合胞体は、様々なウイルスが細胞に感染した時に、細胞同士が融合することで形成される場合がある。特にヒトヘルペスウイルスや、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、パラミクソウイルス(例 RSウイルス(RSV))が知られている。この細胞融合は、ウイルスが侵入した後、感染細胞の細胞膜表面に発現したウイルスの膜タンパク質の働きによって、隣接した非感染細胞との融合を起こすもの(fusion from within:感染が必須な細胞融合)と、ウイルス粒子が宿主細胞の細胞膜に結合して侵入しようとするとき、隣接する細胞同士を融合させるもの(fusion from without:ウイルス増殖を必要としない細胞融合)に大別される。合胞体を形成するかどうかは、そのウイルスと感染する細胞の種類によって決まり、ヒト免疫不全ウイルスなどのレトロウイルスや、ヘルペスウイルスでは前者のみ、センダイウイルスに代表されるパラミクソウイルスでは前者と後者の両方の現象が見られる。合胞体の形成は、これらのウイルスが細胞に感染したことを示す細胞の形態変化を示す特徴(細胞変性効果)の一つとして、ウイルス学の分野で利用されている。またセンダイウイルスの持つfusion from withoutは、さまざまな種類の動物細胞同士を融合させる手段として、バイオテクノロジーの分野で応用されている。