4. R をデデキント整域とし I を R の 0 でないイデアルとする。このとき商 R/I は主環である。実際、I を素イデアルの冪の積として分解できる: , そして、中国の剰余定理によって
, なので各
が主環であることを見れば十分である。しかし は離散付値環 の商 に同型であり、主環の商であるので、主環である。
5. k を有限体とし , , とおく。このとき R は主環でない有限局所環である。
6. X を有限集合とする。このとき は単位元をもつ可換主イデアル環をなす。ただし は対称差を表し は X の冪集合を表す。X が少なくとも 2 つの元をもてば、環はまた零因子をもつ。I がイデアルであれば、 である。X を無限集合とすれば、環は主環でない。例えば、X の有限部分集合で生成されるイデアルを考えよ。
可換 PIR の構造理論
上の例 4 で構成された主環はつねにアルティン環である。とくに、それらは主アルティン局所環の有限直積に同型である。
局所アルティン主環は special principal ring と呼ばれ、極めて単純なイデアル構造をもつ:有限個のイデアルしか存在せず、各々は極大イデアルの冪なのである。この理由のために、special principal rings は uniserial rings の例である。
次の結果は主環の完全な分類を special principal rings と主イデアル整域の言葉によって与える。
Zariski–Samuel の定理: R を主環とする。すると R は直積 として書ける、ただし各 Ri は主イデアル整域であるかまたは special principal ring である。
証明は中国剰余定理を零イデアルの極小準素分解に適用する。
Hungerford による以下の結果も存在する:
定理 (Hungerford): R を主環とする。すると R は直積 として書ける、ただし各 Ri は主イデアル整域の商である。
Hungerford の定理の証明は完備局所環 (complete local ring) に対する コーエンの構造定理(英語版)を用いる。
上記例 3 のように議論し Zariski-Samuel の定理を使うことで次のことを確認するのは易しい。Hungerford の定理は任意の special principal ring が離散付値環の商であるというステートメントと同値である。
非可換の例
ただの体の直積ではないすべての半単純環R は非可換右かつ左主イデアル域である。すべての右と左イデアルは R の直和成分であるので e を R の冪等元として eR あるいは Re の形である。この例と並行して、フォン・ノイマン正則環は右かつ左ベズー環であることが確かめられる。
T. Hungerford, On the structure of principal ideal rings, Pacific J. Math. 25 1968 543—547.
Lam, T. Y. (2001), A first course in noncommutative rings, Graduate Texts in Mathematics, 131 (2 ed.), New York: Springer-Verlag, pp. xx+385, ISBN0-387-95183-0, MR1838439