この項目では、核図表という概念について説明しています。実際の核図表については「核種の一覧 」をご覧ください。
上図は見やすいように三つに切った核図表。 下はその元の図。
核図表 (かくずひょう)とは、陽子 数と中性子 数を座標軸 にとった平面上に、原子核 の核種 を配置した図 である。イタリアの物理学者エミリオ・セグレ にちなんでセグレチャート とも呼ばれる[ 1] 。
座標(0, 1)を1 H とし、X軸に中性子数、Y軸に陽子数を取り、各マスに核種(質量数 などを付した元素記号)を記入するのが一般的で、既に発見された核種だけでなく、未発見核種を含めることもある。なお、wikipediaの核種の一覧 ではX軸に陽子数、-Y軸に中性子数を取っている。核図表は1934年にクルト・グッゲンハイマーによって発表され[ 2] 、1935年にジョルジオ・フェーア[ 3] 、1945年にエミリオ・セグレとグレン・シーボーグ によって拡張された。
核図表は周期表 と異なり元素の化学的な性質はほとんど読み取れないが、核の安定性や陽子・中性子数に基づく原子核の規則性を掴みやすい。元素合成 等を考える上で重要となる。
核図表の要素
基本要素以外にも、核種に関わる要素が付記される事が多い。
半減期 、崩壊モード
安定核を強調し、不安定核は概略の半減期や崩壊の種類で色分けされる。
魔法数 [ 4]
安定・長寿命核が集中する、特定の陽子・中性子数。核子的に閉殻 (周期表 における希ガス と同様の概念)で、同位体 や同中性子体 が縦横に並ぶ線として現れる。
第一励起準位
核を励起させるのに必要なもっとも低いエネルギー。これで色分けすることにより、魔法数が明確に現れる。[ 5]
結合エネルギー
特に、Z軸に結合エネルギーの大きさを取って三次元グラフにしたもの[ 6] をハイゼンベルクの谷 と呼ぶ。これは、安定同位体に沿って鉄 が最も低い谷の形を示す。
ベータ安定線
ある質量数において結合エネルギーが最大となる陽子数(エネルギー的に最も安定)を結んだ線。これより陽子が多ければ陽電子放出 をし、中性子が多ければベータ崩壊 をする。ハイゼンベルクの谷を流れる川に例えられる。
陽子ドリップライン (英語版 )
陽子に対して中性子が少なすぎると、陽子の分離エネルギーが小さくなる。これがゼロとなる核種を結んだ線で、その外側では核力 によって陽子を束縛できず、核種が存在できない。未発見核種を含む図では、中性子が少ない側の縁となる。
中性子ドリップライン
陽子に対して中性子が多すぎると、中性子の分離エネルギーが小さくなる。これがゼロとなる核種を結んだ線で、未発見核種を含む図では中性子が多い側の縁となる。中性子が多くても核は不安定になりにくく、陽子ドリップラインよりも広い。
安定の島
中性子、陽子ともに魔法数であるため安定と予測されている超重元素 の存在位置。
脚注
^ J. Byrne (2011). Neutrons, Nuclei and Matter: An Exploration of the Physics of Slow Neutrons . Mineola, New York: Dover Publications. ISBN 978-0486482385
^ Kurt Guggenheimer. Journal de Physique et le Radium 5 (1934) 253
^ Giorgio Fea. Il Nuovo Cimento 2 (1935) 368
^ 2014年版核図表 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター
^ 重いカルシウムで新しい「魔法数」34を発見 -原子核物理学の夢の1つ「安定原子核の島」到達の手掛かりに-
理化学研究所プレスリリース
^ 核図表【ハイゼンベルクの谷-立体核図表】 理化学研究所 仁科加速器研究センター
関連項目
外部リンク
単位 測定 放射線の種類 物質との相互作用 放射線と健康
法律・資格 関連