冪零群 G に対して、G が長さ n の中心列を持つとき(定義により、長さ n を持つとは中心列に自明群と G 自身を含めて n + 1 個の部分群が並ぶときに言う)、そのような n の最小値を G の冪零度 (nilpotency class; 冪零性の等級) と呼び、また G は冪零度 n の冪零群であるという。G の冪零度は、降中心列または昇中心列を用いても同じ値が定められる。[注釈 1]
G がアーベル群ならば、任意の H に対して NG(H) = G であるからよい。そうでないとき、中心Z(G) が H を含まないならば、hZ⋅H−1 Zh−1 = hHh−1 = H であるから、H·Z(G) は H を正規化する。
以下、それ以外のときについて G の位数|G| に関する帰納法で示す。Z(G) が H を含むならば H/Z(G) は G/Z(G) に含まれる。G/Z(G) が冪零であることに注意せよ。したがって、帰納法の仮定により、G/Z(G) の部分群で H/Z(G) の正規化群であるものが存在し、H/Z(G) はその真の部分群となる。それにより、その部分群を G の部分群に引き戻せば、それは H を正規化する[注釈 3]。
(b) → (c)
G の任意のシロー部分群を P とし、N = NG(P) と置く。P は N の正規部分群であるから、P は N の特性部分群 char N である。P = char N かつ N は NG(N) の正規部分群であるから、P は NG(N) の正規部分群となる。これは NG(N) が N の部分群であることを意味するから、NG(N) = N であり、(b) により N = G でなければならず、それは (c) ということである。
(c) → (d)
G の位数を割り切る相異なる素数を p1, p2, …, ps とし、部分群 Pi はそれぞれシロー pi-部分群に含まれるとする。任意の t に対し、帰納的に P1⋅P2 ⋯ Pt が P1 × P2 × ⋯ × Pt に同型であることが示せる。実際、まず各 Pi が G の正規部分群であるという仮定に注意すれば、積集合 P1⋅P2 ⋯ Pt は G の部分群である。H ≔ P1⋅P2 ⋯ Pt−1 および K ≔ Pt とすれば、帰納法の仮定により H は直積群 P1 × P2 × ⋯ × Pt−1 に同型で、特に |H| = |P1|⋅|P2| ⋯ |Pt−1| が成り立つ。|K| = |Pt| であったから、H, K の位数は互いに素であり、ラグランジュの定理によって H, K の交わりは自明群 {1}、したがって HK ≅ H × K だが、これは作り方から P1⋅P2 ⋯ Pt = HK ≅ H × K = P1 × P2 × ⋯ × Pt であり、帰納法は完成する。t = s と取って (d) を得る。
^これは p-群に対するのと同じ論法—単に G と G/Z(G) がともに冪零となるという事実だけあればよい—ゆえ、詳細は省略する
出典
^Dixon, M. R.; Kirichenko, V. V.; Kurdachenko, L. A.; Otal, J.; Semko, N. N.; Shemetkov, L. A.; Subbotin, I. Ya. (2012). “S. N. Chernikov and the development of infinite group theory”. Algebra and Discrete Mathematics13 (2): 169–208.