実習助手実習助手(じっしゅうじょしゅ)とは、実験または実習について、教諭の職務を助ける(学校教育法第60条第4項)ことを職務とする学校職員のことである。実習助手は、高等教育を行う学校(大学など)における助手や助教とは性質が異なる。 概要実習助手については、学校教育法の「第4章 高等学校」および「第4章の2 中等教育学校」に「実習助手」という学校職員の記述がある。これは、後期中等教育を行う高等学校や中等教育学校において、特に実習助手の配置に対する需要があると考えられて規定されているものであり、小学校や中学校などに実習助手を置くことも可能である。 学校職員で教諭及び実習助手をまとめて示す時、「教員」の語を使用することがあるが、これは必ずしも適切とはいえない。「教員」は法令によって幅はあるものの、概ね教頭、教諭及び講師(教育公務員特例法)と定義されており実習助手は含まれない。よって教諭、実習助手をまとめて示す場合は「教職員」を使用するほうが望ましい。(ただし、教職員と言う場合は、学校事務職員や学校用務員など全ての職員を指すことになる。)ただし、公立学校の場合、教育職として採用されることがほとんどで、学校教育法第9条に該当する者は実習助手にはなれない。 高等学校の実習助手学校教育法においては「実習助手を置くことができる」とされており、法律上、実習助手の配置は任意である。しかし、文部科学省令である高等学校設置基準によれば、実習助手を置かなければならないとされている。 ただし、文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課は、実習助手について、学校教育法上、置くことができる職として規定されており、これらの職は、学校における指導体制等を勘案して置かれる職で、実験や実習等において教諭を補佐して行う指導など、指導上の必要に応じて相当数を置くものとしている。 実習助手には、教員免許状がなくてもなることが出来る。ただし、実習助手となる前から教員免許状を取得している者や講師登録者で臨時実習助手となる者も多い。学校によっては、実習助手にも進路指導や生徒指導など教諭・講師に対等な職務を担当させるところもあるため、実習助手が教員免許を取得することは指導の基礎を習得するために有意義と考えられる。 採用試験教諭の採用候補者を選考する教員採用試験同様、実習助手にも採用試験が実施されている。試験の呼称は自治体ごとに異なる。なお、自治体によっては毎年実施されるとは限らず、実施される場合でも毎回同じ学科であるとは限らず、年度ごとに特定の学科のみ募集する形態が多い。また、自治体によっては長く募集しておらず採用試験も当分行っていないところもある。 受験の条件として、募集学科ごとに年齢・学歴の制限があるが、教員免許状を必要としないことから、免許の有無によらず様々な受験者が挑戦する。ただし、既に教員免許を受けている人の受験も多い。 専門学科・総合学科における実習助手農業に関する学科をもつ課程では実習助手の数は「当該学科の数に2を乗じ、当該学科の生徒の収容定員が681人以上の課程については当該乗じて得た数に1を加え」て算定した数を合計した数と決められている。 (公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律第11条第2項) また、国公立の高等学校において産業教育に従事する教員に対しては「産業教育手当」が支払われるが、その支給規則のなかで支給を受ける実習助手の職務について以下のように規定されている。
普通科、商業科における実習助手高等学校の普通科や商業科においても実習助手が置かれているが、産業教育に関わる学科の場合と異なり「産業教育手当」は支払われない。定数は、3学年合わせた学級数が25以上の学校では2名、24以下の学校では1名となっている。また学校ごとの裁量に応じて職務範囲が決められる。主な職務範囲は次のとおり。
ただし、実験・実習に限定せず「教諭の職務を助ける」という部分が拡大解釈され、上記いずれかの職務を軸としつつ、それに加えて主任・主事に着かないことを除いて、教諭と同等な校務分掌・部活動(主顧問となる場合もある)などの職務を任されているのが現状である。そのため、教員免許を所有しない実習助手であれば、教員としての基礎知識を持たない状態で生徒指導や進路指導の対応を求められることがある。あるいは、総合的な学習の時間を教諭・講師らと対等に担当する場合もある。そのことが、教員免許状を必要としない実習助手が教員免許状取得を意識する動機となる場合が少なくない。 なお、実習助手の多くは幅広い職務範囲が任されるが(上記に挙げた全てを任される場合もある)、逆に進路指導など教科以外の特定業務の専任とされる場合もある。普通科における実習助手の職務範囲は学校ごとの差異が大きく、専門学科ほどの専門性を発揮する機会が少ない場合が多い。 免許取得・任用替え産業教育に従事する「実習助手」として採用後、経験年数に応じて大学等で所定の単位を履修することにより、実習科目に関する教育職員普通免許状(看護実習、情報実習、農業実習、工業実習、商業実習、水産実習、福祉実習、商船実習)を取得することができる。以下は、任命権者により処遇が大きく異なるが、免許取得後に経験年数・年齢・給与号俸の条件を満たすことで、「実習教諭」や「実習担任教諭」に任用替えとなり、給与表が教育職1級(実習助手・常勤講師)から2級(教諭)に変更される(「教諭」と同等の給与水準となる、いわゆる「2級ワタリ」)。また、普通教科を担当する「実習助手」や免許を取得していない「実習助手」についても、経験年数・勤務成績により「主任実習助手」や「指導実習助手」に任用替えとなる。ただし普通教科に関する科目では、前述の実習免許は設定されておらず、免許取得を目指す場合は教諭と同じ免許を受ける。 各自治体での事例・現状前述のとおり実習助手の職務内容が曖昧なため、学校設置者(各都道府県市町村)や学校によって扱いが異なることがある。 埼玉県※但し書きがない場合は県立学校における取り扱いである。 教科ごとに名簿搭載され採用される。教科によっては更に細かく分かれる(工業機械・工業電気・商業一般・情報処理等)。年度によって募集教科は異なる。条件付採用期間は六月である。対外的な肩書は「実習教員」という呼称を使ってよいことになっているが、身分上の教員ではない。あくまでも呼称のみであり、法令に基づく公文書等での職名は「実習助手」でなければならない。なお本文での記載は職名の「実習助手」とする。 主な職務内容は以下のとおりである。
次のものは学校の実情によって、実習助手が行うことがある職務内容である。
身分上の扱いは以下のとおりである。
特別支援学校での実習助手特別支援学校における実習助手は、高等部へ配置されるものについては、高等学校設置基準にて高等学校に配置すべきとされる「実習助手」の位置づけに準じるが、これとは別に、幼稚部・小学部・中学部への配置は可能である。ただし、自治体によってやや解釈が異なるが、原則としては教諭や常勤講師の補助的業務を行うことが主たる業務とされるため、高等部に配置されるものを含めて会計年度任用職員(平成31年度以前は非常勤嘱託)という位置づけとなっている。 関連項目 |