ピンクとグレー
『ピンクとグレー』は加藤シゲアキによる日本の小説。2012年に書き下ろしで刊行された(400字詰め原稿用紙357枚)。 概要加藤シゲアキの小説デビュー作[2]であり、ジャニーズ事務所所属のタレントが小説を出版するのも初めてのこと[3]。2012年1月28日に角川書店から単行本として発売され、同日にブックウォーカーの配信サイト「BOOK☆WALKER」で電子書籍の限定販売も開始された[2]。単行本は2012年2月6日付のオリコン“本”ランキングBOOK(総合)部門で週間2.8万部を売り上げ初登場4位[4]。2012年12月時点で12万部の売り上げを記録した[5]。なお、2017年1月時点で小説の発行部数は累計45万部を超えている[6]。 芸能界デビューをきっかけに成功と挫折という正反対の道を歩むことになった2人の青年が、華やかな世界の光と闇に翻弄され、葛藤しながらも自らの道を歩んでいく姿を描く青春小説[1][2]で、タイトルには“あいまいな2色の対比”という意味が込められている[7]。舞台となった渋谷は加藤が実際に中学・高校時代を過ごした場所であり、その時感じていたことや風景などは自らの体験も反映されているが、小説自体は完全にフィクションであると述べている[3][8]。また、のちに執筆された『閃光スクランブル』と『Burn. -バーン-』も同じく渋谷と芸能界を舞台としており、加藤は本作とこれらを合わせて「渋谷サーガ」3部作としている[5]。 2012年から漫画化され、映画化作品が2016年に公開された。 芸能界を生きる2人をかつての仲間で一般人の木本の視点で描いたスピンオフ小説『だいじなもの』が、『小説 野性時代』の第146号(2015年12月12日発売)に掲載された[9]。 2017年1月末に本作が翻訳された中国語繁体字版『紅的告別式Pink and Gray』が台湾、香港、マカオで発売された[6]。 2021年12月、本作『ピンクとグレー』のほか『閃光スクランブル』(2013年)『Burn.-バーン-』(2014年)『傘をもたない蟻たちは』(2015年)の単行本の重版が決定。4作品はすべて文庫化されているものの、単行本で購入したいという読者の根強い声があり異例の重版となった[10]。 執筆経緯加藤は小さい頃から文章が好きで、サリンジャーなどの海外作品を読むことが多かった[3]。自分で文章を書くことも好きで、高校の授業で高い評価を受けたり、仕事を初めてからもエッセーや作詞などの文章力や構成力に定評があったため[8]、25歳までには小説を書いてみたいという気持ちが芽生えていた[3][11]。そして2011年2月、NEWSの活動が混沌として時間だけが膨大にあり不安で仕方がなかった時、自分にしかできないことは何かをつきつめたところ[3]、本を書ける人間になることがグループにとっても自分にとっても強みになるのではと考える[11][12]。そして事務所の人間からの「書いてみれば」という後押しもあり[13]、小説を執筆することを決意する。その後1週間で構造を考え[13]、2月中旬から自分で決めた締め切り日の3月31日までの約2か月で一気に初稿を書き上げた[3][11]。なかには1日12時間、「真っ暗闇の中で狂気まじりに書いていた」日もあったという[3]。ストーリーはアニメーション映画の『PERFECT BLUE』から着想を得ており、結論を見せてからそれを時系列的に振り返っていくという物語の構成は『(500)日のサマー』を参考にしたという[13]。完成後、事務所関係者が、出版に値するか判断を仰ごうと原稿を角川書店会長角川歴彦氏に直接渡し[注 1][3]、氏からの推薦を受けてトントン拍子で出版が決定した[11]。 小説家デビューすることを発表した2011年11月22日、NEWSの再出発と自身の小説家デビューを機に「たくさんの方に親しまれるように」と自分の名前も“成亮”から“シゲアキ”とカタカナに改名した[3][8][11]。 あらすじ9歳で家族とともに大阪から横浜のマンションに引っ越してきた河田大貴は、同じマンションに住む同級生の鈴木真吾、石川紗理、木本と仲良くなる。4人は親たちから「『スタンド・バイ・ミー』みたいだわ」と言われるほどいつも一緒にいた。やがて木本と石川は転校してしまうが、大貴と真吾はそのまま同じ中学を受験し、17歳の時、文化祭で後輩2人を加えてバンド「デュポン」[注 2]を結成。真吾作詞・大貴作曲のオリジナル曲「ファレノプシス」[注 3]を披露するなど、青春時代をいつも一緒に過ごしてきた。そんな2人に転機が訪れる。高校2年の学期末試験最終日、駅で雑誌編集者である赤城に声をかけられたことをきっかけに読者モデルとしての活動を始めたのだ。やがて芸能事務所に所属し、ルームシェアも始めた2人はエキストラとしてドラマ出演を決め、主演俳優とのシーンでアドリブのセリフが採用された真吾は番組プロデューサー・鶴田に見初められ、連続ドラマへの出演が決まる。そのドラマは高視聴率を記録したため真吾の芸名:白木蓮吾の知名度は爆発的に上がり、一気にスターダムにのし上がった。一方で大貴は変わらず小さな仕事をこなしながら大学とアルバイトに精を出す日々で、時折くる真吾とのバーター出演話は断り続けていた。そして会えない時間も増え、ぎくしゃくし始めていた2人の仲は、真吾が勝手に決めてしまった事務所移籍と引っ越しを機についに決裂してしまう。 25歳になっても仕事の規模もスタイルも変化がない大貴だったが、テレビで見ることすら避け続けていた真吾と高校の同窓会で再会を果たす。真吾から積極的に誘われ、2人だけで酒を飲み交わし、以前の関係に少し戻れた気がしていた大貴だったが、今夜も会おうという約束通りに真吾のマンションを訪れると、そこには遺書を残して首を吊った真吾の姿があった。大貴は愕然としながらも自分宛ての遺書を読み、真吾の意思を汲んで6枚の遺書の中から白木蓮吾としてふさわしい遺書を選び、服や顔、現場を整え精一杯の演出をする。第一発見者でありながら現場保存をしなかったことで一時は殺人容疑や自殺幇助の疑いもかけられたが、やがて遺書の内容は世間の知るところとなり、「白木蓮吾のイケメン親友!」と大貴は一躍時の人となる。次から次へと白木蓮吾関係のインタビューの仕事が舞い込むものの、大貴はそれらを全て拒否。しかし赤城の企画だけは受け入れ、大貴は真吾に関するノンフィクション書籍を執筆する。そして真吾の死から1年後、真吾の半生を綴ったその書籍に映画化の話がもちあがる。事実に忠実であること、そしてできる限り順撮りすることを条件に脚本執筆と白木蓮吾役で主演することを決断した大貴は、撮影の過程で初めて空白の5年に何があったのかを知り、「ファレノプシス」の本当の意味や真吾の葛藤に気づく。 登場人物
書籍情報
漫画2012年6月23日発売の『月刊Asuka』8月号誌上でコミカライズされることが発表され[18]、2012年8月24日発売の同誌10月号から連載がスタートした[19]。加藤もネームの段階から監修に参加した[20]。
映画
行定勲監督によって映画化された。内容は行定と脚本家の蓬莱竜太によって大きくアレンジされ[24]、中島裕翔が演じる白木蓮吾こと“ごっち”が主人公となっている[25]他、開始62分後に映画オリジナルの“仕掛け”がされていたり[26]、原作には無いエピソードも描かれている[1]。2015年1月中旬から撮影が開始され[1]、約3週間後の2月7日にクランクアップした[27]。 主題歌には、“屈折した青春映画には屈折した大人のバンド”ということでASIAN KUNG-FU GENERATIONが抜擢され[28]、小説や映画と同じく“ゴッチ”という愛称で呼ばれているボーカルの後藤正文が、映画の映像を観て主題歌「Right Now」を書き下ろした[29]。MVも行定が担当し、夏帆が主演をつとめて様々な役に挑戦する女優を演じ、終盤では後藤とロシアンルーレットもする映画のアナザーストーリー的な作品となっている[30]。 映画は第20回釜山国際映画祭「アジア映画の窓」部門へ正式出品され[31][32]、第28回東京国際映画祭のJapan Now部門でも上映された[26][33]。2016年1月9日、全国96スクリーンで公開され[34]、公開最初の2日間で動員7万6759人、興収1億0212万7000円を記録し映画観客動員ランキング7位となった(興行通信社調べ)[35]。2016年3月現在で映画の興行収入は6億円を突破した[36]。 キャスト
スタッフ
脚注注釈出典
外部リンク
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