松虫 (能)
あらすじ津の国阿倍野の市で酒を売る男(ワキ)の元に毎夜若き男(前シテ)と友人(ツレ)が訪れ、酒宴をなす。不思議に思い、その言の葉の「松虫の音に友を偲ぶ」というその謂れを問うと、男は「昔阿倍野の松原を、ある男が友人と連れ立ち通った折、松虫の音が面白く聞こえるのに、友人はその音にひかれ行き、いくら待っても帰らず、不審に思い尋ね行くとその人は草の中で空しくなくなっていた」という故事を語り、今もその松虫の音に誘われ、友を偲び現れる、私こそがその男の亡霊だと言い立ち去る(中入り)。また、里の男一人(アイ)が現れ、酒売りに、昔この里でこのようなことがあった、と、先ほどの若い男の語ったことと同じ物語を述べる。さても不思議なことと、市人が夜すがらに弔っていると、その弔いがうれしいと、男の亡霊(後シテ)が立ち現れる。亡霊は昔の友を懐かしみ、ともに花鳥風月を愛で遊んださまを語り、舞を舞い、やがて明け方の草の原に消え、後には虫の音ばかりが残る[2](詞章の要約)。 登場人物
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