『夭怪着到牒』(ばけものちゃくとうちょう)は、1788年(天明8年)鶴屋喜右衛門(仙鶴堂)から出版された、北尾政美の画による黄表紙である。
概要
場面ごとに多くの種類のばけもの(妖怪)達が描かれ、最終丁には朝比奈三郎が化物(悪鬼)を退治する姿が掲げられる。
作品としての面白味は主に絵にあり、文章量なども極めて少ない。(黄表紙に分類されているが一巻を通したストーリー展開は存在しない)主な内容は妖怪の姿や、それにおどかされ驚く人々を列挙したものになっており、赤本や黒本といった先行する草双紙作品に存在する『化物尽し』などの構成につらなったものである。
内容
筋のとおったストーリー展開は定まってなく、さまざまな場面場面が描かれており、それぞれに妖怪が描かれている。以下、巻頭から登場順に記す。
上巻
- 八つ(午前2時ごろ)の鐘を僧侶が鳴らしている場面
- 女の首が夜空を飛んでいる。
- 見越し入道が妖怪たちを呼び集める場面
- 見越し入道のほかに大頭小僧・鵺・鳥の妖怪・女の妖怪などが描かれている。見越し入道は「ばけものの親玉」との解説が書き込まれている。
- 大侍()が顔を出して座敷の人間を驚かせる場面
- 河太郎が人を襲う場面
- 柳の木の下に妖怪が現われる場面
- 人間を襲う様子が描かれる。猫・巨大な足・尼入道()が描かれている。
- 逆女()が人間の前に出る場面
下巻
- 海坊主が舟を襲う場面
- ばけものの寄り合いの場面
- 黒日(くろび。暦の上で縁起が良くない日とされる)に妖怪たちが集まって太鼓や三味線を鳴らし、踊りをたのしんで騒いでいる様子が描かれる。馬・狸・狐・天狗・三つ目入道・猫などが描かれている。
- 木の下にいろいろな妖怪が現われる場面
- 姫路のおさかべ姫・三面乳母()・一つ眼()・女の人魂・くら虫が描かれる。おさかべ姫には「こわいものの親玉」という解説も書かれている。
- 水辺にいろいろな妖怪が現われる場面
- 人間を襲う様子が描かれる。悪息()・タコの入道・狸・狒々・一つ目小僧。狸は金玉を大きく広げて人間にかぶせている。
- 木の下にいろいろな妖怪が現われる場面
- 大蛇・車巡り()・なめくじらの化物・コウモリの化けたもの・風尼()・骸骨・赤鬼が名前と簡略な説明と共に列挙される。
- 朝比奈が悪鬼たちを退治する場面
妖怪には名称が付されているものもあれば、書き込まれていないものもあり、そのような点も先行する草双紙に存在する『化物尽し』などの構成に近い。
参考文献
関連項目
外部リンク
- 『夭怪着到牒』 東京都立図書館デジタルアーカイブ(TOKYOアーカイブ)