マダラエイ (Taeniurops meyeni ) は、アカエイ科 に分類されるエイ 。
太平洋 ・インド洋 の熱帯 -亜熱帯 域に分布する。沿岸のラグーン ・河口 ・岩礁などの深度20-60 mに生息する。体盤は幅1.8 mに達して分厚く、背面は小さい突起で覆われる。尾は短く、幅広い臀鰭を持つ。背面には白黒の斑点があり、尾は黒い。
夜行性 で、群れを作ることもある。活発な捕食者で、貝類 ・甲殻類 ・小魚を捕食する。他のアカエイ類のように無胎盤性胎生 。産仔数はおよそ7。攻撃的ではないが、刺激されると尾の毒針を振り回すことがあり、死亡例もある。ダイビングや釣りなどで人気がある。繁殖力が低く、混獲 や生息地破壊の影響を受けている。
分布
サンゴ礁近くの砂底でよく見られる。
インド洋 、西太平洋 、ペルシャ湾 [ 2]
インド洋ではクワズール・ナタール州 から紅海 、インド 、東南アジア 、マダガスカル ・マスカリン諸島 など。太平洋では南日本 ・韓国 ・オーストラリア 。ロード・ハウ島 でも見られる[ 4] 。東太平洋ではココス諸島 ・ガラパゴス諸島 からしか報告例がないが、分布域が中央アメリカ本土に達している可能性もある[ 2] 。
形態
丸く分厚い体盤、白黒の斑が特徴。
体盤は丸くて分厚く、長さより幅のほうが広い。眼の後方には、眼より大きな噴水孔 がある。鼻褶は短くて幅広く、後縁は細かく縁取られる。口は幅広くて弧を描き、口角にはわずかに溝がある。口底には7個の乳頭突起 が並び、最も外側の1対は小さく、他から離れる[ 4] 。歯列数は、上顎で37–46・下顎で39–45[ 5] 。歯は小さく、歯冠を横切る深い溝がある。密に敷き詰められており、平たい表面を構成している[ 6] 。
腹鰭 は小さく短い[ 4] 。尾は比較的短く、体盤幅を超えない。上面には1本(稀に2本)の鋸歯状の棘がある。尾の付け根は幅広いが、棘より後方は急速に細くなる。臀鰭は尾の先端まで続く
[ 4] 。体盤と尾の背面は、疎らで細かい棘で一様に覆われる。全長46 cmを超えた頃から、正中線上に鋭い突起の列が発達し始める。成体ではさらにその横に1列ずつ突起が発達し、合計3列となる[ 6] 。
背面は茶-紫のかった灰色、体盤縁には白い筋や斑点がある。棘より後ろの尾は黒い。腹面は乳白色で、縁は黒く、斑点がある。幼体は成体より体色が明瞭である[ 6] [ 7] 。かなり大きなエイであり、体幅1.8 m・全長3.3 m・体重150 kgに達する[ 8] 。
分類
1841年、ドイツの生物学者ヨハネス・ペーター・ミュラー とヤーコプ・ヘンレ がモーリシャス 産の2個体のシンタイプ を用いて、Systematische Beschreibung der Plagiostomen の中で記載 した。
Potamotrygonidae科とする説もあった[ 1] 。
オーストラリア では他種とともに'bull ray'と呼ばれることもある[ 9] 。
生態
日中は休息する。
底生 である。1 - 500メートルの水深に生息するが、通常は水深20 - 60メートルの水深に生息する[ 2] 。ラグーン や岩礁近くの砂礫底を好み、河口 に進入することもある[ 10] [ 6] 。夜行性 で、日中は洞窟や岩棚の下で休息している[ 7] 。群れを作ることもある。他の大型エイのように、アジ やスギ などの魚を引き連れていることがよくある[ 10] 。餌は底生の貝類 ・甲殻類 ・小魚 などである[ 7] 。摂餌時は、体盤の縁を砂に押し付け、噴水孔から吸い込んだ水を口から吹き出すことで砂を掘る[ 11] 。天敵はサメ ・イルカ など[ 8] 。危険が迫ると尾を振り上げて棘を前方に向け、前後に波打たせることで威嚇する[ 7] 。寄生虫 としては、単生類 の Dasybatotrema spinosum [ 12] ・ Dendromonocotyle pipinna [ 13] ・Neoentobdella garneri ・ N. taiwanensis ,[ 14] ・線虫 の Echinocephalus overstreeti などが知られる[ 15] 。
生活史はよく分かっていない。他のアカエイ類と同じように無胎盤性胎生 で、胎児は初期には卵黄 、後期には母体から分泌される"子宮乳"によって育つ[ 8] 。ラニーニャ現象 の後のココス諸島では、繁殖のための数百匹の群れが観察される。この時には1匹の雌を多数の雄が追いかける[ 11] 。産仔数は7以下。出生時の体盤幅は33 - 35センチメートル[ 1] 。南アフリカ沖では、夏に出産が行われる[ 16] 。メスは生後15年で成熟する[ 1] 。
人との関わり
モルディブで撮影。ダイビングでの観察対象となる。
食用とされることもあり、肉や軟骨が利用される[ 1] 。味は鶏モモ肉に似ておりサッパリしているという。[ 17]
攻撃的ではなく、ダイバーに近づいたり、調べるような行動を取ることもある[ 6] 。だが、刺激すると尾の毒棘を突き刺すことがあり、エイに跨ろうとしたダイバーが刺されて死亡した事例がある。オーストラリア(グレート・バリア・リーフ )やモルディブなどでは、保護区がダイビングの観光資源となっている[ 1] 。飼育は難しいとされる[ 10] 。
本種を対象とした漁業およびエビ類や底棲魚用のトロール網による混獲などにより生息数が減少し、特に東南アジアで漁獲圧が高いとされる[ 1] 。繁殖力の低さ、農業排水 などの影響によるサンゴ礁の減少、などの要因から、高い漁獲圧には耐えられない。広範囲に渡って商業漁業・遊漁の影響を受けているが、特に商業漁業が激しいのはインドネシア水域である。南アフリカ沖の堆 では、エビのトロール漁で混獲されるが、特に利用はされていない。大きさと引きの強さから釣り人には人気があるが、南アフリカでは1日に1人あたり1匹という制限を設けており、スピアフィッシング は許可していない[ 16] 。オーストラリア水域(グレート・バリア・リーフ海洋公園 を含む)では軽度懸念とされている。エビのトロール漁で捕獲されているが、死亡率はウミガメ除去装置 が義務化されたことで低下している。モルディブでは観光資源の保護を目的として1995年に輸出を禁止、1996年には皮の輸出も禁止された[ 1] 。
脚注
^ a b c d e f g h i j k l m n o Kyne, P.M. & White, W.T. 2015. Taeniurops meyeni . The IUCN Red List of Threatened Species 2015: e.T60162A68646736. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2015-4.RLTS.T60162A68646736.en . Downloaded on 01 January 2021.
^ a b c d e f g h i j k Froese, R. and D. Pauly. Editors. 2019. Taeniurops meyeni . FishBase. World Wide Web electronic publication. http://www.fishbase.org , version (12/2019).
^ 本村浩之 『日本産魚類全種目録 これまでに記録された日本産魚類全種の現在の標準和名と学名』、鹿児島大学総合研究博物館、2020年、15頁。
^ a b c d Last, P.R. and J.D. Stevens (2009). Sharks and Rays of Australia (second ed.). Harvard University Press. pp. 460–461. ISBN 0-674-03411-2
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^ a b c d Ferrari, A. and Ferrari, A. (2002). Sharks . FireFly Books. pp. 212–213. ISBN 1-55209-629-7
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^ Bull ray, stingray spines Archived 2006年8月21日, at the Wayback Machine .. Julian Rocks. Retrieved on February 25, 2010.
^ a b c Michael, S.W. (1993). Reef Sharks & Rays of the World . Sea Challengers. p. 89. ISBN 0-930118-18-9
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^ Whittington, I.D. and G.C. Kearn (2009). “Two new species of entobdelline skin parasites (Monogenea, Capsalidae) from the blotched fantail ray, Taeniura meyeni , in the Pacific Ocean, with comments on spermatophores and the male copulatory apparatus” . Acta Parasitologica 54 (1): 12–21. doi :10.2478/s11686-009-0013-7 . http://www.springerlink.com/content/t662m2hv7m124408 .
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^ a b Van der Elst, R. (1993). A Guide to the Common Sea Fishes of Southern Africa (third ed.). Struik. p. 53. ISBN 1-86825-394-5 . https://books.google.com/?id=9DqUZ4kMOToC&pg=PA53
^ 触れたら死亡。怪物級のエイを解体してみると・・・ - YouTube
関連項目
ウィキスピーシーズに
マダラエイ に関する情報があります。