手技療法手技療法(しゅぎりょうほう)は、古代より行われてきた手で行う療法。薬やサプリメント、器械や道具、鍼、灸などを一切使わずに素手だけで行う。その一部は明治から昭和期に療術とも呼ばれていた。「触る・なでる・揉む・叩く・擦る・押す・身体の他動的操作および自動運動とその誘導」など皮膚上からの物理的刺激・心理的暗示により、筋肉・関節など皮下に存在する各組織に影響を及ぼす治療法をさす。 日本では様々な手技療法が行われている。経験的に民間で行われている伝統的な手技療法から、国家資格により定められている医業類似行為の按摩、マッサージ、指圧、柔道整復術並びに医療従事者の業務である理学療法まで、多くの種類がある。 手技療法一覧
→「資格 § 国家資格」、および「日本の医療・福祉・教育に関する資格一覧」も参照
民間療法
→「Category:手技療法」および「マッサージ § 各種マッサージ」も参照
日本に導入検討中の海外資格タイ王国とのFTA(自由貿易協定)による「タイ・スパ・サービス」に伴う施術が日本国内で可能であるか検討を開始する予定とされていたが、関連団体から「無資格問題が未だに解決できていない」という現状の指摘を受け、慎重な姿勢をとらざるを得ない状況にある。カイロプラクティックも同様[要出典]。 手技療法のエビデンスカイロプラクティックについては、背部、頚部および肩の痛みをはじめ、喘息、手根管症候群、繊維筋痛、頭痛などの様々な病態に対する脊椎矯正に関する研究が行われている[1][2]。腰痛に注目した研究が多く、一部の人には脊椎矯正が腰痛に有効であるということが示されている[1][2]。2010年に実施された種々の病態に対する手技療法の科学的根拠に関するレビューによると、脊椎矯正(またはモビライゼーション)は、背部痛以外にも、偏頭痛や頚性(頚部に関連した)頭痛、頚部痛、四肢関節の症状やむち打ちによる障害など、数種類の病態に対しても効果が認められるようである[1][2]。また、このレビューでは、脊椎矯正(またはモビライゼーション)が有効ではないと考えられる病態(喘息、高血圧および月経痛など)や、科学的根拠が十分ではない病態(繊維筋痛、背部痛、月経前症候群、坐骨神経痛および顎関節症など)も明らかになった[1][2]。 脊椎矯正の副作用には、一過性の頭痛、疲労感、施術部位の不快感などがあり、脳卒中、馬尾症候群(下部脊椎管において神経が圧迫された状態)、椎間板ヘルニアの増悪などの重大な合併症が数例報告されている[1][2]。これらの合併症と脊椎矯正との明確な因果関係は判明していない[1][2]。今後の研究でカイロプラクティックの安全性を検証することが求められている[1][2]。 マッサージ療法に関する多くの科学研究には、予備検討や互いに矛盾するものも多い[3][4]。科学的根拠(エビデンス)の多くは、痛みやさまざまな病気と関連する他の症状に対する効果を示している[3][4]。科学的根拠(エビデンス)の多くは、効果が短期的であり、継続して効果を得るにはマッサージを受け続ける必要があることを示唆している[3][4]。 さまざまな病気に対するマッサージの効果が研究されてきた。広範囲に研究されてきたテーマは、「痛み」「がん」「メンタルヘルス」「線維筋痛症」「頭痛」「HIV/AIDS」「乳児のケア」である[3][4]。 マッサージ療法は、訓練を受けた施術者によって行われればリスクはほとんどないと考えられているが、施術者は妊娠中など特定の健康状態には注意を払う必要がある[3][4] 平成22・23年度厚生労働省科学研究費補助金「地域医療基盤開発推進研究事業」(研究代表者:津谷喜一郎)・平成26年度厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』で、鍼灸、あんま・マッサージ・指圧(あマ指)のエビデンスレポートがまとめられている[5]。 整体は日本の手技療法であるが、理論・技法共に統一されておらず、教育レベル・施術レベルもバラバラの状態である。臨床研究はほとんど行われておらず[6]、また行われた場合も、統一された手技療法ではないため、整体全体に適用することはできない。 法律による規制日本の国家資格者側は、「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」(昭和22年12月20日公布)において、あん摩マッサージ指圧師免許もしくは医師免許(共に国家資格)がなければ、人体に「触る・なでる・揉む・叩く・擦る・押す・身体の他動的操作および自動運動とその誘導」など総ての手技療法行為を業として、又は金品の授受が無くとも継続的に行うことは出来ない。違反した者には50万円以下の罰金が科せられる等を主張している。 しかし、厚生労働省の見解はヒトに害の無い限り取り締まりの対象とは出来ないとしている。[要出典] 尚、「○○式・○○流」などの術式・流派についての表記は、按摩師、マッサージ師、鍼灸師に限りあん摩マッサージ指圧師法第7条第2項に抵触する。 ここでいう「業」とは、「不特定多数に対して、反復継続の意思をもって施術を行うこと。その対価の授受は問わない」と定義されている。 柔道整復師は、柔道整復師法(昭和45年4月14日公布)により治療に伴うマッサージ行為が限局的に認められているが、そのほとんどは単なるマッサージ行為のみのあん摩マッサージ指圧師法違反に等しいとする声がある。 厚生省のあん摩マッサージ指圧師とは違う柔道整復師のマッサージについての見解では、
との回答がある。[7] 理学療法士は、理学療法士及び作業療法士法(昭和40年6月29日公布)により病院もしくは診療所において、又は医師の具体的な指示を受けてのみマッサージを行なう事が出来る。 助産師は、妊婦又はじょく婦に対して保健指導の範囲で行なうものであれば乳房マッサージを行う事ができる。 看護師は傷病者又はじょく婦に対して療養上の世話又は診療の補助の範囲で行なうものであれば乳房マッサージを行う事ができる。(ただし、法附則第五十二条第四項に規定する者を除く)[8] 東京証券取引所はリラクゼーション業に関しては違法・合法が明確でないとして、上場を認めなかった。[9]
無資格マッサージ問題と手技療法→詳細は「無資格マッサージ士問題」を参照
経緯昭和22年に「あん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法」が制定、翌、昭和23年に同法は施行された。
あん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法の施行後は、経過措置により昭和23年2月以前に届け出ていた者に限り、昭和30年12月31日までの期限を設けて療術の営業が許されていた。だが、その裏で施行当時に12916名だった昭和23年2月以前に届け出ていた療術業者が年々増加し、発覚した昭和28年には4万人に達するという出来事が発生していた。 そして、昭和29年。8万人にまで上った療術業者、医師等は「療術師法」制定を目指して一大運動を展開した[11]。 だが、当時の医師、あん摩師などの医療者は療術師法制定に反対の立場であった。[12] だが結局、全国鍼灸按マッサージ師連合会の断食闘争などによる必死の徹底抗戦によって、昭和30年7月30日。原案通り法案は可決され単独立法化は阻止された。 しかし、療術業者、療術学校の関係者からは「療術は按摩ではない、按摩にはさせられない」という強い反発があったため、業権に関する抗争をこれまで100年に渡り、面々と繰り返していた。 療術師法制定反対運動の決着がついた後、特例により、昭和23年2月以前に3カ月以上、業を行って届出をしていた者に対して、昭和31年1月1日~昭和33年12月31日の間に講習会が開催され、修了者に「あん摩師試験」が行われた。 その後、昭和33年には更に3年間の猶予期間が設けられたが、昭和35年1月、最高裁判決により「医業類似行為を業とすることを禁止処罰するのも人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限局する趣旨と解しなければならない」旨の判断が示された。 厚生省は昭和39年、法律第120号をもって、先の法律を改正、「既得権者の療術行為は全面的に認める」ものとし、同時に「新規開業等についての資格条件、位置づけなど、速やかに方針を確立、明示する」ことになった。 その後、厚生省医務局は、療術を行う上で、患者の身体生命に危害を及ぼすことのないようにとの配慮から、昭和54年7月以降、講師を派遣するなど治療師の教育に積極的な姿勢で臨むことになった。 1990年代には、全日本鍼灸マッサージ師会は会報のタイトルを「鍼灸手技療法斯界通信(現在は『月刊 東洋療法』)」に改め、筑波大学附属視覚特別支援学校も鍼灸マッサージ師のための職業課程を理療科から鍼灸手技療法科に改めるなど、とくに視覚障害者が関与する現場では、あん摩・マッサージ・指圧を統合して『手技療法』と呼ぶ動きが出ていた。手技療法の名称は元来、療術師が使っていた呼称である[13]。 健康被害問題民間療法は、「人の健康に害を及ぼす虞のない業務行為」でなければならないので、健康被害の発生はありえないとされるが、もし事故が発生した場合、当該民間療法が『人の健康に害を及ぼす恐れのある医業類似行為』であることを事故の発生によって立証してしまう(=違法行為になる)ため、最高裁判例[14]により、その民間療法は以後、禁止処罰の対象になる。 通常は医師法違反で処罰される事になるが、場合によっては刑法(業務上過失致死傷罪)[要出典]により処罰される可能性がある。 民間療法の業務行為による「人への健康被害」を補償するとうたう賠償責任保険が販売されているが、保険業法第5条第3号ハにより、公の秩序を害する行為を助長、誘発する保険契約はできない。よって違法施術(健康被害が発生した施術が違法行為であることは前述のとおり)による健康被害に対しては保険金は降りない。 医療者サイドの主張
脚注
関連項目外部リンク厚生労働省 国民生活センター 法人団体(国家資格者による) その他・民間
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