ヘルクレス座ι星ι Herculis
星座
ヘルクレス座
見かけの等級 (mv )
3.80[ 1]
変光星型
ケフェウス座β型 [ 2]
位置元期 :J2000.0
赤経 (RA, α)
17h 39m 27.8860861s [ 3]
赤緯 (Dec, δ)
+46° 00′ 22.800110″[ 3]
視線速度 (Rv)
-18.9 km/s[ 3]
固有運動 (μ)
赤経: 7.48 ミリ秒 /年 [ 3] 赤緯: 4.53 ミリ秒/年[ 3]
年周視差 (π)
7.17 ± 0.13ミリ秒[ 3] (誤差1.8%)
距離
455 ± 8 光年 [ 注 1] (139 ± 3 パーセク [ 注 1] )
絶対等級 (MV)
-1.9[ 注 2]
ヘルクレス座のバイエル符号を示した図。ι星は図右下、ヘルクレスの足許に位置する。
物理的性質
半径
5.4 ± 0.2 R ☉ [ 4]
質量
6.7 ± 0.2 M ☉ [ 5]
表面重力
6.4 G[ 5] [ 注 3]
自転 速度
6 ± 1 km/s[ 5]
スペクトル分類
B3 IV[ 6]
光度
2,500 L ☉ [ 注 4]
表面温度
17,500 ± 200 K [ 5]
色指数 (B-V)
-0.179[ 1]
色指数 (U-B)
-0.702[ 1]
金属量 [Fe/H]
-0.47[ 7]
年齢
47.6 ± 5.6 × 10 6 年[ 8]
軌道要素 と性質
軌道長半径 (a )
7.4 ± 0.8 × 10 6 km[ 9]
離心率 (e )
0.55 ± 0.04[ 9]
公転周期 (P )
112.825 日 [ 9]
他のカタログ での名称
ヘルクレス座85番星, BD +46 2349, FK5 663, HD 160762, HIP 86414, HR 6588, SAO 46872
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ヘルクレス座ι星 (ヘルクレスざイオタせい、ι Herculis、ι Her)は、ヘルクレス座 にある多重星 で、少なくとも2つの恒星 は連星 系を形成し、主星は脈動変光星 である[ 10] [ 5] 。ヒッパルコス衛星 が測定した年周視差 から計算された太陽系 からの距離は、およそ455光年 である[ 3] 。
外観
ヘルクレス座ι星は見かけの等級 が3.8と、肉眼 でみることができる明るさである[ 1] 。ヘルクレス座から、りゅう座 の頭部へ向かう途上に位置しており、りゅう座の頭部の星々の方が、ヘルクレス座の主な恒星よりも見かけ上の関係としては近しい[ 11] 。
北極星
天の北極 が、歳差 により長期的に移動する軌跡。ヘルクレス座ι星は、“-10000”の目盛り近くの星。
ヘルクレス座ι星は、地球 の歳差 によって天の北極 が天球 上を移動する軌跡に近い位置にあって、肉眼でみえる明るさの恒星なので、時代によっては北極星 となりうる。おおよそ紀元前1万1千年頃には、ヘルクレス座ι星が北極星となっていたものと考えられる。ただし、現在の北極星であるポラリス が天の北極から1度 と離れていないが、ヘルクレス座ι星は天の北極からおよそ4.5度離れていた[ 12] 。
星系
ヘルクレス座ι星は多重星で、ワシントン重星カタログ では、Aa、Ab、Bと3つの恒星が収録されている[ 10] 。ヘルクレス座ι星B は、シャーバーン・バーナム が発見した12等星 で、元々ヘルクレス座ι星とされていた4等星のAから北東におよそ116秒 の位置にある。発見からこのかた、ヘルクレス座ι星Aとの相対位置はほとんど変わっておらず、固有運動 を共有しているとする見方もある[ 10] [ 11] 。ヘルクレス座ι星Aは、1970年代にスペックル干渉法 の観測によって、南北方向に離角 が167ミリ秒の2星に分解したとされ、元のヘルクレス座ι星Aがヘルクレス座ι星Aa、新たに検出された方がヘルクレス座ι星Abとしてカタログに収録されたが、ヘルクレス座ι星Abが検出されたのはこの1度だけで、実在がはっきりしない[ 13] [ 10] 。
一方で、ヘルクレス座ι星 (A) は視線速度 の周期的な時間変化から、分光連星 であることがわかっており、その公転周期 は約113日 、離心率 は0.55と細長い楕円軌道 で、軌道長半径 の下限値は740万kmと推定されている[ 14] [ 9] 。質量関数 (英語版 ) から予想した伴星の質量 は、太陽 の4割以下と低く、白色矮星 か、さもなければ赤色矮星 ではないかとみられる[ 5] 。
特徴
ヘルクレス座ι星は、核 での水素燃焼 段階を終えたばかり、或いは間もなく終えるとみられるB型準巨星 で、スペクトル型 はB3 IVと分類される[ 11] [ 6] 。質量は太陽の6.7倍程度、半径 は太陽 の5.4倍程度で、太陽に比べると大きい恒星である[ 5] [ 4] 。有効温度 は17,500K 、光度 は太陽 の2500倍に及ぶとみられる[ 5] 。
ヘルクレス座ι星は、B型星としてはかなり自転 速度が遅く、6 km/s以上と推定されている[ 5] 。そのため、吸収線スペクトル も細く深くなっており、視線速度測定や元素 同定に有用で、分光観測 の標準星としてよく用いられている[ 4] 。
変光
分光観測に基づく時間変化は、連星の公転 によるものだけでなく、1970年代以降吸収線輪郭の短時間周期での変動が報告されるようになった。そして、測光観測 においても、それと同程度の短時間周期での変化が検出された。紫外域 において、3時間 前後の周期で振幅 0.01等の変光が確認され、おおいぬ座β星 との類似が指摘された[ 15] 。変光星総合カタログ でも、おおいぬ座β星と同じケフェウス座β型変光星 に分類されている[ 2] 。
その後、より詳しい変光の周期解析から1つだけ明確になった脈動周期は約3.5日で、これはケフェウス座β型よりもずっと長く、ヘルクレス座ι星がペルセウス座53番星 (英語版 ) に代表されるゆっくり脈動するB型星(SPB )であることを示唆する。ケフェウス座β型に適合する周期も検出されているが、データによってみえたりみえなかったりであるため、ヘルクレス座ι星がSPBとケフェウス座β型の混合型で、ケフェウス座β型の脈動は突発的に現れる、という仮説も立てられている[ 9] 。
名称
中国 では、ヘルクレス座ι星は「天上の唐棹 」を示す天棓 (拼音 : Tiān Bàng )という星官 を、りゅう座ξ星 、りゅう座ν星 、りゅう座β星 、りゅう座γ星 と共に形成する。ヘルクレス座ι星自身は、天棓五 (拼音 : Tiān Bàng wu )つまり天棓の5番星と呼ばれる[ 16] 。
脚注
注釈
^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
^ 出典での表記は、
log
g
[
cgs
]
=
3.80
{\displaystyle \log g[{\mbox{cgs}}]=3.80}
^ シュテファン=ボルツマンの法則 により計算。
出典
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関連項目
外部リンク
座標 : 17h 39m 27.8860861s , +46° 00′ 22.800110″