レディーファーストレディーファースト(英: ladies first)は、乗車・食事その他の場面で女性を優先する欧米のエチケット。「婦人を先に」「婦人第一」と訳す[1]。日本語に借入したのは1926年から1945年の間とされている[2]。 レディー・ファースト[2][3]、レディー ファースト[1][4]、レディーズ ファースト[1]の表記もある。 概要日本における文献では1930年の『アルス新語辞典』(桃井鶴夫・編)において、「レディーファーストとは、婦人に一目を置くというよりも同等に扱う、すなわち婦人の個性を認めて尊敬するというような意味である[注釈 1]」との記述が確認できる[5]。 近年では、レディーファーストの行動理念は欧米においても古い世代のものになりつつある[6]。また、スウェーデンなど一部の国では、レディーファーストが両面価値的性差別の「慈悲的性差別」(benevolent sexism)に当たるとされ忌避される傾向もある。しかしながら、時と状況に応じて男性に必要とされる当然のマナーとして今も存在している[6]。 男性が連れの女性をエスコートする際のマナーとしてのレディーファーストの一例を以下に記す。ただし、型通りであれば良いということではなく、状況により臨機応変に動くことが望ましいとされている[6]。
また、ホテルなどにおけるドアマンなどによるレディーファーストは、下記の通りである[6]。
起源欧州におけるレディーファーストの起源は、騎士階級の道徳規範であった騎士道に求められる。騎士階級は富農身分や貴族身分の中から興り、12世紀頃に独立した階級となって世襲化した[7]。長男はともかく、次男、三男は父の家督を継げる可能性は低かったので、戦功を挙げて主君に仕え、自分の城を手に入れようとする者も多かった。裕福な未亡人がいれば近づいて後釜に座ることもあった。また、若い騎士が主君の妻に恋愛感情をいだくこともあり、主君もそれを家臣の引き止めのために利用しようとした。このように、貴婦人に対して奉仕するという騎士道の理念が成立した[8]。 一方、レディーファーストの動機を5世紀頃からはじまる聖母への崇敬に求める意見もある。この影響で、中世に入ると、少なくとも貴族の女性を崇高なものとして扱おうという傾向へ転じ、これを詩人や騎士が担ったとする。騎士道は11世紀のフランスに起こり、その精神と共に新たな生活風習がヨーロッパ各国に広まった。最盛期は1250年から1350年頃までとされる[9]。広く読まれた作法書としては、13世紀にカタロニアの言語で書かれ、英語、フランス語にも翻訳されたレーモン・ルル著『騎士の礼儀の書』があり、騎士の責任として、教会を守ることに次いで女性と孤児を助けることが挙げられている[10]。 17世紀フランスのサロンにおいては、サロンの主役である女性が入ってくれば男性は席から立って挨拶した(特に、年配の女性から順番に)。その他、女性を先に通す、座るときには椅子を持ち上げる、外套を着るときには手伝うなどのエチケットは17世紀に作られた[11]。 脚注注釈
出典参考文献
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