) 英語 : Precentral sulcus ラテン語 : sulcus precentralis
中心溝 (ちゅうしんこう) 英語 : Central sulcus ラテン語 : sulcus centralis
中心後溝 (ちゅうしんこうこう) 英語 : Postcentral sulcus ラテン語 : sulcus postcentralis
頭頂間溝 (とうちょうかんこう) 英語 : Intraparietal sulcus ラテン語 : sulcus intraparietalis
横後頭溝 (おうこうとうこう) 英語 : Transverse occipital sulcus ラテン語 : sulcus occipitalis transversus
外側後頭溝 (がいそくこうとうこう) 英語 : Lateral occipital sulcus ラテン語 : sulcus occipitalis lateralis
縁溝 (えんこう) 英語 : Marginal sulcus ラテン語 : sulcus marginalis
帯状溝 (たいじょうこう) 英語 : Cingulate sulcus ラテン語 : sulcus cinguli
脳梁溝 (のうりょうこう) 英語 : Callosal sulcus ラテン語 : sulcus corporis callosi
頭頂下溝 (とうちょうかこう) 英語 : Subparietal sulcus ラテン語 : sulcus subparietalis
頭頂後頭溝 (とうちょうこうとうこう) 英語 : Parieto-occipital sulcus ラテン語 : sulcus parietoocipitalis
鳥距溝 (ちょうきょこう) 英語 : Calcarine sulcus ラテン語 : sulcus calcarinus
側副溝 (そくふくこう) 英語 : Collateral sulcus ラテン語 : sulcus collateralis
下側頭溝 (かそくとうこう) 英語 : Inferior temporal sulcus ラテン語 : sulcus temporalis inferior
嗅溝 (きゅうこう) 英語 : Olfactory sulcus ラテン語 : sulcus olfactorius lobi frontalis
眼窩溝 (がんかこう) 英語 : Orbital sulcus ラテン語 : sulcus orbitalis
大脳縦裂 (だいのうじゅうれつ) 英語 : longitudinal fissure of cerebrum ラテン語 : fissura cerebri longitudinalis
マカクザルの脳溝
マカクザル の脳溝のパターンはよりシンプルである。ボーニン (Bonin)と(Bailey) の論文では以下の主要な脳溝が列挙されている[ 3] 。:
鳥距裂 (ca : Calcarine fissure)
中心溝 (ce : Central sulcus)
帯状溝 (ci : Sulcus cinguli)
海馬裂 (h : Hippocampal fissure)
頭頂間溝 (ip : Sulcus intraparitalis)
外側裂 (または、シルヴィウス裂) (la : Lateral fissure)
嗅溝 (olf : Sulcus olfactorius)
内側頭頂後頭裂 (pom : Medial parieto-occipital fissure)
嗅脳裂 (rh : fissura rhinalis)
上側頭溝 (ts : Sulcus temporalis superior) - この脳溝は外側裂と平行に走り、側頭極で交わっている。
参考文献
^ Ono, Kubick, Abernathey, Atlas of the Cerebral Sulci , Thieme Medical Publishers, 1990. ISBN 0-86577-362-9 . ISBN 3-13-732101-8 .
^ Martin I. Sereno, Roger B. H. Tootell, "From Monkeys to humans: what do we now know about brain homologies," Current Opinion in Neurobiology 15 :135-144, (2005).
^ Gerhardt von Bonin, Percival Bailey, The Neocortex of Macaca Mulatta , The University of Illinois Press, Urbana, Illinois, 1947
関連項目
外部リンク
フリーソフト
前頭葉
上前頭回 /前頭眼野 (en ) (6, 8, 9), 中前頭回 (46), 下前頭回 /ブローカ野 (44-弁蓋部 , 45-三角部 , 眼窩部 )
中心前回 (一次運動野 , 4)
直回 , 眼窩回 /眼窩前頭皮質 (10,11,12,47), 前帯状皮質
前頭前皮質 , 前運動野 (en ) , 前頭極
中心前溝 - 上前頭溝 - 下前頭溝 - 嗅溝 - 眼窩溝 - 中心傍溝
頭頂葉
中心後回 , 体性感覚野 (一次体性感覚野 (1, 2, 3,43), 二次体性感覚野 (en ) (5)), 楔前部 (7m) - 頭頂弁蓋 (en )
頭頂小葉 (上頭頂小葉 (7l), 下頭頂小葉 (40)), 縁上回 (40), 角回 (39)
中心後溝 , 頭頂間溝 , 縁溝
後頭葉 側頭葉 (外・下)辺縁皮質 ・島皮質
島皮質
帯状回 : 膝下野 (en ) (25), 前帯状皮質 (24,32,33), 後帯状皮質 (23,31), 脳梁膨大後部皮質 (26,29,30)
海馬傍回 (27,28,34,35,36), 海馬鉤 , 海馬体 ,(扁桃体 の一部)
※ 内側側頭葉など他の脳葉に含めて扱われることもある。
脳葉間の脳溝など 白質 その他
いくつかの領域分けは大まかなものになっている。
カッコ内の番号はブロードマンの脳地図 における番号である。また、ブロードマンの脳地図における領域のいくつかは複数の脳回にまたがっている。