プロトステガ科 (プロトステガか、Protostegidae)は、中生代 白亜紀 に生息した、海洋性のカメ の絶滅した分類群 。長らく爬虫綱 - カメ 目 - ウミガメ上科 に分類されていたが、正確な分類に関しては不明瞭なところがある[ 1] 。アーケロン など大型種を輩出した。
進化史
プロトステガ Protostega 。
この科 の最古の種 は、2015年にコロンビア より記載されたデスマトケリス 属 の一種、D. padillai である[ 1] 。D. padillai はすでに2メートル近い甲羅を持ち、1998年にブラジル で発掘された、次に古い属であるサンタナケリス よりも大型である。サンタナケリスは既に小さいながらも脚鰭 を持っており、肥大化した涙腺 も備えていた。しかし、脚鰭には指 を曲げる関節構造が残っているなど、現生種と比べると完成度は低い。
その後、ノトケロン 、プロトステガ などより大型の属が現れ、白亜紀の海においてプロトステガ科は他のウミガメを圧する存在であった。しかし白亜紀後期、既知で最大のウミガメであるアーケロン が現れる頃になると、プロトステガ科は衰退しつつあった。そして、白亜紀末、K-T境界 における大量絶滅 において他の海生爬虫類や主食であるアンモナイト 、陸上の恐竜 などとともに姿を消すことになる。しかしカメ類においてこの大量絶滅で絶滅したのはプロトステガ科などごく一部に留まっていた。
形態
ウミガメ類全体に見られる傾向として甲羅 の縮小が挙げられるが、このグループも同様であった。最初期のサンタナケリスはさほど退化はしていないが、後期のアーケロンなどは骨質の板は失われ、現生のオサガメ のような革状の皮膚や角質の板で覆われていた。
頭骨は比較的大きく、口先が頑丈で咬筋 の付着部が拡大しており、硬いものを壊して食べるのに適応していたと思われる。おそらくはアンモナイト など堅い殻を持つ生物を主食にしていたのであろう。また、余分な塩分を排出するための涙腺は、初期段階からかなり発達していた。
それに対して鰭 脚は、初期のものには陸生カメの形態を部分的に留めるものもあり、発達したのは海に進出してからであると思われる。後期のものは、現生種と比しても遜色のない鰭を持っていた。しかし、構造上水平方向には動かしやすいが上下方向への運動は苦手であったようだ。そのため、オサガメなどが行うような潜水は不得手であり、もっぱら海面近くを遊泳していたと思われる。
分布
サンタナケリスは南アメリカ 近海、アーケロンは北アメリカ の内海 に生息していた。しかし、それ以外の地域からは発見されていない。これは、プロトステガ科のみではなく白亜紀に多数生息していた他のウミガメたちも同様である。現生のウミガメはヒラタウミガメ を除いてほぼ全ての海で見ることができるが、当時のウミガメにはおそらく遠距離を回遊 する能力あるいは習性は持っていなかったと思われる。そうした状況で種の分化が起こりやすくなったためか、当時の海には多種多様なウミガメが生息していた。
分類
プロトステガ科がカメ目の中でどのような位置に分類されるかについては諸説ある。現生のオサガメと近縁とする説や[ 2] [ 3] 、基盤的な潜頸類 とする説[ 4] 、ジュラ紀に起源をもつ現生ウミガメとは無関係の海生カメ類とする説[ 4] 、現生ウミガメ科を含むPanchelonioidea というグループに含むとする説[ 5] 、カメ目の中でも基盤的なグループに属するとする説[ 6] [ 7] など様々である。
脚注
^ a b Cadena, Edwin A.; Parham, James F. (2015-09-07). “Oldest known marine turtle? A new protostegid from the Lower Cretaceous of Colombia” (英語). PaleoBios 32 (1). doi :10.5070/P9321028615 . ISSN 0031-0298 . https://escholarship.org/uc/item/147611bv .
^ Hirayama, Ren (1998-04-16). “Oldest known sea turtle”. Nature 392 (6677): 705–708. Bibcode : 1998Natur.392..705H . doi :10.1038/33669 .
^ Meylan, Peter A.; Ren Hirayama (September 2000). “The Paleontology and Phylogenetics of "Sea Turtles"”. Proceedings of the 19th Annual Symposium on Sea Turtle Conservation and Biology 19 : 104. NOAA Technical Memorandum NMFS-SEFSC-443.
^ a b Walter G. Joyce (2007). “Phylogenetic relationships of Mesozoic turtles” . Bulletin of the Peabody Museum of Natural History 48 (1): 3–102. doi :10.3374/0079-032x(2007)48[3:promt]2.0.co;2 . オリジナル の6 June 2013時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130606110806/http://www.geo.uni-tuebingen.de/fileadmin/website/arbeitsbereich/palaeo/biogeologie/Images/Joyce_Publications/18__Joyce_2007.pdf .
^ Evers, Serjoscha W.; Barrett, Paul M.; Benson, Roger B. J. (2019-05-01). “Anatomy of Rhinochelys pulchriceps (Protostegidae) and marine adaptation during the early evolution of chelonioids” . PeerJ 7 : e6811. doi :10.7717/peerj.6811 . ISSN 2167-8359 . PMC 6500378 . PMID 31106054 . https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6500378/ .
^ Juliana Sterli (2010). “Phylogenetic relationships among extinct and extant turtles: the position of Pleurodira and the effects of the fossils on rooting crown-group turtles” . Contributions to Zoology 79 (3): 93–106. doi :10.1163/18759866-07903002 . hdl :11336/84233 . http://dpc.uba.uva.nl/ctz/vol79/nr03/art02 .
^ Juliana Sterli and Marcelo de la Fuente (2011). “A new turtle from the La Colonia Formation (Campanian–Maastrichtian), Patagonia, Argentina, with remarks on the evolution of the vertebral column in turtles”. Palaeontology 54 (1): 63–78. doi :10.1111/j.1475-4983.2010.01002.x .
参考文献
関連項目
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プロトステガ科 に関連するカテゴリがあります。
絶滅した動物一覧
ウミガメ - 現生の海生カメ類。プロトステガ科との関連性については明確ではない。
オサガメ - 退化した甲羅など形態が類似。一説ではプロトステガ科に近縁とされる場合もある。