メラニー・マーガリス
メラニー・アン・マーガリス(Melanie Ann Margalis[1], 1991年12月30日 - )、結婚後はメラニー・アン・マーガリス=フィンク(Melanie Ann Margalis-Fink[2])は、アメリカ合衆国・フロリダ州クリアウォーター出身の女子競泳選手。メイン種目の個人メドレーのほか、自由形と平泳ぎでも活躍した。オリンピックで1つの金メダル、世界選手権で2つの金を含む3つのメダルを獲得したが、これらは全てリレー種目であり、個人種目ではオリンピックで4位が1回、世界選手権で4位が2回とメダルにはあと一歩届かなかった。その一方で世界短水路選手権では4つの個人メダルを含む7つのメダルを獲得するなど短水路に強く、100m・200m・400mの個人メドレーで短水路アメリカ記録を樹立した。兄のロバート・マーガリス、夫のニック・フィンクも競泳選手。 経歴生い立ち両親のボブとキャリンの下に生まれ[3]、3人兄妹の末っ子として育った。優秀な競泳選手だった10歳年上の兄ロバート、8歳年上の姉ステファニーに続き、10歳の時にセントピーターズバーグ・アクアティクス(Saint Petersburg Aquatics)で水泳を始めた[4][5]。 高校・大学での活躍カントリーサイド高校(Countryside High School)時代には200y個人メドレーで3度、500y自由形と4×50yフリーリレーでそれぞれ1度のフロリダ州チャンピオンに輝き、200y個人メドレーでは州記録保持者にもなった[6][3][7]。高校卒業後は兄の母校でもあるジョージア大学に進学すると、4年間でNCAAチャンピオンに1度、SECチャンピオンに6度輝き、オール・アメリカに17度選出されたほか[2]、チームメイトと共に4×100yフリーリレーと4×200yフリーリレーで短水路アメリカ記録を樹立した[8][9]。また、大学在籍中には初めて主要国際大会を経験し、2012年世界短水路選手権で決勝進出、2013年ユニバーシアードでは2つのメダルを獲得した[3]。ジョージア大学を2014年に卒業し、家政学とファッションマーチャンダイジングの理学士号を取得した[2]。 2016年全米オリンピック選考会2016年6-7月、オマハで開催された全米オリンピック選考会に出場。200m自由形、100m・200m平泳ぎ、200m個人メドレーと出場した4種目で全てで決勝に進出し(100m平泳ぎは決勝を棄権)、200m自由形で6位、200m個人メドレーで2位(1位と0秒57差)、200m平泳ぎで5位に入り、200m個人メドレーと4×200mフリーリレーでリオデジャネイロオリンピックアメリカ代表入りを果たした[10][11]。 2016年オリンピック2016年8月、リオデジャネイロで開催されたオリンピックに出場。オリンピック初出場ながら200m個人メドレーの決勝に進出するも、ホッスー・カティンカ(2分06秒58=オリンピック新記録)、シボーン=マリー・オコナー(2分06秒88)、マヤ・ディラード(2分08秒79)に次ぐ4位に終わり、0秒42差でメダルを逃した[12]。4×200mフリーリレーでは予選で第3泳を務め、全体1位での決勝進出に貢献した[13]。決勝での出番はなかったが、アメリカは金メダルを獲得したため予選を泳いだマーガリスもメダルを手にした。 2017年世界選手権2017年7月、ブダペストで開催された世界選手権に出場。200m個人メドレーで2大会連続の決勝に進出すると、決勝は150m地点を3位で折り返すも残りの50mで順位を落とし、ホッスー・カティンカ(2分07秒00)、大橋悠依(2分07秒91)、マディシン・コックス(2分09秒71)に次ぐ4位に終わり、メダルには0秒11届かなかった[14]。4×200mフリーリレーでは決勝で第3泳を務めると(予選は第1泳)、1分56秒48で泳ぎ1位をキープしたまま第4泳へ引き継いだ。第1泳リア・スミス(1分55秒97)、第2泳マロリー・コマーフォード(1分56秒92)、第4泳ケイティ・レデッキー(1分54秒02)のアメリカは7分43秒39でフィニッシュし、2位の中国に1秒57差で勝利し金メダルを獲得した[15]。 2018年パンパシフィック選手権2018年8月、東京で開催されたパンパシフィック選手権に出場。400m個人メドレー決勝ではバタフライと背泳ぎを終えた時点で6位につけていたが、得意の平泳ぎで3位まで順位を上げ、最後の自由形で清水咲子を追い抜きフィニッシュ。優勝した大橋悠依(4分33秒77)には1秒83及ばなかったものの清水咲子を0秒67抑えて2位に入り、長水路のシニア主要国際大会において自身初の個人メダルとなる銀メダルを獲得した[16]。 2018年ワールドカップ2018年10月、ブダペストで開催されたワールドカップ・第4戦に出場。200m個人メドレーにおいて、ケイトリン・レベレンズの持つ短水路アメリカ記録(2分04秒91、2011年)を塗り替える2分04秒65をマークした[17]。なお、この種目のアメリカ最速記録はジュリア・スミットが高速水着を着用して2009年12月のデュエル・イン・ザ・プール(Duel in the Pool)でマークした2分04秒60だが、この記録はアメリカ記録として公認されていない[注釈 1]。 2018年世界短水路選手権2018年12月、杭州で開催された世界短水路選手権に出場し4つのメダルを獲得する活躍を見せた。100m個人メドレーではメダルに0秒21届かず4位に終わったが、200mと400m個人メドレーではホッスー・カティンカにそれぞれ1秒37と4秒44及ばなかったものの銀メダルを獲得した(200m個人メドレー決勝では2分04秒62の短水路アメリカ新記録を樹立[17])。リレーは2種目に出場し、4×200mフリーリレーでは決勝で第3泳を務め銀メダル獲得に貢献、4×100mメドレーリレーでは予選で第2泳(平泳ぎ)を務めて決勝進出に貢献し、金メダルを獲得した(予選のみの出場)[19]。 2019年世界選手権2017年7月、光州で開催された世界選手権に出場。200m個人メドレーでは3大会連続の決勝に進出したが、50mと100m地点で6位、150m地点で5位、最後の50mで順位を1つ上げるも最後までメダル圏内に浮上することができず、ホッスー・カティンカ(2分07秒53)、葉詩文(2分08秒60)、シドニー・ピクレム(2分08秒70)に次ぐ4位でメダルに0秒21届かなかった[20]。4×200mフリーリレーでは第3泳を務めると、決勝を1分55秒81で泳ぎ1位をキープしたまま第4泳へ引き継ぎ、 第1泳シモーネ・マニュエル(1分56秒09)、第2泳ケイティ・レデッキー(1分54秒61)、第4泳ケイティ・マクフラリン(1分55秒36)と共に7分41秒87のアメリカ大陸新記録を樹立[21]。これは2009年に中国が樹立した従来の世界記録(7分42秒08)を上回るものだったが、オーストラリアがアメリカの記録を0秒37上回る7分41秒50をマークしたため銀メダルに終わった[22]。4×100mメドレーリレーでは予選で第2泳(平泳ぎ)を務め、第2泳者の中で予選最速の1分06秒40で泳ぎ決勝進出に貢献した[23]。決勝での出番はなかったが、アメリカは金メダルを獲得したため予選を泳いだマーガリスもメダルを手にした。 2019年ISL2019年10月、インディアナポリスで開催されたISL・第1戦に出場。200m個人メドレーにおいて、自身の持つ短水路アメリカ記録(2分04秒62)を更新する2分04秒18をマークした[24]。これによりジュリア・スミットのアメリカ最速記録(2分04秒60)も塗り替えた[18]。 同年11月、カレッジパークで開催されたISL・第5戦に出場。400m個人メドレーにおいて、ケイトリン・レベレンズの持つ短水路アメリカ記録(4分24秒62、2011年)を塗り替える4分24秒46をマークした。なおこの種目でのアメリカ最速記録は200m個人メドレーと同様、ジュリア・スミットが2009年12月のデュエル・イン・ザ・プールで高速水着を着用してマークした4分21秒04となっている[25]。 同年12月、ラスベガスで開催されたISL・決勝大会に出場。400m個人メドレーにおいて、自身の持つ短水路アメリカ記録(4分24秒46)を更新する4分24秒15をマークした[26]。 2020年TYRプロスイム2020年3月、デモインで開催されたTYRプロスイムシリーズ・第3戦に出場。400m個人メドレーで自己ベストを約3秒縮める4分32秒53をマークし、ケイティ・ホフ(4分31秒12、2008年)、マヤ・ディラード(4分31秒15、2016年)、エリザベス・ベイセル(4分31秒27、2012年)に次ぐアメリカ歴代4位に名を連ねた[27]。2016年リオデジャネイロオリンピックのマヤ・ディラード以降でアメリカ最速の記録を出したことにより[28]、東京オリンピックアメリカ代表入りはもちろん東京オリンピックのメダル有力候補になったが[27]、これから数週間後に東京オリンピックは新型コロナウイルス感染症の世界的流行による1年延期が決定した[29]。なお、この時の記録は最終的に2020年世界ランク1位の記録となった[30]。 2020年ISL2020年10-11月、ブダペストでの集中開催となったISLに出場。第1戦の200m個人メドレーにおいて、自身の持つ短水路アメリカ記録(2分04秒18)を更新する2分04秒06をマークした[31]。第4戦では100m個人メドレーにおいて、ケイティ・マイリの持つ短水路アメリカ記録(58秒02、2006年) を塗り替える57秒94をマークし、58秒の壁を破る初のアメリカ選手となった[32]。なお、100m個人メドレーの短水路アメリカ記録は2021年にベアタ・ネルソンによって57秒90に[33]、200m個人メドレーの短水路アメリカ記録は2022年にケイト・ダグラスによって2分02秒12にそれぞれ塗り替えられた[34]。 2021年全米オリンピック選考会2021年6月、オマハで開催された全米オリンピック選考会に出場。400m個人メドレーには出場選手中最速ベストの4分32秒53(2020年)、今季世界ランク3位・アメリカ最速の4分35秒18の記録を持つ優勝候補として出場すると、楽々と予選を3位で突破した[35][36]。迎えた決勝ではバタフライと背泳ぎを終えた時点で4位だったが、得意の平泳ぎで2位まで浮上し、最後の自由型では50mを1位で折り返した。しかし、残りの50mでエマ・ワイアント(4分33秒81)とハリ・フリッキンガー(4分33秒96)にかわされ3位(4分34秒08)に終わり、わずかの差で2位以内を逃した。オリンピック出場の望みをかけ臨んだ200m個人メドレーは決勝には進んだものの2分11秒77の6位に終わり、東京オリンピックアメリカ代表の座を掴み取ることはできなかった[37]。 2022年以降2022年、4月の全米国際チーム選考会の200m自由形で予選14位(大会にはこの1種目のみ出場)に終わった後にエリート競泳選手のキャリアを終え、ジョージア工科大学のアシスタントコーチに就任した。なお、マーガリスは現時点でレースに出場する予定がないだけで、完全に選手のキャリアを終えたわけではないという[38][39]。 2023年、南メソジスト大学のアシスタントコーチに就任した[39]。 人物家族
主要国際大会の成績
全米オリンピック選考会の成績
大学の主要大会の成績yはヤードを意味する。全て短水路の記録。
樹立したアメリカ記録
自己ベストSwimRankings.net参照[56] 長水路
短水路
コーチ歴脚注注釈出典
外部リンク
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