ボンバルディア CL-415
レッドレイク 周辺で森林火災監視を行うボンバルディア CL-415(2007年頃)
ボンバルディア CL-415 (Bombardier 415 、元はCanadair CL-415 )は、空中消火 機として造られたカナダ の水陸両用飛行艇 である。本機はCL-215 飛行艇を基に空中消火活動専用に設計された。アメリカ合衆国 内では「スーパースクーパー」("Superscooper")として販売されている。
設計と開発
より効率が高く高出力で信頼性の高いターボプロップエンジン へと移行する市場の動向に応じてカナディア 社は1987年にCL-215のエアフレーム(17)にオリジナルのレシプロエンジン よりも15% 高出力のプラット・アンド・ホイットニー・カナダ PW123AF を取り付ける作業を引き受けた。エンジンを換装された機体はCL-215Tと命名され、数多くの空気力学 的付加物と動力補助操縦系統やコックピットの空調を含むシステムの改良と共に電気系統とアビオニクス 関連の能力向上が図られた。CL-215Tの最も大きな外観上の特徴は主翼と水平尾翼 に追加された空力付加物であった。
成功作のCL-215を基にしてボンバルディア・エアロスペース 社(1986年カナディア社を買収)は1993年に新造機としてCL-415の生産を開始した。415は近代化されたコックピットと空力付加物を備え消火液放出機構を変更することにより森林火災 の発見/鎮火に使用する空中消火用の水陸両用飛行艇となった。
CL-215と比較すると415は運用重量と速度が増加しており、生産に要する工数と効率が改善されていた。現場近辺の水場から6,140 L (1350 Imperial gal or 1,620 US gal)の水を汲み上げ、必要とあれば化学消火剤と混合し、それを火災現場上空で投下することで、タンクを満たすために基地へ帰還せずに消火活動を行うことが可能である。火災に即応して大量の消火剤を火災現場へ届けることが可能なように専用に設計された415は、防錆材料を使用して信頼性と長寿命を目して製造されている。新型の415GRがより大きな運用重量を有している一方で、ボンバルディア 415マルチロールは準軍事組織による捜索救難 活動や汎用輸送任務に使用可能である。
415はオンタリオ州 ノースベイ のノースベイ/ジャック・ガーランド空港 近くにあるボンバルディア・エアロスペース社の工場で生産されており、時折ニピシング湖 で完成機がテストされている様子が見かけられる。
2015年に生産終了した後、2016年にはCL-215と共にバイキング・エア に製造権が譲渡された[ 2] 。2022年には近代化型のCL-515がデ・ハビランド・カナダ によってDHC-515として再生産されることになった[ 3] 。
運用の歴史
ドライデン (オンタリオ州) 郊外で消火活動中のボンバルディア 415(2007年9月)
"415"は1993年 12月6日に初飛行を行い、1994年 11月に初めて納入された[ 4] 。直ぐに多くの国々からの発注が続き、水投下機/火災鎮圧兵器として大幅に強化された性能に着目して前の型から派生した「スーパースクーパー」という渾名をつけられた。火災の消火という危険ではあるが必要な作業に敬意を表して、本機は権威のある「Batefuegos de oro 」(金の消火器賞)を受賞した。この賞の授与に際して「多数の国々の消防機関において本機は森林火災に対する最も効果的な空中消火の機材である。森林火災消火の要求に合致するための絶え間ない改良により本機は、30年以上に渡り最も需要の高い航空機材の地位を占めている。」と評された[ 5] 。
76機が製造され、その内7機が事故により退役した[ 6] 。
415は高度15 mから降下し12秒間で410 mの距離を水上滑走中に6,137L の水を汲み上げて再び高度15 mまで上昇するのに1340 mの距離を要する。ボンバルディア社のウェブサイト によると[ 7] 415は「12秒間、130 km/h (70 knots)の速度で410 m (1,350 ft)を滑走して6,137-L (1,621-US-ガロン )の水を汲み上げる・・・先進的なボンバルディア 415は僅か水深2 m (6.5 ft)、幅90 m (300 ft)の水源から水を汲み上げる。水源の保水量が満タンクに及ばない場合は、取水した分だけを搭載して火災現場へ戻る。ボンバルディア 415水陸両用機は取水するために直線の滑走経路を必要とせず、取水中も「飛行」状態を維持することでパイロットは川の流れに沿っての機動や水中の障害物を避けることができる。」
派生型
415
415GR
415MP
多用途機
運用
ボンバルディア 415の運用状況
クロアチア のŽivogošće で取水直前のボンバルディア 415[ 8]
クロアチア空軍及び防空軍 のCL-415
水上滑走中のイタリア市民保護局 のCL-415
消火剤を投下するギリシャ空軍 のCL-415
カナダ
クロアチア
フランス
ギリシャ
イタリア
スペイン
アメリカ合衆国
マレーシア
モロッコ
事故
1997年11月17日 - 市民安全局 のCL-415がフランス のマルセイユ で墜落、1名死亡
2003年8月16日 - Società Ricerche Esperienze MeteorologicheのCL-415がイタリア のエージネ で墜落、死亡者無し
2004年3月8日 - 市民安全局のCL-415がフランスのサン=クロア湖 に墜落、2名死亡
2005年3月18日 - Società Ricerche Esperienze MeteorologicheのCL-415がイタリアのフォルテ・デイ・マルミ で墜落、2名死亡
2005年8月1日 - 市民安全局のCL-415がカロンザナ で墜落、2名死亡
2007年7月23日 - ギリシャ空軍 のCL-415がギリシャ のDilesosで墜落、2名死亡
2007年7月23日 - Società Ricerche Esperienze MeteorologicheのCL-415がイタリアのサンテラズモ島 で墜落、1名死亡
要目
(415) Bombardier Aerospace Website
乗員:2名(他にジャンプシート 1名、ベンチシート8名)
搭載量:2,900 kg (6,400lb)
全長:19.82 m (65 ft)
全幅:28.6 m (93 ft 11 in)
全高:8.9 m (29 ft 3 in)
翼面積:100 sq m (1,080 sq ft)
空虚重量:12,880 kg (28,400 lb)
最大燃料搭載量:4,650 kg (10,250 lb)
最大離陸重量:19,890 kg (43,850 lb)
最大離陸重量(搭載物有り、陸上から):19,890 kg (43,850 lb)
最大離陸重量(搭載物無し、陸上から):18,600 kg (41,000 lb)
最大離陸重量(水上から):17,170 kg (37,850 lb)
最大搭載重量(水か消火剤):6,140 kg (13,536 lb)
取水後最大重量:21,360 kg (47,000 lb)
最大着陸重量:16,780 kg (37,000 lb)
エンジン:2 × プラット・アンド・ホイットニー・カナダ PW123AF ターボプロップエンジン 、離昇出力2,380 shp (1,775 kW)
最大速度:223 mph (359 km/h (194 kt))
巡航速度:207 mph (333 km/h (180 kt))
失速速度:78 mph (126 km/h (68 kt))
巡航高度:14,700 ft (4,500 m)
航続距離:1,518 miles (2,443 km)
上昇率:1,600 ft/min (8.1 m/s)
離陸滑走距離(ISA):2,750 ft (840 m)
離水滑走距離(ISA):2,670 ft (815 m)
着陸滑走距離(ISA):2,210 ft (675 m)
着水滑走距離(ISA):2,180 ft (665 m)
最小水深:6 ft (1.8 m)
アビオニクス
ハネウェル プリムス2 無線航法装置
自動方向探知機(ADF)、VOR /ILS /ビーコン ・マーカー、DME 付きRNZ-850
Litef /ハネウェル LCR93 高度/方位測定システム
2重EADI/ EHSI付きハネウェル EDZ-605 電子飛行計器システム (EFIS)
電波高度計 (ハネウェル AA-300)
計器盤組み込みParker-Gull 3画面アクティブ・マトリクス駆動液晶ディスプレイ
Dual CIC/Aerosonics Air Data Computers
Dorne & Margolin製 ELT-8 緊急ビーコン
主な飛行艇の比較
US-2
CL-415
AVIC AG-600
Be-200
画像
全長
33.3 m
19.8 m
36.9~37.0 m
31.4 m
全幅
33.2 m
28.6 m
38.8 m
32.8 m
全高
10.06 m
8.90 m
12.1 m
8.90 m
発動機
AE2100J ×4
PW123AF ×2
WJ-6 (英語版 )
D-436TP ×2
ターボプロップ
ターボファン
最大離陸重量
47.7 t
19.9 t
53.5 t
41.0 t
航続距離
4,700 km以上
2,426 km
4,500 km
3,300 km
巡航高度
9,000 m以上
3,048 m
6,000 m
7,986 m
巡航速度
480 km/h
278 km/h
560~570 km/h
560 km/h
離水距離
280 m
808 m
1,500 m
1,000 m
着水距離
330 m
665 m
不明
1,300 m
着水可能波高
3.0 m
1.8 m
2.0~2.8 m
1.2 m
乗員
11名
2-9名
3名
2名
運用開始
2007年
1994年
開発中
2003年
採用国
1
9
開発中
2
関連項目
出典
脚注
^ a b Vogelaar, Rob. "Bombardier Sells Four Bombardier 415 Amphibious Firefighting Aircraft to an Undisclosed Customer." aviationnews.eu, March 28, 2011. Retrieved: July 29, 2011.
^ Viking Amphibious Aircraft
^ “デ・ハビランド・エアクラフト、新たな消防航空機DHC-515をローンチ” . https://flyteam.jp/news/article/136265
^ "Bombardier 415." aerospace.bombardier.com . Retrieved: April 13, 2010.
^ "Bombardier 415 SuperScooper Amphibious Aircraft." gizmag.com . Retrieved: April 13, 2010.
^ "Canadair CL-415." Archived 2007年12月5日, at the Wayback Machine . baaa-acro.com. Retrieved: July 29, 2011.
^ "Firefighting Techniques and Technologies: Water scooping." bombardier.com . Retrieved: April 13, 2010.
^ "Croatia." deagel.com. Retrieved: July 29, 2011.
^ Keijsper 2008, p. 40.
^ Keijsper 2008, p. 41.
^ Keijsper 2008, p. 42.
^ a b Keijsper 2008, p. 43.
^ "County leases fire-fighting planes from Quebec." Archived 2008年9月20日, at the Wayback Machine . SignOnSanDiego. Retrieved: July 29, 2011.
参考文献
外部リンク