ムック島 (ムックとう、タイ語 : เกาะมุกต์ , ラテン文字転写 : Ko Muk )は、タイ 南部トラン県 にあり、アンダマン海 に浮かぶ島 である[ 4] 。干潮 時だけ現れる海食洞 モラコット(エメラルド)洞窟が知られている[ 2] 。チャオマイ国立公園 (英語版 ) に属しており、特にジュゴン の保護区として重要な位置を担っている[ 2] [ 1] 。
地形・地質
ムック島は、タイの南部、トラン県のアンダマン海に面した海岸の沖合数キロメートル に位置し、本土から続く堆 の際にある[ 3] [ 5] 。トラン県に点在する小島の中では大きい方で、面積 は約7.7平方キロメートル である[ 2] 。ムック島の地質 は、凝灰質砂岩 や石灰質角礫岩 の層の上に、石英 、石灰岩 、花崗岩 、花崗閃緑岩 などの礫 を含む砂岩やシルト岩 の層が累なり、その上をクングーリアン 時代のラトブリ石灰岩が覆う、という構造になっている[ 6] 。島の西部は、ラトブリ石灰岩層が占めているが、中央から東部にかけては礫を含む泥岩 などが露出し、東端には砂地の岬 が突き出している[ 6] 。西部の石灰岩地帯は高い崖がそびえ、島の最高点もこちら側にある[ 4] [ 5] 。同じ西側の石灰岩地帯に、有名なモラコット洞窟 (英語版 ) がある[ 7] [ 4] 。
モラコット洞窟
モラコット洞窟の出入口
モラコット洞窟 (タイ語 : ถ้ำมรกต , ラテン文字転写 : Tham Morakot )は、干潮のときだけ口が海面から顔を出す海食洞で、洞窟の暗がりを80メートル ほど泳いで進んだ先に、高い崖に四方を囲まれた穏やかな砂浜 がある[ 8] [ 2] [ 4] [ 7] 。差し込んだ光が洞内をエメラルド 色に輝かせることから、その名前が付いた[ 2] [ 7] 。
自然
ムック島東部の沿岸には、フタバナヒルギ (英語版 ) 、ホウガンヒルギ (英語版 ) 、毛楊梅(Myrica esculenta )、シマシラキ (英語版 ) 、ウラジロナツメヤシ (英語版 ) 、ドウツルモドキ (英語版 ) などで構成されるマングローブ が形成されている[ 9] 。西部の山林には、リュウケツジュのなかま (Dracaena cochinchinensis )、チャボナツメヤシ (英語版 ) 、サボテンタイゲキ (英語版 ) 、インドソテツ (英語版 ) などが生育する[ 9] 。
また、ムック島と本土との間には、31平方キロメートルに及ぶタイでも特に広大で多様性に富んだ海草 藻場 が広がっており、ウミショウブ 、リュウキュウスガモ (英語版 ) 、ヒメウミヒルモ (英語版 ) 、ウミヒルモ (英語版 ) 、マツバウミジグサ (英語版 ) 、ウミジグサ (英語版 ) 、ベニアマモ (スウェーデン語版 ) 、リュウキュウアマモ (スウェーデン語版 ) 、シオニラ (英語版 ) の生育が確認されている[ 10] 。
この豊かな海草藻場は、ジュゴンの餌場、繁殖地として重要な意味を持ち、ムック島とその南東にあるリボン島 (英語版 ) の海域は、タイでも特にジュゴンが多く目撃される地域であり、2010年の調査では、この海域に42頭から129頭のジュゴンが生息すると推定された[ 1] [ 11] 。
これらの動植物相、特にジュゴンの保護区域として、ムック島の西側と周りの海はチャオマイ国立公園の一部となっている[ 9] [ 2] 。
社会
ムック島には約400世帯 、2000人程度が暮らしており、住民の97パーセント はイスラム教徒 である[ 3] [ 12] 。世帯の多くは漁師 の家系で、伝統的な漁業や真珠 の養殖 を生業とし、小規模のゴム 農園 を営む者もいる[ 3] [ 12] 。また、トラン県はムック島の観光資源としての可能性を重視し、海洋ツーリズムでの宣伝に力を入れている[ 13] 。1998年には約1200人だった観光客は、2006年には1万人を超えるまで急増している[ 13] 。
ムック島の行政単位 は1つだが、島内は6つの共同体 に分かれており、それぞれの共同体は小さな入り江 を中心に形成されている[ 3] 。多くの集落 は海に面しているため、スマトラ島沖地震 による津波 では大きな被害を受け、トラン県の中でも特に被害が深刻だった地域の1つである[ 3] 。住民のほとんどは、家族、家、あるいは船など、何らかのものを失ったといわれる[ 3] 。津波からの復興に際し、全体の半分以上にあたる248世帯が、保護区や公有地、あるいは他人の土地に不法に居住している実態が明らかとなり、再建にあたってこれらを整理し、国有林から3ヘクタール が新たな共同体と住宅をつくるために提供された[ 3] 。
出典
^ a b c Adulyanukosol, Kanjana; et al. (2007-06), “Observations of dugong reproductive behavior in Trang Province, Thailand: further evidence of intraspecific variation in dugong behavior”, Marine Biology 151 : 1887-1891, doi :10.1007/s00227-007-0619-y
^ a b c d e f g National Park Office (2006), National Parks in Thailand , Bangkok : National Park, Wildlife and Plant Conservation Department , pp. 204-205, ISBN 974-286-087-4
^ a b c d e f g h TSUNAMI update (Asian Coalition for Housing Rights): pp. 8-9, (2006-06)
^ a b c d Scholberg, John; Slingerland, Fran (2009-02), “The islands of Trang” , Sail 40 (2): pp. 44-47, https://www.sailmagazine.com/cruising/sailing-sense-the-islands-of-trang
^ a b United States National Geospatial-Intelligence Agency (2019), Pub. 174, Sailing Directions (Enroute) Strait of Malacca and Sumatera (5th ed.), Springfield, Virginia : United States National Geospatial-Intelligence Agency , p. 10
^ a b Waterhouse, J. B. (1982-07), “An early Permian cool-water fauna from pebbly mudstones in south Thailand”, Geological Magazine 119 (4): 337-432, doi :10.1017/S0016756800026261
^ a b c “エメラルド・ケーブ(タム・モラコット) ”. タイ観光案内サイト . タイ国政府観光庁 日本事務所. 2024年10月29日 閲覧。
^ 古関, 千恵子 (2017年11月30日). “ベストシーズン突入、タイの美しき秘島クラダン島 ”. 朝日新聞デジタルマガジン& . 朝日新聞社 . 2024年10月29日 閲覧。
^ a b c “Hat Chao Mai National Park ”. Department of National Parks, Wildlife and Plant Conservation, Thailand. 2024年10月29日 閲覧。
^ Supanwanid, C.; Lewmanomont, K. (2003), “13 The seagrasses of Thailand” , World Atlas of Seagrasses , UNEP-WCMC , University of California Press, pp. 144-145, ISBN 0-520-24047-2 , https://archive.org/details/worldatlasofseag03gree
^ TESCO Co, Ltd (2012-03), Executive Summary Marine Protected Area Database of Thailand , p. 5, https://www.dmcr.go.th/detailLib/2635
^ a b Design By / For / With People: Community Architects in Asia , Asian Coalition for Housing Rights, (2010), p. 68
^ a b Tanyaros, Suwat (2009), “Impact of marine tourism on the recreational water quality of Muk Island, Trang Province, Southern Thailand” , Songklanakarin Journal of Science and Technology 31 (4): 367-372, ISSN 0125-3395 , https://sjst.psu.ac.th/article.php?art=977
外部リンク
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