リース・マルツェル (ハンガリー語 : Riesz Marcell 、発音 [ˈriːs ˈmɒrtsɛlː] 、1886年 11月16日 - 1969年 9月4日 )は、ハンガリー 生まれの数学者 で、総和法 やポテンシャル論 やその他解析学 、数論 、偏微分方程式 、クリフォード代数 における業績で有名である。生涯の多くをスウェーデン のルンド で過ごした。
伝記
リース・マルツェルはハンガリー (オーストリア=ハンガリー帝国 )のジェール に生まれた。数学者リース・フリジェシュ は彼の兄である。リポート・フェイェール の指導の下、エトヴェシュ・ロラーンド大学 において博士号を取得した。1911年にはヨースタ・ミッタク=レフラー の招聘によってスウェーデンへと移動し、1911年から1925年の間は Stockholms högskola (現在のストックホルム大学 )で教鞭を執った。1926年から1952年の間はルンド大学 で教授の職に就いた。引退後の10年間はアメリカの大学で過ごし、1962年にルンドに戻り、1969年に没した[ 1] [ 2] 。
1936年にはスウェーデン王立科学アカデミー の一員に選出されている[ 1] 。
数学上の業績
古典解析
フェイェールの指導学生としてのブダペストでのリースの業績は、次の形状の三角級数 (英語版 ) に関するものであった:
a
0
2
+
∑ ∑ -->
n
=
1
∞ ∞ -->
{
a
n
cos
-->
(
n
x
)
+
b
n
sin
-->
(
n
x
)
}
.
{\displaystyle {\frac {a_{0}}{2}}+\sum _{n=1}^{\infty }\left\{a_{n}\cos(nx)+b_{n}\sin(nx)\right\}.\,}
彼の結果の一つによると、
∑ ∑ -->
n
=
1
∞ ∞ -->
|
a
n
|
+
|
b
n
|
n
2
<
∞ ∞ -->
,
{\displaystyle \sum _{n=1}^{\infty }{\frac {|a_{n}|+|b_{n}|}{n^{2}}}<\infty ,\,}
が成立し、その級数のフェイェール平均 がゼロに収束するなら、すべての係数 a n と b n はゼロとなる[ 3] 。
三角級数の総和可能性 に関する彼の結果には、任意の次数でのフェイェールの定理 のチェザロ平均 への一般化が含まれる[ 4] 。彼はまたベキ級数 とディリクレ級数 の総和可能性を研究し、その後ゴッドフレイ・ハロルド・ハーディ との共著 Hardy & Riesz (1915) を出版している[ 3] 。
1916年、彼は三角多項式 に対するリースの補間公式を導入し、ベルンシュタインの不等式 (英語版 ) に対する新たな証明を与えることに成功した[ 5] 。
彼はまたリース函数 Riesz(x ) を導入し、リーマン予想 は任意の ε > 0 に対する x → ∞ での限界 Riesz(x ) = O(x 1 ⁄4 + ε ) と同値であることを示した[ 6] 。
彼は兄リース・フリジェシュ とともに、リース兄弟の定理 を証明した。その定理では特に、μ が
∫ ∫ -->
z
n
d
μ μ -->
(
z
)
=
0
,
n
=
1
,
2
,
3
⋯ ⋯ -->
{\displaystyle \int z^{n}d\mu (z)=0,n=1,2,3\cdots \,}
を満たす単位円上の複素測度 であるなら、その変分 |μ | と単位円上でのルベーグ測度 は互いに絶対連続 であることが述べられている[ 5] [ 7] 。
函数解析的手法
1920年代のリースの解析的な業績の一部においては、函数解析学 の手法が用いられていた。
1920年代の早期、リースはモーメント問題 (英語版 ) の研究を行い、リースの拡張定理 を証明することである作用素論 的手法を導入した(その定理は後のハーン-バナッハの定理 と密接に関連するものであった)[ 8] [ 9] 。
その後リースは、ヒルベルト変換 はL p (1 < p < ∞)における有界作用素であることを示すためのある補間定理を発見した。その定理の彼の指導学生オロフ・ソリン (英語版 ) による一般化は、今日リース=ソリンの定理 として知られている[ 2] [ 10] 。
リースはまた、アンドレイ・コルモゴロフ とは独立に、現在「L p におけるコルモゴルフ=リースのコンパクト性の指標」として知られている次の内容を証明した:部分集合 K ⊂L p (R n ) がプレコンパクト であるための必要十分条件は、以下の三つの条件が成立していることである:(a) K は有界;(b) 任意の ε > 0 に対してある R > 0 が存在し
∫ ∫ -->
|
x
|
>
R
|
f
(
x
)
|
p
d
x
<
ϵ ϵ -->
p
{\displaystyle \int _{|x|>R}|f(x)|^{p}dx<\epsilon ^{p}\,}
がすべての f ∈ K に対して成立する;(c) 任意の ε > 0 に対してある ρ > 0 が存在し
∫ ∫ -->
R
n
|
f
(
x
+
y
)
− − -->
f
(
x
)
|
p
d
x
<
ϵ ϵ -->
p
{\displaystyle \int _{\mathbb {R} ^{n}}|f(x+y)-f(x)|^{p}dx<\epsilon ^{p}\,}
が、|y | < ρ を満たすすべての y ∈ R n とすべての f ∈ K に対して成立する[ 11] 。
ポテンシャル論、PDE、クリフォード代数
1930年以後、リースの興味はポテンシャル論 と偏微分方程式 へ移っていった。彼はリーマン=リウヴィル積分 (英語版 ) の一般化である「一般化ポテンシャル」(generalized potential)を利用した[ 2] 。特に彼は、リーマン=リウヴィル積分の高次元への一般化であるリースポテンシャル を発見した[ 1] 。
1940年代と50年代には、リースはクリフォード代数 の研究を行った。1993年に完全版の出版された彼の1958年の講義録 (Riesz (1993) ) は、物理学者のデヴィッド・ヘステネス (英語版 ) によって、クリフォード代数の「再生のための助産婦」(the midwife of the rebirth)と称された[ 12] 。
指導学生
リースのストックホルムでの博士課程の学生には、ハラルド・クラメール やエイナー・ヒレ (英語版 ) が含まれる[ 1] 。ルンドでは、リースはオットー・フロストマン (英語版 ) やラース・ヘルマンダー 、オロフ・ソリン (英語版 ) の論文指導を行った[ 2] 。
出版物
Hardy, G. H. ; Riesz, M. (1915). The general theory of Dirichlet' s series . Cambridge University Press. JFM 45.0387.03 . http://ebooks.library.cornell.edu/cgi/t/text/text-idx?c=math;idno=01480002
Riesz, Marcel (1988), Collected papers , Berlin, New York: Springer-Verlag , ISBN 978-3-540-18115-6 , MR 962287 , https://books.google.com/books?isbn=3540181156
Riesz, Marcel (1993) [1958], Clifford numbers and spinors , Fundamental Theories of Physics, 54 , Dordrecht: Kluwer Academic Publishers Group, ISBN 978-0-7923-2299-3 , MR 1247961 , http://www.springer.com/mathematics/book/978-3-540-18115-6
脚注
^ a b c d Gårding, Lars (1970), “Marcel Riesz in memoriam”, Acta Mathematica 124 : x–xi, doi :10.1007/BF02394565 , ISSN 0001-5962 , MR 0256837
^ a b c d Peetre, Jaak (1988). “Marcel Riesz in Lund”. Function spaces and applications (Lund, 1986) . Lecture Notes in Math. 1302 . Berlin: Springer. pp. 1–10. doi :10.1007/BFb0078859 . MR 0942253 .
^ a b Horváth, Jean (1982). “L'œuvre mathématique de Marcel Riesz. I [The mathematical work of Marcel Riesz. I ”] (French). Proceedings of the Seminar on the History of Mathematics 3 : 83–121. MR 0651728 . http://www.numdam.org/item?id=CSHM_1982__3__83_0 .
^ Theorem III.5.1 in Zygmund, Antoni (1968). Trigonometric series (2nd ed.). Cambridge University Press (1988発行). ISBN 978-0-521-35885-9 . MR 0933759
^ a b Horvath, Jean. “L'œuvre mathématique de Marcel Riesz. II [The mathematical work of Marcel Riesz. II ”] (French). Proceedings of the Seminar on the History of Mathematics 4 : 1–59. MR 704360 . Zbl 0508.01015 . http://www.numdam.org/item?id=CSHM_1983__4__1_0 .
^ §14.32 in Titchmarsh, E. C. (1986). The theory of the Riemann zeta-function (Second ed.). New York: The Clarendon Press, Oxford University Press. ISBN 0-19-853369-1 . MR 0882550
^ Putnam, C. R. (1980). “The F. and M. Riesz theorem revisited”. Integral Equations Operator Theory 3 (4): 508–514. doi :10.1007/bf01702313 . MR 0595749 .
^ Kjeldsen, Tinne Hoff (1993). “The early history of the moment problem”. Historia Math 20 (1): 19–44. doi :10.1006/hmat.1993.1004 . MR 1205676 .
^ Akhiezer, N. I. (1965). The Classical Moment Problem and Some Related Questions in Analysis . Oliver & Boyd
^ Gårding, Lars . Some points of analysis and their history . University Lecture Series. 11 . Providence, RI: American Mathematical Society. pp. 31–35. ISBN 0-8218-0757-9 . MR 1469493
^ Hanche-Olsen, Harald; Holden, Helge (2010). “The Kolmogorov–Riesz compactness theorem”. Expositiones Mathematicae 28 (4): 385–394. doi :10.1016/j.exmath.2010.03.001 . MR 2734454 .
^ Hestenes, David (2011). “Grassmann's legacy” . In Hans-Joachim Petsche, Albert C. Lewis, Jörg Liesen and Steve Russ. From Past to Future: Graßmann's Work in Context Graßmann Bicentennial Conference . Springer. http://geocalc.clas.asu.edu/pdf/GrassmannLegacy2.pdf
外部リンク