ロボット殿堂

金メッキの女性型ロボットのレプリカ。
映画『メトロポリス』のキャラクター「マリア」は殿堂入りし、レプリカがカーネギー・サイエンス・センター英語版に展示されている。

ロボット殿堂(ロボットでんどう、: Robot Hall of Fame)とは、現実・フィクションを問わずロボティクスに大きく貢献したロボットを記念する殿堂である[1][2]

ロボット技術の画期的な成果とともに、ロボット研究者およびロボットそのものが社会や科学にもたらす功績を幅広く顕彰するころと目的とする[3]。技術革新を具現化した実在のロボットと、未来を示唆しロボット研究者を刺激するような空想上のロボットが殿堂入りしている[3]

ロボット殿堂は、2003年にカーネギーメロン大学のコンピューターサイエンス学部で創設された[3]。ロボット殿堂を作るというアイデアは同学部長(当時)のジェームス H.モリス英語版が発案した[4]。彼は、「我々は、実際にまたは潜在的に有用な機能を有しその能力を実証したロボット、およびフィクションとして人々を楽しませ世界的に名声をなしたロボットを称賛したい」と述べている[4]。最初の殿堂入り式典は、2003年10月にカーネギー・サイエンス・センター英語版で執り行われ、4つのロボットが殿堂入りした[5]。翌2004年からは2年ごとに殿堂入りロボットが発表され、これまでに、現実とフィクションの中から30のロボットが殿堂入りしている[6]。当初、殿堂入りした多くのロボットは現存しないか、マーズ・ローバーのようにアクセスできないか、あるいは紙上や映像の中で描かれたものであり、ロボット殿堂はオンライン上のみの存在であった[3]。その後、2009年6月にカーネギー・サイエンス・センターに恒久的なロボット展示場「Roboworld」が開館し、その中にロボット殿堂も組み入れられた[7]

2003年から2010年までの選考は、ロボット研究者らで構成される選考委員により行われた[2][8][9]。ロボット殿堂の選考へのノミネートは広く開かれており、短い段落にまとめた推薦理由や必要に応じてビデオテープを選考委員会に送付することで候補に加えられた[4]

2012年には選考プロセスが大きく変更され、一般投票が加えられた[10]。学術界、産業界、そして愛好家などで構成されるロボット専門家107人によって、候補ロボットが選定された[9]。そして、これら専門家によって候補は4つのカテゴリー「教育&消費者」「エンターテインメント」「産業&サービス」「研究」に分類され、予備選考として各カテゴリーから3位までのロボットが選出された[9][11]。そして、オンライン投票システムにより一般の投票者は、カテゴリーごとに1候補ずつ投票することができた[11][12]。一般投票が5割、専門家らの投票が5割の重みになるよう調整され、最終的に殿堂入りするロボットが確定された[9]。ロボット殿堂の理事である Shirley Saldamarco はこの変更について以下のように述べた:

ロボティクスのテクノロジーやアートは、ますます急速に進歩しており、ロボット殿堂も進化が必要である。多くの学生や労働者、消費者がロボットに慣れてくるにつれて、殿堂の選考に一般の声を反映させることは自然なステップだと感じられる[13]

2012年の選考以降は、殿堂入りしたロボットは発表されていない。

殿堂入りしたロボットの一覧

A red camera eye.
2003年に殿堂入りした「HAL 9000
A white-bodied robot with a black face plate walks.
2004年に殿堂入りした「ASIMO
A robotic rover rests on a blue floor, while several scientists wearing white bodysuits observe it.
2010年に殿堂入りした「オポチュニティ
A grey military robot on a staircase.
2012年に殿堂入りした「パックボット
殿堂入りしたロボットの一覧
選出年 名前 説明 製作者 分類 出典
2003 HAL 9000 映画『2001年宇宙の旅』のキャラクター アーサー・C・クラーク エンターテイメント [14]
2003 R2-D2 スター・ウォーズシリーズ』のキャラクター ジョージ・ルーカス エンターテイメント [15]
2003 ソジャーナ マーズ・ローバー NASA 研究 [16]
2003 ユニメート 最初の産業用ロボット ジョージ・デボル, ジョセフ・エンゲルバーガー 産業&サービス [17]
2004 ASIMO ヒューマノイドロボット 本田技研工業 研究 [18]
2004 鉄腕アトム 鉄腕アトム』シリーズのキャラクター 手塚治虫 エンターテイメント [19]
2004 C-3PO スター・ウォーズシリーズ』のキャラクター ジョージ・ルーカス エンターテイメント [20]
2004 ロビー・ザ・ロボット英語版 映画『禁断の惑星』のキャラクター シリル・ヒューム英語版 エンターテイメント [21]
2004 シェーキー 自身の動作を推論できる世界初の汎用移動ロボット SRIインターナショナル 研究 [22]
2006 AIBO ペットロボット ソニー 教育&消費者 [23]
2006 デイビッド 映画『A.I.』のキャラクター ブライアン・オールディス エンターテイメント [24]
2006 ゴート 映画『地球の静止する日』のキャラクター エドモンド・H・ノース英語版 エンターテイメント [25]
2006 マリア 映画『メトロポリス』のキャラクターで、映画で描かれた最初のロボットとされる テア・フォン・ハルボウフリッツ・ラング エンターテイメント [26]
2006 SCARA
(水平多関節ロボット)
組立作業用の4軸産業用ロボットで、Selective Compliance Assembly Robot Armの略[2] 山梨大学牧野洋[2] 産業&サービス [27]
2008 データ スタートレック』のキャラクター ジーン・ロッデンベリー エンターテイメント [28]
2008 マインドストーム ロボット製作キット レゴ 教育&消費者 [29]
2008 Navlab 5英語版 自動運転車 カーネギーメロン大学 研究 [30]
2008 Raibert Hopper 単脚跳躍ロボット マーク・レイバート 研究 [31]
2010 da Vinci サージカルシステム 手術支援ロボットシステム インテュイティヴ・サージカル 産業&サービス [32]
2010 デューイ 映画『サイレント・ランニング』のキャラクター スティーブン・ボッコ, マイケル・チミノ, デリック・ウォシュバーン エンターテイメント [33]
2010 ヒューイ
2010 ルーイ
2010 オポチュニティ マーズ・ローバー NASA 研究 [34]
2010 ルンバ 自律型掃除用ロボット iRobot 教育&消費者 [35]
2010 スピリット マーズ・ローバー NASA 研究 [34]
2010 ターミネーターT-800 映画『ターミネーター』のキャラクター ジェームズ・キャメロン, ゲイル・アン・ハード エンターテイメント [36]
2012 ビッグドッグ 四足歩行ロボット ボストン・ダイナミクス, フォスター・ミラー英語版, NASAジェット推進研究所, ハーバード大学 研究 [37]
2012 Nao 自律型ヒューマノイド アルデバランロボティクス 教育&消費者 [38]
2012 パックボット 軍事用ロボット iRobot 産業&サービス [39]
2012 ウォーリー 映画『ウォーリー』のキャラクター アンドリュー・スタントン エンターテイメント [40]

参考文献

  1. ^ アイボが「ロボットの殿堂」入り”. Engadget 日本版 (2006年4月23日). 2006年5月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年10月9日閲覧。
  2. ^ a b c d 新井民夫; 菅野重樹 (2006), “巻頭言 スカラロボット ロボット殿堂入りのお知らせ”, 自動化推進 35 (3), http://www.jidoka.net/serv/kaishi/kaish-kantog-2006-3.htm 2018年10月9日閲覧。 
  3. ^ a b c d About the Robot Hall of Fame”. The Robot Hall of Fame - Powered by Carnegie Mellon University. 2018年10月9日閲覧。
  4. ^ a b c Carnegie Mellon Announces Creation of The Robot Hall of Fame; Assembles a Panel of Renowned Judges to Select the First Inductees”. Carnegie Mellon University (2003年4月30日). 2013年7月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年7月30日閲覧。
  5. ^ Carnegie Mellon Inducts Four Robots into Newly Established Robot Hall of Fame”. Carnegie Mellon University (2003年11月10日). 2013年8月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年7月30日閲覧。
  6. ^ The Inductees”. The Robot Hall of Fame - Powered by Carnegie Mellon University. 2013年8月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年10月11日閲覧。
  7. ^ “Robots take center stage at Pittsburgh museum”. Daily American (Tribune Company). (2009年6月6日). オリジナルの2014年1月6日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140106182012/http://articles.dailyamerican.com/2009-06-06/news/26296213_1_robotics-companies-exhibit-showcases-science-technology-centers 2018年10月11日閲覧。 
  8. ^ カーネギーメロン大学,2007年の「ロボット殿堂」入り作品を発表”. 日経 xTECH (2007年5月17日). 2018年10月10日閲覧。
  9. ^ a b c d Ceceri, Kathy (2012-09-04). “Vote for your favorite nominees to the Robot Hall of Fame”. Wired (Condé Nast Publications). https://www.wired.com/geekdad/2012/09/vote-for-your-favorite-nominees-to-the-robot-hall-of-fame/ 2013年7月30日閲覧。. 
  10. ^ ロボットの殿堂入り、初の一般投票で選考 カーネギーメロン大学”. CNN.co.jp (2012年8月25日). 2018年10月9日閲覧。
  11. ^ a b Poeter, Damon (2012-08-21), “Public Can Vote on Robot Hall of Fame 2012 Class”, PC Magazine (Ziff Davis), オリジナルの2012-11-26時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20121126034423/http://www.pcmag.com/article2/0,2817,2408753,00.asp 2018年10月11日閲覧。 
  12. ^ How are Robots Selected for the Robot Hall of Fame®?”. The Robot Hall of Fame - Powered by Carnegie Mellon University. 2013年8月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年10月11日閲覧。
  13. ^ Mosbergen, Dominique (2012年8月20日). “Robot Hall of Fame 2012: Vote for the Best And Most Innovative Robots in the World”. The Huffington Post (AOL). オリジナルの2013年9月18日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130918001525/http://www.huffingtonpost.com/2012/08/20/robot-hall-of-fame_n_1811816.html 2018年10月11日閲覧。 
  14. ^ HAL 9000”. The Robot Hall of Fame - Powered by Carnegie Mellon University. 2013年9月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年10月11日閲覧。
  15. ^ R2-D2”. The Robot Hall of Fame - Powered by Carnegie Mellon University. 2013年5月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年10月11日閲覧。
  16. ^ Mars Pathfinder Sojourner Rover”. The Robot Hall of Fame - Powered by Carnegie Mellon University. 2013年5月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年10月11日閲覧。
  17. ^ Unimate”. The Robot Hall of Fame - Powered by Carnegie Mellon University. 2013年10月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年10月11日閲覧。
  18. ^ ASIMO”. The Robot Hall of Fame - Powered by Carnegie Mellon University. 2013年5月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年10月11日閲覧。
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  23. ^ AIBO”. The Robot Hall of Fame - Powered by Carnegie Mellon University. 2013年5月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年10月11日閲覧。
  24. ^ David”. The Robot Hall of Fame - Powered by Carnegie Mellon University. 2013年5月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年10月11日閲覧。
  25. ^ Gort”. The Robot Hall of Fame - Powered by Carnegie Mellon University. 2013年5月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年10月11日閲覧。
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  40. ^ WALL-E”. The Robot Hall of Fame - Powered by Carnegie Mellon University. 2017年12月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年10月11日閲覧。

外部リンク