寝床

寝床(ねどこ)は古典落語の演目[1]。別題に寝床義太夫(ねどこぎだゆう)、寝床浄瑠璃(ねどこじょうるり)、素人義太夫(しろうとぎだゆう)、素人浄瑠璃(しろうとじょうるり)[1]。原話は、嘉永5年板の『醒睡笑』や安永4年の笑話本『和漢咄会』の一遍『日待』など、多くの江戸小咄に見られる[1]。元々は『寝床浄瑠璃』という上方落語の演目で、明治中期に東京へ移入された[1]

あらすじ

ある長屋の大家は良い人だが、義太夫語り(義太夫節)が大好きで人に聞かせたがるが下手くそという欠点があった。義太夫の会を開いて、長屋の店子たちを呼んでも、下手な義太夫を聞きたくない為、誰も理由をつけてやってこない。仕方がないので今度は主を務める店の番頭以下、使用人たちに聞かせようとするが仮病を使い、聞きたがらない。しかし丁稚の定吉だけは仮病を使おとしたが、主に「定吉、お前はどうなんだ?」と問われて「町内を回って疲れた」と言うが、主は「ご苦労」と言うだけで義太夫を聞かなくて済む事にはならず体調を問われて、「因果に丈夫」と言うと「因果に丈夫とは何だ」と強く言われて、泣きなから「分かりました。あたしが聞きますからお語り下さい」と言った事から「私の義太夫聞きたくないから病気になったり仕事を作ったんだろう?」と言い、様々に主の義太夫を貶すと、自分の義太夫語りが嫌がられていると気づいた主人は機嫌を悪くし、「長屋の連中には、私の義太夫を聞きたくないなら出ていく様に言って、義太夫の分からない者には貸さない。長屋は今度から義太夫の好きな人だけに貸すから」と全員出て行ってもらう、使用人たちは全員暇を出すと言って不貞寝してしまう。それは不味いと、再び店の者が町内を回り、旦那が義太夫を聞きたがらない事に怒ってしまった事とそれにより店子には長屋から出て行く様に言われた事を伝える。しかしどうしても下手な義太夫が聞きたくないので困った店子と使用人たちは相談しあい、酔えば下手な義太夫も気にならなくだろうと義太夫を聞くことを決める。番頭に皆が義太夫を聞きたがっているとおだてられると、主人は「そんなに聞きたいならやるか」とすぐに機嫌を直し、酒や料理を用意して使用人たちの部屋で義太夫の会を開く。

当初の打ち合わせ通り、みな主人の義太夫をよそに酒を飲んで酔っ払うが、そのまま寝てしまう。熱弁していて周囲の状況に気づいていなかった主人も、静かになった為、これは義太夫を熱心に聞いてるなと思い、どんな様子かと客の様子を見ると客たちが寝ている事に気づき、番頭を起こして「何でお前が寝てるんだ。客が寝てたら起こすのがお前の役目だろう?」と言い再び機嫌を悪くするが、唯一、丁稚の定吉だけしくしくと泣きながらも起きていることに気づく。きっと自分の語りに感動したに違いないと、どこが良かったかと声をかけるが、定吉はこれを否定し、自分だけ寝ることができず泣いていると答える。どうして寝ることができないのかと問われて、定吉は言う。

「旦那様がいる場所が私の寝床です」

脚注

注釈

出典

  1. ^ a b c d 東大落語会 1969, p. 356, 『寝床』.

参考文献

  • 東大落語会『落語事典 増補』(改訂版(1994))青蛙房、1969年。ISBN 4-7905-0576-6