中食

中食(なかしょく)とは、家庭外で調理された食品を、テイクアウトあるいはデリバリーなどによって家庭内で食べる食事の形態。飲食店など家庭外で調理された食品を家庭外で食事する「外食」や、家庭内で調理して食事を摂る「内食」(ないしょく、うちしょく)の対義語である[1]。「外食」に対するレトロニムとして「内食」という言葉が生まれ、外部で調理された料理を家庭で食べる行為はその中間であるとして「中食」と呼ぶ言葉が生まれた。

なお、日本国外では類似の概念として、アメリカ合衆国などで用いられる "HMR (Home Meal Replacement) "があるが、厳密には同義ではない(後述)[2]

日本の中食の概念

多くの場合「中食」とは、「持ち帰ってすぐ食べられる、日持ちのしない食品」のことを指す[3]。たとえばスーパーマーケットデパ地下で販売されている惣菜[4]や、コンビニエンスストアで販売されている弁当であり[3]、またそうした食品を食することを指す。

知恵蔵2012年版では、「中食という言葉が登場したのは、働く女性やコンビニエンスストアが社会に定着した1980年代ごろからだと思われる」とされている[5]。日本社会では婚姻率の低下や高齢化により単身世帯の割合が増えた結果、食事を一人で摂る人が増え、これを「個食孤食」と呼ぶ。「中食」という語の普及は、そうした人々の需要に応えようと、弁当ひとつ、惣菜ひとつ、おにぎりひとつを手軽に買えるようなサービスが増えたことも反映している[5]。外食産業総合調査研究センターの推計によれば「中食産業」は、2003年にはすでに外食産業の4分の1の市場規模に達していたとされる[5]。中食産業の2007年の市場規模は約6兆5千億円に達し[5]、また『知恵蔵』2012年版によれば、10年間で25%伸びたともされている[5]矢野経済研究所の推計による、2010年の中食製品の販売チャネル別割合の上位3つは、惣菜専門店が32.7%、コンビニエンスストアが27.1%、量販店・食品スーパーが15.6%、となっている[6]

ピザチェーン店は基本的に注文を受けて配達するかテイクアウトが基本であり、特に都市部では食事スペースを持たない店舗が多い。この他にもタイヘイヨシケイなど食材宅配サービスの多くは、食材だけでなく調理された状態の弁当も宅配メニューに加えており、中食を配達するサービスとも捉えられる。

語源

日本語の「中食」(なかじき、ちゅうじき)は、本来は昼食の意であった[7]。「中食(ちゅうじき)」という漢字表現は江戸時代初期以降に登場しているが、この言葉は江戸中期に「昼食(ちゅうじき)」という言葉に変わっているため、現代語の「中食」(なかしょく)との直接的な関連性はないとされる[8]

歴史

日本では、江戸時代屋台天ぷらを独身者が店外に持ち帰って食べる習慣があり、蕎麦天丼などを配達してもらう出前も存在した。しかし基本的には、2人以上で暮らしていれば食材八百屋肉屋魚屋で買ってきて、家庭内で調理して家族で食べるのが一般的な食事の形態であった。[要出典]

「中食」という用語の範囲内には、従来「仕出し」や「出前」と呼ばれていたものも含まれており、これは従来の用語を単に置き換えたのみならず、日本の家庭の食事形態の変化をも反映している。1980年代以降の日本では、核家族化、単身世帯の増加などによって、家庭内での調理は減る傾向にあったが、それによって人々が外食にばかりシフトしたわけではない。日本では(西洋でもそうだが)中国東南アジア諸国のような安価で手軽な外食が少なく、また1990年代以降は平成不況により高額な外食の店舗を避ける傾向もあり、あらかじめ調理された料理をスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの量販店の店舗で購入して持ち帰り、自宅で食べるという形態の食事の割合が増加した。[独自研究?]

ギャラリー

米国のHMRの概念

アメリカ合衆国において、スーパーマーケットで販売される惣菜は外食より割安であり、都市部ではテイクアウトやデリバリーが利用されていたが、1990年代半ばに家庭での本格的な食事作りを代行するホーム・ミール・リプレイスメント (HMR、Home Meal Replacement) と呼ばれる「内食代行」市場が形成されるようになった[2]。もともと「ホーム・ミール・リプレイスメント」は、アメリカ合衆国のテイクアウトチェーンであるボストンマーケットが1995年から家庭での食事作りを代行するサービスのブランドとして用いていた名称である[9]。日本でいえばスーパーマーケットデパ地下がHMRにあたる[2]

日本語の「中食」の英語に「ホーム・ミール・リプレイスメント (HMR) 」が充てられる場合もあるが、厳密にはアメリカ合衆国のHMRの概念は、内食・中食・外食を問わず用いられる概念であり、日本語の「中食」と同義ではない[2]

脚注

  1. ^ 堀内幹夫『魚で食育する本 スーパーマーケットだからできる』114-115頁、商業界(食育シリーズ1)、2007年。ISBN 9784785503123
  2. ^ a b c d 福井晋『図解入門業界研究 最新外食業界の動向とカラクリがよーくわかる本』176頁、秀和システム、2006年7月1日発行。ISBN 9784798013602
  3. ^ a b 高橋麻美『よくわかる中食業界』日本実業出版社、2006年。ISBN 9784534040534
  4. ^ 「海外事例(アメリカ編)」売場で食の動向を感じチャンスの芽を 農業協同組合新聞、2017年4月。
  5. ^ a b c d e 知恵蔵』2012年版「中食」、執筆・高野朋美、朝日新聞社
  6. ^ 惣菜(中食)市場に関する調査結果 2011 矢野経済研究所(アーカイブ)
  7. ^ コトバンク
  8. ^ 安久鉃兵『唐揚げのすべて うんちく・レシピ・美味しい店』」pp.30-31、中央公論新社中公新書ラクレ)、2015年7月。ISBN 9784121505200
  9. ^ ホーム・ミール・リプレイスメント 日本食肉消費総合センター、2017年7月14日閲覧。

関連項目