しかし、群 G が主組成列を持つ場合でも、必ずしも完全可約群であるとは限らない。これは単純群は直既約群であるが、直既約群は必ずしも単純群ではないという理由による。
例えば、G を 5元体Z5 の乗法群 Z5× = {1,2,3,4} と置けば、G は位数4の巡回群であり、2と3は G の生成元であるので、N = {1,4} が唯一の自明でない正規部分群である。 主組成列は G ⊵ N ⊵ {1} であり、剰余因子群は G/N = {N, 4N} と N/{1} = N であるが、これらは共に位数2の巡回群であり同型である。この2つの群の直積はやはり位数2の巡回群であり位数4の巡回群である G には一致しない。つまりこの場合の G は完全可約群ではないことになる。
一般に、G を位数が素数のべき乗 pr (p は素数、r は2以上の自然数) である巡回群とすれば、G の自明でない部分群 (G 自身および単位群 1 以外の部分群) の位数は ps (s は 1 ≤ s < r である自然数) であり、これらの部分群をいかに直積で組み合わせても、位数が pr の元 (G の生成元) を含むような群にはならない。したがって、G はこれ以上直積分解できないので直既約群であるが、明らかに自明でない正規部分群を持つので単純群ではない。
群 G が直積分解可能であるか否かにかかわらず、組成列が存在すれば、組成因子は順序と同型の違いを除いて一意的である。つまり、
をそれぞれ G の組成列とすれば、s = t であり、剰余群 (Hi−1/Hi)1 ≤i≤s と (Kj−1/Kj)1 ≤j≤t は、適当な s 次の置換σ によって Hi/Hi−1 ≅ Kσ(i)/Kσ(i)−1 とすることができる (ジョルダン・ヘルダーの定理)。
群に対して
有限性と極大性
群 G の部分群の列
が各添字 1 ≤ i ≤ n について Gi ⊵ Gi−1 である場合、(Gi)0≤i≤n を正規鎖(英語版) (subnormal series) と呼び、部分群の個数 n を正規鎖の長さと呼ぶ。ただし、組成列と異なり、Gi と Gi−1 の間に Gi の正規部分群が存在する場合も許容され、長さが無限大となる場合も有り得るものとする。
組成列は長さが有限で、その長さが極大である正規鎖であると言える。群 G に組成列が存在するならば、G の任意の正規鎖は感覚的に言えば列に部分群を極大になるまで挿入することによって、組成列に細分できる。つまり、組成列にはもはや「挿入」できる部分群がないということである。
加群 M の組成列は、となりあった加群の商が単純であるような、部分加群による M の増大する有限のフィルターであり、M の単純部分加群による直和分解の代わりの役割を果たす。ジョルダン・ヘルダーの定理による組成列の一意性は、有限群やアルティン加群の不変量を定義するのに使える。
加群に対する組成列の定義は部分加群のみに着目し、部分加群でない部分加法群は無視する。環 R と R-加群 M が与えられたとき、M の組成列とは部分加群の列
であり、各 1 ≤ i ≤ n に対し Mi−1 が Mi の極大部分加群であるものである。この場合、(単純)商加群 (Mi/Mi−1)1≤i≤n は M の組成因子と呼ばれる。もし M が組成列をもちさえすれば、M の部分加群の任意の有限真増大列は組成列に細分できる。群のときと同様に、ジョルダン・ヘルダーの定理が成り立ち、M の任意の組成列は同値である。つまり、組成列の長さは等しく、組成因子も順序と同型の違いを除いて等しい。
加群が有限の組成列をもつこととアルティン加群かつネーター加群であることが同値であることはよく知られている[2]。R がアルティン環であれば、任意の有限生成 R-加群はアルティン的かつネーター的なので、有限の組成列をもつ。とくに、任意の体 K に対し、K 上の有限次元多元環上の任意の有限次元加群は同値の違いを除いて組成列を1つもつ。
特別なケースとして Ω = G であって G がそれ自身に作用しているときがある。重要な例は G の元が共役で作用して作用素の集合が内部自己同型からなるときである。この作用のもとでの組成列はちょうど主組成列(英語版)である。加群の構造は Ω が環であっていくつか追加の公理を満たすときの Ω-作用のケースである。