端末 (たんまつ、英 : terminal [ 1] ターミナル )とは、
(通信用語)回線 やネットワークの末端に接続され、他の機器と通信 を行う機器[ 1] 。通信を中継・集約・分配する機器と対比して用いられている用語・概念[ 1] 。
(コンピュータ用語)利用者が直接操作する装置[ 1] 。コンピュータ類に接続し、もっぱら情報の入力や表示などに使う装置のこと[ 1] 。
概説
「端末」あるいは「ターミナル 」(英 : terminal )という用語・表現は、通信用語とコンピュータ用語がある。
通信用語は、通信の中継機器、集約機器、分配機器などとの対比で用いられている用語・用法で[ 1] 、コンピュータ用語は他のコンピュータ(大型コンピュータ、ホストコンピュータ、あるいはサーバ など)に接続し、もっぱら情報の入力や表示などをする機器のことである。
通信用語としての端末
通信用語の「ターミナル」という用語は、時代とともに変化してきた。
電信時代
電信時代の端末。電鍵 。
電信 時代のターミナル(端末)は、電信回線の終端に接続された機器であり、手動のキー操作によって電信信号を送信するために使用されていた。電鍵 や電信機とも呼ばれた。
アナログ電話回線などの端末
電話時代の端末。電話機 。
アナログ電話回線の端末は、電話機 やファクシミリ などである[ 2] 。
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(2023年3月 )
1962年にアメリカのAT&Tから、商業的に利用可能になった最初のモデム 、Bell 103 modemがリリースされた。このモデムも通信用語でいう「端末」ということになった。
1990年代でも、アナログ回線にパーソナルコンピュータを接続したり、あるいはパームコンピュータやフィーチャーフォン など小型のコンピュータの機能を備えた端末を接続してデータのやりとりをしていた。
コンピュータ用語としての端末
コンピュータの端末の歴史
テレタイプ端末は端末装置としても利用可能
初期の端末は、本来は電信 に使われた機器である ASR-33 (右写真)のような電気機械式のテレタイプ端末 (TTY) であった。
IBMは汎用コンピュータのSystem/360 を1964年に発表、この入出力用装置としては、当初はパンチカード装置やTTYが用意されていた。
DECwriter
1970年にDEC がen:DECwriter というプリンタで印字する専用端末を登場させた。DECはプリンタ方式の端末のシリーズとしてDECwriter II(1974年- )、DECwriter III(1978年- )、DECwriter IV(1982年-)のリリースを続けた。IBMも1974年にSystem/360用にドットマトリクス・プリンター方式の端末IBM 3767 をリリースした。プリンタ方式の端末はテレタイプ端末よりは良くなり、コンピュータに長時間バッチ処理 をさせて、オペレータが不在の状態でも計算結果の文字出力を大量に残しておきたい用途で使うのには向いていた。だが、プリンタの印字速度でコンピュータとのやりとりの速度が制限されてしまうという欠点はあり、対話的にコンピュータを使う場合は紙に文字記録を残す必要性は低いので、ビデオ表示方式のものが普及してゆくことになった
IBM 2260
一方、1962年にはIBM がビデオ表示方式(CRT、ブラウン管 表示方式)の端末のIBM 2260 も発表していた。当時、アナログ方式の走査 線が走るブラウン管 の画面上に、デジタル方式のコンピュータの出力文字を表示させるということだけでも、技術的にはかなりハードルの高い挑戦であった。このころのビデオ表示端末は、多数のトランジスタ やダイオード などの電子部品を搭載した基板で作った論理回路 を使っている(当時、ICは一般的でなかった)。
IBM 3270 の後継機のIBM 3277このころの端末はモノクロ方式である。
1971年にはIBMがIBM 2260の後継機にあたるIBM 3270 を発表。
VT100
DECの端末
DEC は 1975年にVT52 を、1978年にはVT100 を発表した。これらは当時は「インテリジェント端末」と呼ばれ、今でもソフトウェアでエミュレートされて使われて続けている。これらが「インテリジェント」と呼ばれたのは、エスケープシーケンス を解釈してカーソル の位置や表示の制御を行ったためである。他にはWyse の様々な機種(Wyse 60 はベストセラーとなった)、Tektronix 4014 などがある。
1970年代末- 1980年代の端末の状況
やがてこのようなビデオ表示方式(CRT方式)の端末全般がビデオ表示端末 (VDT )と総称されるようになった。VDTはコンピュータからの出力をTTYやプリンタ方式よりはるかに高速に表示できるという利点があり、コンピュータと対話するように利用することが可能であった。
1970年代末から1980年代初め、DEC 、Wyse、Televideo 、HP 、IBM 、Lear-Siegler 、ヒース など様々な企業が端末を製造したが、これらの多くはコマンドシーケンスに互換性がなかった。当時の端末はメインフレーム に接続され、単色であり、緑色かアンバー(琥珀色)のスクリーンのものが多かった。通常、コンピュータとの信号のやり取りはRS-232C などシリアルポート を使うことが一般的であった。IBM のシステムでは、同軸ケーブル で接続し、SNA プロトコルで信号のやりとりをするものもあった。
テキスト端末
ビデオ表示のASCII 文字端末。写真はTelevideo社のModel925で、1982年ごろ製造されたもの。マイクロプロセッサ を使用している。
テキスト端末 とは、もっぱらテキスト(文字列)類の入力と出力だけを行う装置を指すための総称、分類用語である。文字・記号類はコンピュータ用語ではcharacter(キャラクタ)というのでキャラクタ端末 とも呼ばれる。決まった文字集合(キャラクタセット)しか表示できない。
上で説明したテレタイプ端末やVT100などはテキスト端末に分類される。
1970年代に登場した" ビデオ表示 " つまりブラウン管に出力する装置はビデオ表示端末 (VDT) と呼ばれたが、これもテキスト端末であり、文字・記号類しか表示できなかった。
1960年代や1970年代のテキスト端末は物理的な装置として存在しており、大型コンピュータなどの近くに設置されRS-232C などシリアルポート で接続されていた。
なお大型コンピュータの操作を行うための装置はもともとコンソール とも呼ばれていた(日本語訳では「操作卓」などとされていた)。
テキスト端末とタイムシェアリング
UNIX システムをタイムシェアリング方式で利用するため、並べられた端末の群(1978年)
1950年代末から1960年代初頭にかけてタイムシェアリング が開発され[ 3] 、一台の大型コンピュータを複数のユーザが同時に使用、つまり一台の大型コンピュータに多数の端末が接続されるようになり、コンピュータネットワークが発展してゆくことになった[ 3] 。
テキスト端末のリモート接続
1960年代ではリモート端末でも使われたのはRS-232Cで接続する装置で、テレタイプ端末などキーボードと印字機能を持った装置が一番主流で、他のタイプも含めると、主に次の2種が使われた。
Teletype Model 33: バラ打ち方式のテレタイプ端末で、データ通信のために改造されて使用された。
ASR-33 : 上のTeletype Model 33の改良版で、自動で紙テープに印字する機能を追加。
上述のようにDECが1975年にはVT52を、1978年にはVT100 をリリースし、リモート接続で なおかつビデオ表示方式で大型コンピュータに接続することもできるようになった。今日、PC上で動く「telnet クライアント」の多くは、1970年代末当時に最も典型的な端末となった DEC VT100 のエミュレーションを提供している。
1981年にはコロンビア大学 でkermit というプロトコルが、やはり回線経由で端末を接続するために開発された。
グラフィック端末
グラフィック端末は、テキストだけでなく画像を表示できる端末。グラフィック端末はさらに、ベクタースキャン 端末とラスタースキャン 端末に分類される。
ベクタースキャン端末は、ホストコンピュータの制御により、直接ブラウン管に直線などを描画する。通常の走査式のブラウン管と異なり、オシロスコープ のような仕組みになっている。そのため線は連続的に描画されるが、描画された線が残っている時間と描画速度との兼ね合いで、同時に表示できる線の本数(あるいは長さの総計)は限られていた。ベクタースキャン端末はコンピュータ史では重要だが、現在では使われていない。
現代のグラフィック端末は全てラスタースキャン 方式である。[ 注釈 1]
パーソナルコンピュータ登場後
1970年代後半にパーソナルコンピュータ (マイクロコンピュータ )が登場すると、その上で動くソフトウェア端末エミュレータ (ターミナルソフト)が使われるようになった。
OSにGUI が採用されるようになっても、コマンド行インタフェース やテキストユーザインタフェース のほうも生き残っている。テキスト端末は、ターミナルエミュレーションソフトとして生き残った。[ 注釈 2]
また多くのプログラミング言語 は標準入出力 としてテキストの入出力をサポートしている。
ターミナルソフトを動作させればPC眼を端末として使うことができる。このため、専用端末機の市場はPCの端末ソフトとの競争にさらされるようになり、どんどん縮小していった。
Linux やFreeBSD などのUnix系 オペレーティングシステムでは、
1つのコンピュータ上で複数のテキスト端末を提供する仮想コンソール が使われた。その後、端末エミュレータ の使用が一般化した。
端末エミュレータ は、GUIなOS上で動作するプログラムで、ウィンドウを開いてそのウィンドウをテキスト端末として利用できる。主な端末エミュレータ としては、Win32コンソールや xterm がある。Unix系 オペレーティングシステムでは、擬似端末 に接続される。モデム と共に使用することを前提とした特殊な端末エミュレータも存在する。例えば SSH クライアントなどもな端末エミュレータである。
テキスト端末上のアプリケーション
xterm 端末エミュレータ上で動作しているNano テキストエディタ。
テキスト端末で動作するアプリケーションとしては、まずコマンドラインインタプリタ あるいはシェル がある。これらはコマンドプロンプト を表示してユーザーにコマンド入力を促し、ユーザーがコマンドを入力する際には最後に Enter キーを押下する。シェルでは、そのコマンドの多くはそれぞれがアプリケーションである。
また、テキストエディタ も重要なアプリケーションの種類である。ディスプレイ全体を使い、テキストを表示し、ユーザーがそれを編集できるようにしてある。ワープロソフト も元々はテキスト端末で利用可能だったが、WYSIWYG 化と共にGUIが必須になっていった。
telnet や ssh は、遠隔のサービスと接続してローカルな端末から操作を可能にする。
プログラミングインタフェース
最も単純な形態では、テキスト端末はファイル のようなものである。ファイルへの書き込みが表示され、ファイルからの読み込みがユーザー入力を読み取ることになる。Unix系 オペレーティングシステムでは、テキスト端末に対応したキャラクタスペシャルファイル が存在する。
他に、特殊なエスケープシーケンス や制御文字 があり、プログラムから使える termios
システムコール がある。ncurses などのライブラリから使うのが最も容易である。さらに ioctl システムコールを使って端末固有の操作が可能である。
入出力以外の機能としてUnix系オペレーティングシステムではジョブおよびセッション管理があり、POSIX にて仕様が決められている。具体的には端末とセッションの関連付け[ 4] 、端末とジョブ(POSIXではプロセスグループ )の関連付けおよび端末を入出力に使おうとしているジョブの調停などがある。例として「ユーザがログアウトなどにより端末をクローズしたら、その端末上で実行しているすべてのプロセスを終了させる」というような機能がある。
技術
アプリケーションから端末を使う最も簡単な方法は、単にテキスト文字列を逐次的に読み書きすることである。出力したテキストはスクロール していくので、最近出力した部分(通常24行)だけが見えている。UNIX では通常入力テキストは Enter キーが押下されるまでバッファ されるので、アプリケーションが読み取るテキストは文字列として完全な形になっている。このような使い方の場合、アプリケーションが端末について詳しく知る必要はない。
多くの対話型アプリケーションでは、これでは不十分である。典型的強化としては、「コマンド行編集」(readline などのライブラリを使う)がある。また、同時にコマンド履歴にアクセスできるようにする場合もある。これらは対話型コマンドラインインタプリタ でよく使われる。
さらに対話的なものとして、フルスクリーン型のアプリケーションがある。この場合は、アプリケーションが全体の表示を完全に制御する。また、キー押下にも即座に反応する(Enter キー押下までバッファリングすることはない)。テキストエディタ 、ファイルマネージャ 、ウェブブラウザ などがこのモードを使う。さらに、テキスト表示の際の色や輝度も制御でき、アンダーラインをつけたり、点滅させたり、罫線素片 などの特殊な文字を表示させたりすることも可能である。
これらを実現するには、アプリケーションが通常のテキスト文字列だけでなく、制御文字 やエスケープシーケンス を扱う必要がある。それによって、カーソル を特定の位置に移動させたり、特定位置の文字を消去したり、色を変えたり、特殊な文字を表示させたり、ファンクションキー に応答したりといったことが可能になる。
ここで問題になるのは、端末や端末エミュレータ が各種存在することで、それぞれが自前のエスケープシーケンス を持っている。このため、特別なライブラリ (curses など)が作成され、端末データベース(Termcap や Terminfo )と共に作用して、端末の違いを吸収する役目を果たす。
端末の分類用語
(タイムシェアリングシステム の出現以降、対話処理を行うための端末として、よく用いられるものの例を示す。
ダム端末 (dumb terminal )
ダム端末という用語は、その文脈によって様々な意味で使われる。
RS-232 で接続する端末についての文脈では、ダム端末とは解釈できる制御文字が(CR、LF などに)限られている端末を言う。ダム端末はエスケープシーケンス を解釈できないため、行の消去、画面の消去、カーソル 位置制御といったことができない。つまり、テレタイプ端末 と同程度のことしかできない。Unix系 システムではこのようなダム端末が今でもサポートされており、環境変数 TERM を dumb と設定することでダム端末と認識する。「インテリジェント端末」は、この文脈ではダム端末でないテキスト端末を意味する。
より広い意味では、キーボードとビデオ表示装置やプリンターを備えた装置で、RS-232 接続でホストシステムと通信し、ローカルにデータを処理したりプログラムを実行したりしないものを全てダム端末と呼ぶことがある。この意味では、パーソナルコンピュータ も、ディスクレスワークステーション も、シンクライアント も、X端末 もダム端末と言える。
また、モノクロのテキスト表示しかできない端末装置をダム端末と呼ぶこともある。さらに、キーボードから入力された文字を一文字ずつホストに送信する端末装置をダム端末と呼ぶこともある。
インテリジェント端末
大型のコンピュータに対する処理だけでなく、それ自体でテキストデータ編集や印字など各種機能を処理できる端末。フロッピーディスク は当初この種の端末に内蔵する補助記憶装置 として開発された。1980年代 以降はパーソナルコンピュータ などで実現可能となった。
専用端末
銀行のATM(現金自動預け払い機 )、CD(現金自動支払い機 )、販売店のPOS端末 、レストランでウェイターが使用するハンディターミナル なども端末の一種である。
仮想端末
1台のコンピュータで複数の端末としての機能を持たせるもの。また、端末と同様の機能を実現するソフトウェア。この場合、コンピュータ本体にビデオ表示機能を組み込んであるワークステーション 、パーソナルコンピュータ (PC) やPCサーバ で用いられる。端末エミュレータ 。
X端末
マルチメディアステーション
コンビニエンスストア におかれている端末。MMSと略されることが多い。別名「マルチメディアキオスク」。
ビデオ表示端末
ビデオ表示端末 (英 : Video Display Terminal , VDT)はブラウン管 や液晶 などのビデオ ディスプレイ を表示に用いる端末 である。もともとはテレタイプ端末 のような紙に印字する機構を備えた端末と対比するために用いられた用語であるが、その後、このVDTを用いて長時間作業することで引き起こされる身体・精神的諸症状を「VDT症候群」と呼ぶようになり、「VDT」は労働衛生管理の分野で用いられる用語、行政用語、裁判用語、企業内の労務管理の用語などとして使われるようになった。
関連項目
個別の有名な端末(規格)
脚注
^ 今日のディスプレイ は、ラスター方式で画像も文字も表示している。テキストも実際には画像として表示している。
^ なおIBM PC にはグリーンディスプレイが付属していたが、これは端末ではない。PCに付属するディスプレイは文字生成ハードウェアを持たず、PC内のディスプレイカードで生成されたビデオ信号を表示しているに過ぎない。パーソナルコンピュータはキーボード とディスプレイ を接続して使うが、パーソナルコンピュータのキーボードやディスプレイはもはや端末とはいわない。
^ a b c d e f IT用語辞典 e-words「端末」
^ IT用語辞典e-words【端末】
^ a b Britannica, time-sharing.[1]
^ この意味にあっては、端末を特に「制御端末」と呼ぶ。
外部リンク
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