接中辞(せっちゅうじ、英: infix)とは、接辞の一種で、語幹の中に割り込むもの。オーストロネシア語族の言語によく見られる。グロス表記では、角括弧(⟨xxx⟩)で表記される。
例
オーストロネシア語族
- タガログ語で sulat は書くことを意味する名詞である。これに接中辞 ⟨-um-⟩ [1]を加えたsumulat は書くという意味の動詞である。
- 古代ジャワ語では接中辞 ⟨-a-⟩ を加えて未来形を表す。
オーストロアジア語族
- クメール語では កើត kaət (生まれる)に対する កំណើត k-ɑmn-aət (誕生・起源)のように接中辞を使って名詞を作る。ただし、現代では造語性は失われている。⟨-amn-⟩を加えて名詞を表す。
中国語
- 晋語のいくつかの方言で接中辞の ⟨-(ə)l-⟩が現れる(嵌L詞)。北京語でいう児化にあたるともいうが[2]、必ずしも名詞化するわけではない。
アラビア語
- アラビア語の動詞で再帰形にあたる第八派生形は、نظر naẓara (見る)に対して انتظر ('i)n-t-aẓara (待つ)のように接中辞 ⟨-t-⟩ を使用する。なお 'i- は語頭の子音連結を避けるための音挿入(prothesis)。
インド・ヨーロッパ語族
- ラテン語の linquō (残す)に対して liquī (残した)のように、現在語幹に接中辞 ⟨-n-⟩ があらわれる動詞がある。
スー語族
- ラコタ語では人称接辞が接中辞としてあらわれることがある。wicasa (彼は男である)に対して wi-ma-casa (私は男である)[3]。
脚注
関連項目