脳回(のうかい、英: Gyrus, 複数形:gyri、回転、単に回とも)は、大脳皮質にある『しわ』の隆起した部分。脳回は一般的に1つ、ないし複数の脳溝に囲まれている。
大脳表面の凹凸は一見無規則に見えるが、配列に一定の規則性があり、種間または個体間で共通性の見られる構造に解剖学上の名称が与えられている。各脳回の名称については#主な脳回および#記事最下部の一覧を参照。
歴史
脳への関心は古くからあったが、大脳表面の凹凸の構造の規則性が理解されだしたのは、19世紀も半ばになってからである[1]。
-
1684年、フランスの解剖学者レイモンド・ビューサンによって描かれた大脳表面。まだ規則性のない、腸を詰め込まれたようなものとして描かれている。
-
1918年、 グレイ解剖学に描かれた大脳外側面の図。脳回と 脳溝の特徴が描かれ、各部に名称が与えられている。
-
2008年。脳の MRIデータ。2000年ごろから、脳のMRI撮影データに対し、プログラムを用いて自動で脳回・ 脳溝へ領域分けができるようになってきている。ただし区分け精度がそれほど高くなく、質の向上が研究課題とされている [2]。
発達
脳回は個体発生の過程で成長していく。脳回のパターンは個体差が大きく、同一個体の左半球、右半球でも、よく似たパターンを描きはするが完全には一致しない。異なる個体の間でパターンの相関性が最も高いのは一卵性双生児の間である[3]。脳回と脳溝のパターンの多様性の内、遺伝的に説明できる部分は1割程度であり、残りの部分は発生過程にある何らかの別の要因によって決定されていると考えられている。
異常
脳回の発達異常を伴う病気がある。ひとつひとつの脳回のサイズが小さく多数の脳回がある状態は多小脳回(たしょうのうかい、polymicrogyria)、また大脳表面の隆起がなくなり平らな状態は滑脳症(脳回欠損、lissencephaly)と言われる。
主な脳回
- 弓隆回 英語 : Fornicate gyrus
- 上前頭回 英語 : Superior frontal gyrus、ラテン語 : gyrus frontalis superior
- 中前頭回英語 : Middle frontal gyrus、ラテン語 : gyrus frontalis medius
- 下前頭回英語 : Inferior frontal gyrus、ラテン語 : gyrus frontalis inferior : この脳回は弁蓋部、三角部、眼窩部の3領域から成る。
- 上側頭回 英語 : Superior temporal gyrus、ラテン語 : gyrus temporalis superior
- 中側頭回 英語 : Middle temporal gyrus、ラテン語 : gyrus temporalis medius
- 下側頭回英語 : Inferior temporal gyrus、ラテン語 : gyrus temporalis inferior
- 紡錘状回 英語 : Fusiform gyrus、ラテン語 : gyrus occipitotemporalis medius
- 海馬傍回 英語 : Parahippocampal gyrus、ラテン語 : gyrus parahippocampalis
- 横側頭回 英語 : Transverse temporal gyrus
- 中心前回 英語 : Precentral gyrus、ラテン語 : gyrus praecentralis
- 中心後回 英語 : Postcentral gyrus、ラテン語 : gyrus postcentralis
- 縁上回 英語 : Supramarginal gyrus、ラテン語 : gyrus supramarginalis
- 角回 英語 : Angular gyrus、ラテン語 : gyrus angularis
- 帯状回 英語 : Cingulate gyrus、ラテン語 : gyrus cinguli
- 歯状回 英語 : Dentate gyrus、ラテン語 : gyrus dentatus
- 中心傍小葉 英語:Paracentral lobule、ラテン語:lobulus paracentralis
- 楔部 英語 : Cuneus
- 楔前部 英語 : Precuneus
- 舌状回 英語 : Lingual gyrus ラテン語 : gyrus lingualis
画像
-
グレイ解剖学 図 726 - 左大脳半球の外側面を横から見た図
-
脚注
- ^ Ribas(2010)
- ^ Bohland(2009)
- ^ Lohmann(1999)
参考文献
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、 脳回に関連するメディアがあります。
外部リンク
- サイト
- フリーソフト
|
外側面
|
外側溝内部
|
内側面 - 上部
|
+
+
ll
ll
+
|
|
|
脳底部 - 眼窩面
|
脳底部 - 側頭葉下面
|
内側面 - 下部
|
|
|
|
|
---|
前頭葉 |
上前頭回/前頭眼野 (en) (6, 8, 9), 中前頭回 (46), 下前頭回/ブローカ野 (44-弁蓋部, 45-三角部, 眼窩部)
中心前回 (一次運動野, 4)
直回, 眼窩回/眼窩前頭皮質 (10,11,12,47), 前帯状皮質
前頭前皮質, 前運動野 (en) , 前頭極
中心前溝 - 上前頭溝 - 下前頭溝 - 嗅溝 - 眼窩溝 - 中心傍溝
|
---|
頭頂葉 |
中心後回, 体性感覚野 (一次体性感覚野 (1, 2, 3,43), 二次体性感覚野 (en) (5)), 楔前部 (7m) - 頭頂弁蓋 (en)
頭頂小葉 (上頭頂小葉 (7l), 下頭頂小葉 (40)), 縁上回 (40), 角回 (39)
中心後溝, 頭頂間溝, 縁溝
|
---|
後頭葉 | |
---|
側頭葉(外・下) | |
---|
辺縁皮質・島皮質 |
島皮質
帯状回: 膝下野 (en) (25), 前帯状皮質 (24,32,33), 後帯状皮質 (23,31), 脳梁膨大後部皮質 (26,29,30)
海馬傍回 (27,28,34,35,36), 海馬鉤, 海馬体,(扁桃体の一部)
※ 内側側頭葉など他の脳葉に含めて扱われることもある。
|
---|
脳葉間の脳溝など | |
---|
白質 | |
---|
その他 | |
---|
いくつかの領域分けは大まかなものになっている。
カッコ内の番号はブロードマンの脳地図における番号である。また、ブロードマンの脳地図における領域のいくつかは複数の脳回にまたがっている。 |
|