氷上回廊氷上回廊(ひかみかいろう)は、兵庫県の旧氷上郡(現 丹波市)付近を南北に通る低地帯の呼び名。日本列島の脊梁を成す中央分水嶺を、わずか標高95m内外で通り抜けられる、山地に挟まれた「回廊」地形である。 太古の昔から、南北の生き物が交流するルート(回廊)であることから、氷上回廊と名づけられた。 瀬戸内海に流れ込む加古川水系の高谷川と、日本海に流れ込む由良川水系の黒井川(竹田川を経て由良川に注ぐ)の源流域が、丹波市氷上町石生(いそう)付近で近接しており、雨水を二手の水系に分ける場所として「水分れ(みわかれ)」と呼ばれている(現在、この付近に水分れ公園が整備され、丹波市立氷上回廊水分れフィールドミュージアム(旧・丹波市立水分れ資料館)が設置されている)。 周辺には旧石器時代後期の遺跡も多く、大型動物が季節移動で通る良好な狩場であったと推定されている。 また、氷上回廊の地形は人間にとっても便利な交流路であったと考えられ、古代、近世以降の遺跡も多い。現代に至っても、福知山線・国道175号(氷上回廊の付近には「水分れ街道」の別名がある[1])・国道176号といった交通路が氷上回廊を抜けて南北を結んでいる。 氷上回廊と生物多様性氷上回廊が日本の生物多様性に与えた影響は、大きく分けてふたつある。 ひとつは、この地域の河川が昔はしばしば氾濫して流路を変えていたため(河川争奪)、日本海側と太平洋側の両水域の淡水魚などが入り混じり、分布を伸張するルートとなってきたことである。 もうひとつは、内陸域で最も低い陸上の移動ルートであったことから、日本海側の多雪地に適応した北方系の生き物と、温暖湿潤な気候に適した南方系の生き物など、南北それぞれの気候風土に適応した陸上生物が、ここを通り抜けて分布を拡大してきたことである。地球規模の気候変動に伴う寒冷期には北方系の生き物が南進し、逆に温暖期には、南方系の生き物が北進したと考えられ、現在、この氷上回廊を挟む両側の地域に、それぞれの証拠と考えられる植物分布などが報告されている。また、氷上回廊は、現在も、渡り鳥などの季節移動する生き物たちの移動ルートになっていると考えられており、現代の地球温暖化に際して、南方系の生き物の北上ルートになる可能性も指摘されている。 関連施設
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