松尾 豊 (まつお ゆたか、1975年[1] - )は、日本の工学者。東京大学大学院工学系研究科人工物工学研究センター/技術経営戦略学専攻 教授[2]、東京大学新世代感染症センター メンバー[3]。日本ディープラーニング協会理事長、ソフトバンクグループ社外取締役[4]、内閣府「AI戦略会議」座長[5]、新しい資本主義実現会議有識者構成員を務める[6]。
概要
香川県坂出市出身[2]。専門分野は、人工知能、深層学習、ウェブ工学、ソーシャルメディア分析。AI、ウェブ工学の研究などを軸とし、実社会への応用を意識して活動する。ソーシャルメディアから現実世界の動向を探る「ソーシャルセンサ」の概念を世界で初めて提唱した[7]。
人物
国内でディープラーニングの普及、産業活用に貢献した。叔父に東京大学名誉教授(建築学専攻)の松尾陽[8]、国際電気通信連合事務局長を務めた内海義雄がいる。
著作に『東大准教授に教わる「人工知能って、そんなことまでできるんですか?」』(2014年)、『人工知能は人間を超えるか』(2015年)など。
産学連携への取り組み
松尾は産学連携に積極的な研究者であり、現在は国の研究費を受け取っておらず、企業からの資金のみで研究費を賄っている。トヨタの子会社から200万円ほどの研究費を受け取ったのを契機に、現在は年間3億円ほどを企業から安定して受け取っていると話した。自身の経験から「発想を変えれば、国立大学は今の百倍、一千倍は稼げる」とも述べている[9][10]。
また、「ビジネスで儲けて、その利益で研究に投資をするというサイクルをつくり、結果的にAI開発を押し進めましょう」という話から逸れてしまうため、シンギュラリティ論には言及しなくなったと述べており、「あまり強いAIの話題に近づきたくない」として、産業で収益を出して、その利益から研究開発に多くの予算を回すことが先決だとしている[11]。
松尾研では学生起業を推奨しており、深層学習の技術だけでなく、ビジネスリサーチのやり方も教えている。注目されている海外企業への視察も08年から実施、GoogleやFacebookのほか、松尾と人脈のあるシリコンバレーのスタートアップを訪問するなどの活動をしている[12]。松尾研にはコンサルティングファーム出身のスタッフがおり、ビジネス面での交渉を担当させている[9]。2021年からは「AI経営」という寄付講座をPwCの支援の下で立ち上げた。松尾研発のスタートアップも多く、うまくいっているものだけを挙げても、株式会社DeepX、READYFOR株式会社、株式会社ACES、株式会社Ollo、株式会社ELYZA、bestat株式会社、燈株式会社などがあり、研究室初のスタートアップで10社以上、関連するスタートアップを含めると30社近くに上る。最近では「本郷バレー」の一部として、記事などでよく取り上げられることもあるという[10]。
略歴
- 1993年3月 香川県立丸亀高等学校卒業[2]
- 1997年3月 東京大学工学部電子情報工学科卒業[2]
- 1999年3月 東京大学大学院工学系研究科電気工学専攻修士課程修了
- 2002年3月 東京大学大学院工学系研究科電子情報工学専攻博士課程修了[2]、博士(工学)[13]
- 2002年4月 産業技術総合研究所研究員
- 2005年8月 スタンフォード大学言語情報研究センター(CSLI) 客員研究員
- 2007年10月 東京大学大学院工学系研究科 准教授
- 2014年4月 東京大学大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 特任准教授
- 2019年4月 東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター/技術経営戦略学専攻教授、システム創成学科PSIコース コース長
- 2019年6月19日 ソフトバンクグループ取締役[14]
- 2022年10月 東京大学新世代感染症センター メンバー
- 2023年4月 東京大学大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 専攻長[6][15]
学会活動他
学会関係
行政関係
文化活動
- 第5回 日経「星新一賞」審査員(2017年)
- 映画『AI崩壊』AI監修(2020年)
著書
受賞
- 第1回JTS学術賞, 松尾 豊, 一般社団法人 Japan Treasure Summit(代表理事 小宮山 宏), 2019
- 2018年度 情報処理学会論文賞[25], 鈴木 雅大, 松尾 豊, 「異なるモダリティ間の双方向生成のための深層生成モデル」, 2019
- スーツ・オブ・ザ・イヤー2018 イノベーション部門受賞[26],松尾 豊,学術的な領域にとどまらず実社会への働きかけに果敢に挑み続けていることに対して,2018
- 香川県 かがわ21世紀大賞[27],松尾 豊, 人工知能分野での活躍に対して,2018
- 文部科学省 大学発ベンチャー表彰2018 文部科学大臣賞,株式会社PKSHA Techonology,東京大学 松尾豊(支援大学),2018
- チェンジメーカー・オブ・ザ・イヤー 2016[28],松尾 豊,人工知能およびウェブ工学の分野における活動に対して,2016
- ビジネス書大賞 審査員特別賞[29],「人工知能は人間を超えるか」(松尾 豊著)(角川),2016
- 日刊工業新聞社賞,日本オフィス家具協会,「人工知能は人間を超えるか」(松尾 豊著)(角川),2016
- ITエンジニア本大賞2016 ビジネス書部門大賞[30],「人工知能は人間を超えるか」(松尾 豊著)(角川), 2016
- 2015年度 人工知能学会 研究会優秀賞,「株式掲示板におけるユーザ行動異常検知を用いた相場操縦発見手法に関する研究」,宮崎 邦洋,松尾 豊, 2016
- 2015年度 公益財団法人 大川情報通信基金 大川出版賞,「人工知能は人間を超えるか」(松尾 豊著)(角川), 2015
- 日経ビジネス 「次世代を創る100人」[31],2015年12月28日号
- 文部科学省 科学技術・学術政策研究所 「科学技術への顕著な貢献2015(ナイスステップな研究者)」,松尾 豊, 2015
- Rakuten Technology Award 2015, 人工知能における思想的リーダーとしての活動に対して, 松尾 豊,2015
- 第12回(2013年) ドコモ・モバイル・サイエンス賞 社会科学部門,松尾 豊,「ウェブマイニングによる社会観測とその活用に関する研究」, 2014
- AERA 「日本を突破する100人」,2014年12月29日・1月5日合併号
- 2013年度 人工知能学会 功労賞,松尾 豊, 編集委員長としての貢献に対して,2014
- AERA 「日本を立て直す100人」,2012年1月2・9日合併号
- 2011年度 人工知能学会 現場イノベーション賞,「人物検索システムの研究開発および実用化の取り組み」,松尾 豊,石田 啓介,友部 博教,岡 瑞起,アグチバヤル アマルサナー,濱崎 雅弘,森 純一郎,ダヌシカ ボッレーガラ,大向 一輝,松島 克守, 2012
- 2007年度 情報処理学会 長尾真記念特別賞, 松尾 豊,「Webマイニングによる社会ネットワーク抽出に関する研究」, 2008
- 2006年度 人工知能学会 創立20周年記念事業賞,「AI若手研究者のためのキャリアデザイン能力育成事業:幸福な研究人生に至る道」,山川 宏,市瀬 龍太郎,太田 正幸,加藤 義清,庄司 裕子,松尾 豊,2007
- 2002年度人工知能学会論文賞,「語の共起の統計情報に基づく文書からのキーワード抽出アルゴリズム」,松尾 豊,石塚 満,人工知能学会誌,Vol.17,No.3, pp.213-227, 2002
出演番組
インキュベーション
現在、松尾豊研究室では、AIベンチャーのインキュベーションに取り組んでおり[97]、指導学生がAIベンチャーを設立している。
起業した指導学生
脚注・出典
外部リンク