黒岩涙香翻案「鉄仮面」の原作となった「Deux Merles de M. de Saint-Mars」(「サン・マールの二羽のつぐみ」)の原書は入手困難であることが知られている。黒岩涙香は英訳本から翻案しており結末が原作と異なっている。訳題が『鉄仮面』のため原書の題名が昭和30年代までわからなかった。たまたま、『鉄仮面』に関するフランス書を入手した松村善雄が『鉄仮面』伝説の小説リストの中にあったボアゴベイの著書の題名の「サン・マール」から『鉄仮面』に思い当たり原題が判明した。昭和初期の円本に翻訳を依頼された大佛次郎はボアゴベイの「鉄仮面」を希望したが原書が見つからず、刊行期日が迫り遂にデュマ父の「鉄仮面(ダルタニャン物語第3部「ブラジュロンヌ子爵」)」を訳したという。長島良三は、原書の入手を試みたが入手できず遂にパリ国立図書館に原書が保存されていること知りその複写を取り寄せて翻訳した。